36話
リッツさんに案内されて、セシルとアンナが待っている部屋へやってきました。
意を決して、扉をノックしようとすると中から扉が開きました。
「ミーナ、よかった無事だったのね。」
「心配したんだから、本当に良かった。」
セシルとアンナが泣きながら抱き着いてきました。私の事が怖くないのでしