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ー閑話 ~アーノルド・シュテルネンの動揺~-

いつもより長めです。

上手く分けれる所が決められなかったので、そのまま投稿しました。

外訓練場で、魔法士団の訓練相手をしていた所に、珍しくハンスが現れた。

マーガレットが死んでから、一緒にシュテルネンの別宅に住んでいるので、急ぎの用事が無い限り訪れる事が無かったんだが。


「どうしたんじゃ?珍しい。」

「父上、学院の登校中にミーナが襲撃された様だ。

騎士団の定例の隊長会議中にオルデン宛に知らせが来たんだが、どうやら10人

ぐらいの人数だそうで。」

「やけに曖昧だな?ミーナの安否は分かっておるのか?」

「知らせに来た者も詳しくは何も知らないらしく不明だ。」

「…そうか。情報収集用の風魔法は苦手だからな。ハンスは儂よりも情報収集の風魔法は不向きじゃったな。だから、儂の所に来たのか。」


ミーナの情報がすぐに集めたいが、自分でやってうまくいかずに儂の所に来たんじゃな。

まぁ、ミーナが心配で仕方ないのは分かるがな。

儂だって心配だ。儂でも上手くいかなければ、ヘレンかネイルソンに頼んでしっかりと調べてもらわねば。

状況によってはハンスを連れて、転移してやるがな。

ミーナに手を出す馬鹿たれどもには制裁をしてやらねば。


風魔法で何とか情報を集めると、ミーナは既に第2騎士隊の騎舎に移動していた。

取り敢えずは無事の様だな。

ん?この反応はシルバか。また、家に閉じ込めるなどと言ってなければいいが。心配のし過ぎで、そんな反応になるのは仕方無いが、家にいてあの2年前の惨劇が起きたのじゃから、閉じ込めて安心とはならんのじゃが…。あれも儂に似て、考えるのが苦手じゃからな。

ロイはロイで、ミーナを守る為に持ち歩きや家に設置出来る攻撃魔法の研究に精を出していて、研究室に籠りきりでミーナが悲しんでる事にも気づかんし、どうやって研究室から引きずり出すか、毎回頭が痛いわ。

そんな事より、隣でイライラし始めたハンスに情報を提供せねばな。


「どうやら、ミーナは無事に保護されている。

今は第2騎士隊の騎舎にいる様じゃ。」

「そうか、良かった。

怪我はないのか?」

「…儂の風魔法の情報収集の精度は知っているじゃろう。第2騎士隊の騎舎にいたから何とか居場所が分かったもんなんだしな。」

「あっ、忘れてた。

取り敢えず第2の騎舎に着いていれば、ルダート副団長達が向かったから一安心か。」

「何か情報が入ったら、すぐに連絡をしてこい。風魔法での伝達での方が速いから、風魔法で頼むぞ。」


攻撃以外の魔法が苦手だからといって、目線を逸らすな。40も超えたおっさんだろうが。

それに儂もいち早くミーナの情報は欲しいしな。手遅れになって、ミーナをまた傷つける訳にはいかんからな。


ハンスが騎士団の隊舎に戻るのを見届けて、訓練に戻る。

どうやら、何人もこちらの話に聞き耳を立てている連中がいた様じゃな。

何度も一緒に訓練したことのある連中だから、ミーナの事が心配なのは分かるが、団長と騎士団の隊長の話に聞き耳とはいい度胸じゃ。


「誰が、訓練を中断していいと言った?

今の訓練では随分と余裕があるようじゃから、ちと厳しくするべきじゃの。

ほれ、次々と魔法を撃つぞ。しっかり対応するんじゃな。」


あちこちで悲鳴が聞こえるが、知らんな。

通常の2倍の厳しさで訓練をしていると、緊急会議の招集の知らせが風魔法で届いた。しかも最上級の陛下達を含めてのやつか。

ミーナに何かあったのか!?

訓練を中止して、急いで緊急会議用の会議室に向かう。

会議室に着くと、ハンスも同時に着いた様だ。目で何か知っているかを問えば首を横に振られる。

その直後に、オルデンとリッツが共に姿を現した。


「ミーナに何かあったのか!?」

「ミーナちゃんはいたって元気だ。ただ、相手がな…。

それは、会議が始まってから全員まとめて話す。シュテルネン団長もいいですね。」


ミーナは無事か、それは良かった。ハンスをチラッと見れば、安心した顔と訝し気にしている顔をしている。儂も同じ顔をしているとは思うがな。

ミーナが無事なのに、何故に緊急会議なのじゃ?そう言えば、相手がと言っていたが、何かまずい相手じゃったのか?例えば帝国あたりの上位貴族じゃったとか…。

そんな事を考えながら、自分の席についていると続々と人が集まってくる。

今この場所を襲撃したならば、この王国は瞬時になくなるな。


騎士団の隊長2人がいない状況で会議がリッツ先導で始まった。

内容を要約すると、ミーナを襲った連中は、ミーナが目的では無く、王都襲撃の際に学院で騒動を起こす為に、接触したと。

それで、第3騎士隊は情報収集に失敗していた為に、今まで情報が入っておらずに後手に回って、捕らえた者と使者から情報収集中じゃと言う事か。

それで、内通者がいるかも知れん。


それと、王都襲撃に対する備えも、既にある程度はしておって、騎士団で出来ない防御壁を儂に施して欲しいと言う事じゃな。それとヘレンが前線に出ると。まぁ、騎士団からは団長が前線に出て、魔法士団からは副団長が出ればバランスもいいしな。


それにしても、ミーナはとんでもない者を引き当てた様じゃ。

相手も運がなかったな。ミーナ以外だったら上手くいっていたかも知れんが、ミーナの行ってる訓練は、身を守るための鬼畜使用じゃ。…ミーナに限らず儂の子・孫は帝国の脅威にさらされるから、みな鬼畜使用にしているが。


さて、王宮と王宮の地下に秘密裏にある【電魔力】供給所に、防御壁を張り巡らすかの。

流石にこれをすると魔力が3/4は持っていかれるからしんどいの。

儂以外に王宮と【電魔力】供給所を1人でカバーできる者はいないからな仕方ないが、ミーナに迷惑をかけた連中にお礼をしたかったのじゃがな。

役目をあっという間に遂行した後に会議の内容に集中してみれば、オルデンの同行者にミーナの名が挙がっている。

何じゃと、ミーナはまだ未成年で貴族でもないと言うのに。とんだ事を提案してくれたもんじゃ。

ミーナに何かあったら、只じゃおかんぞ。ハンスを見るとやはり、瞳が剣呑としている。何かあったらハンスと共闘して騒ぎを起こしてやる。

ハンスが騎士団の制服を作るのを止めなかったのがまずかったな。いや、儂もこっそりと魔法士団の制服を作っていたが。


緊急の会議が終わり、ヘレンにミーナの事を重ね重ね頼み、ネイルソンにはミーナの情報を風魔法を駆使して、順次集めてもらうようにした。

儂は、自分が張った防御壁に敵が攻撃を仕掛けたらいつでも転移して応戦出来る様に、第1魔法士隊の騎舎で体力温存と指示に当っていたが、早々に王宮に辿りつけない様で、特に何も起こる事は無かった。

暫くするとヘレンから風魔法での伝達がきた。


≪団長、申し訳ありません。不測の事態が発生したため、クリーガ騎士団団長とミーナちゃんとは別行動になりました。

後を追おうとしているのですが、異形なモノに足止めされています。

異形のモノの詳細は、ルダート副団長に連絡していますので、おって詳細が分かると思います。≫


異形なモノとは何じゃ?

ヘレンはミーナとは別行動か。…オルデンは性格に少々難はあるが、強さだけは確かじゃから、ミーナも安全だとは思うが、異形なモノの存在がきになるな。


「ネイルソン、ルダート騎士団副団長から何か連絡事項は来ていないか?」

「いえ、まだ来ていませんね。ただ、ミーナちゃんの情報収集で❝異形なモノ❞と言うセリフがありましたが…どうやら、ミーナちゃんとクリーガ騎士団団長にとってはさして問題の無い程度の強さでしかないみたいですね。

まぁ、2人の戦闘力では問題が無いだけであって、普通の騎士や魔法士にとっては強敵の様ですが…。」

「団長!

ルダート騎士団副団長より伝令です。」


第1魔法士隊の見習いが、慌てて部屋に飛び込んで伝令の紙を渡して来た。

どうやら、❝異形なモノ❞の詳細や一部の個体での対処方法が書かれていた。


「ネイルソン、これを全魔法士と騎士に伝達しろ。」

「無茶言わないで下さい。そんな事が可能な魔力量は団長ぐらいのものです。

優先的に戦場になっている、王都にいる魔法士と騎士に伝達をします。」


そう言いつつ、風魔法での伝達が得意で魔力量も多めの人間に、王宮内にいる魔法士と騎士への伝達を託し、王都以外の駐屯地への伝達員にも伝達をさせている。

確かに、王都だけが狙いとはかぎらんからな。もしかしたら時間差で、別の地域も襲撃されるかもしれんからな。


伝達が終了した頃に、王都の大部分が銀色の光に突然包まれた。

これは…ミーナの魔力か?一体何が起こった!?

ネイルソンを見ると、険しい顔をしておる。


「団長、この魔力は…。」

「ネイルソン、儂はミーナの元に向かう。その事はハンスに伝達をしておけ。

儂は時間が惜しいから、転移ですぐに移動する。後の指示は任せた。」

「ドゥムガイツ貿易商会です。」


風魔法で情報収集して、ミーナの大凡の位置に転移すればいいと考えとったが、ネイルソンが場所を知れせてくれたから手間が省けたわ。

転移の魔法を行使して、ドゥムガイツ貿易商会に行けば、ミーナを抱えたオルデンが店の中から現れたが、オルデンの服装は酷い有様になっておった。

ミーナも微動だに動かないのは何故じゃ?


「ミーナの身に何が起こった!?

異常な程の、ミーナの魔力を感知したんだが…魔力枯渇による意識不明の状態か!!?

まずいな…すぐに処置をしなければ、手遅れになる。

済まんが、ミーナは連れて行くぞ。」


ミーナの状態を確認しながらオルデンから事情を聞こうと思っておったが、そんな猶予は無い様じゃ。

生命維持を行う魔力がなくなっておる。


急いで、魔力を込めて治癒せねばならんな。

幸いミーナとの血縁での魔法使いが儂も含めて3人いるのは僥倖じゃろう。

生命維持に必要な魔力の補給は、血縁者からしか出来ないからな。

そうなると、転移はまずいな。風魔法で飛行しながら、ミーナに儂の魔力を分け与えて、ハンスとロイが合流するまで、生命維持をせねばならん。

その場をさっさと後にし、先程まで居った第1魔法士隊が詰めていた場所に行き、ネイルソンにハンスとロイを呼び寄せてもらおう。


王宮に着けば、既にハンスが居て、遅れてロイも到着をした。

その後、生命維持をする為の魔力が安定するまでの1週間を、3人で交代しながら魔力の供給を行い続けた。

普通は半日以内に、長くとも1日以内に魔力が安定するのだが、1週間とはどうゆう事じゃ?


ミーナは魔力が安定しても目覚める気配が無い。

そんな中、今回の騒動に関しての纏める会議が行われることになり、ロイにミーナの側につけ、ハンスと共に会議に臨んだが、そこで、ミーナの事も議題に上がってきおった。


「次に、ミーナ・ヴァグナーク譲の事になります。

彼女の事は、ここにいる皆さんはご存知の通りですが、今回の騒動で長年不明だった彼女の魔法の系統の予測が付きました。

今まで誰も行使することも出来なかった、回復・治癒系統の可能性が高いと推察されます。

王都に突然現れた銀色の光は、ミーナ・ヴァグナーク譲の魔力と一致しているのは、複数の魔法士団の隊長達が把握済みで、その光に当たったものは、怪我の度合いに関係なく、治癒しています。また、その光を浴びた重篤の病状だったものも回復傾向にありました。

そして、クリーガ騎士団団長の証言により、その可能性が濃厚になっております。

その力が確定されれば、今後さらに暗殺や誘拐の可能性があります。

王国で彼女を保護する為に、彼女の親族であり先の会議で決定され侯爵位になったシュテルネン家に養女として入って頂き、少しでもその守りを固めたいと思います。

宜しいですね?ヴァグナーク第1騎士団隊長、シュテルネン魔法士団団長、シュテルネン侯爵?」


いきなり会議の場でそれを言うのか!?事前に確認を取る事が出来んのかこの宰相は!?

顔を見る限り、ルーカスもハンスも寝耳に水の様だな。宰相補佐のルーカスも知らせてないとは、どういう神経をしとるんだ、この宰相は。

陛下を見ると、苦虫を噛み潰した顔と儂らの反応に驚愕した顔をしとるな。これは、本心ではミーナをこれ以上縛るのに納得しとらんが、それが最善だと思っているんじゃろうな。

ルーカスとハンスが目で会話をし、この場では補佐の仕事をしておるルーカスの代わりにハンスが答える様じゃ。


「それがミーナの為になり、陛下がお決めになった事であれば仰せのままに従います。ただし…。」


ハンスはそこで言葉を区切り、儂の方を見て来た。

言わんとすることを理解しその言葉を儂が引き継ぐとしよう。流石にただの隊長では言えんよな。ここは、この王国の英雄の儂が、脅しをかけておくとしようか。


「もし、ミーナを利用する為に貴族にするのであれば、儂らは許さん。

何かしようものなら、その時は覚悟を決めるんじゃな。」


儂は、宰相の目を見て宣言すれば、唇の端を一瞬引き攣らせ、何事も無かったかのように頷きおった。

こやつは本当に分かっておるのかの?儂の力もハンスの力も。それにルーカスやカールも中々の曲者何じゃがな。

陛下と言えば、何か言いたそうな顔をしておるが、取り敢えず無視をしとくかの。

言い訳は会議の後にたっぷりと聞いてやるかの。


「それと、ミーナ・ヴァグナーク譲の事を世界に向けて発表しなければなりませんので、同盟国や友好的な近隣諸国に回ってもらい、その力を発揮して頂き、少しでも暗殺や誘拐などのリスクを減らそうと考えております。」


この宰相だけでもさっさと潰しとくか?ミーナを損得勘定で計ってそうだな。

その後も会議が続いたが、儂はミーナの今後の事を考えておったから他の話は右から左に聞き流した。

どうせ、あとでヘレンかネイルソンから今日の会議の内容をまとめた書類が届くからそれを確認すればいいしな。


会議後、陛下の言い訳を聞くために、陛下の執務室を訪れた。

向こうも予測が出来てた様で、人払い済みの執務室にすんなりと入室できたが、さてどんな言い訳が出てくることか。


「アーノルド殿、宰相が事前に話を通していなかった事は申し訳ない。

だが、今回の王都襲撃には帝国が関与している。

無理にでも貴族にしておかなければ、ミーナ譲は帝国に誘拐され奴隷の様な扱いを受けることになりかねん。」

「それは儂の孫である時点で、避けようのない事じゃ。今更じゃろう。」

「帝国だけがミーナ譲を狙う訳ではない。国内の貴族や悪どい商人、同盟国や近隣諸国にも狙われる。少しでも手出しのし難い状況を作らねばならん。

シュテルネン家は、武門でも名を馳せてきた古から続く家だ。

だからこその守りにもなる。」

「それだけを考えているわけではないんじゃろう?」

「…パトリックの婚約者にすることを考えている。本人にはこれから伝えるが。」

「守りの為にそこまでする必要はない。」

「これは譲れません。我が王国の為にもミーナ譲にはこの王国にいて頂きたいのです。

この王国の民を限りなく守るためには、彼女の力は必要不可欠だ。」

「それは、王としての決断か?」

「そうだ。それに、20年前の悪魔…叔父上が生きていた。

その叔父上がミーナ譲に目を付けた。そうであれば、叔父上と同じナディの名を持つ我ら王族が彼女の守護を行うのは当然だ。」

「どう言う事じゃ!?

リガーフェルが生きていたじゃと!?そんな報告は受け取らんぞ!!」

「ミーナ譲が大変な時だったから伝えられなかった。すまん。

貴族にするのは、他国や国内への牽制でもあるが、一番の理由は、パトリックの婚約者にして守護をする為だ。

納得してくれたか?」

「くそっ!

何かミーナを傷つけることや多大に利用する事があれば、ナディの守護は棄てる。その意味が分かるじゃろうな!?」

「肝に銘じておく。この事をハンスやルーカスに含めて説明しておいてくれ。」


何だってこんな事になるんじゃ。陛下の決定に従わざるおえんじゃろうが。

だが、ミーナの心を傷つければ、儂が何とかしてミーナを自由にせねばならんな。

お読み頂きありがとうございます。

次回も閑話の予定です。

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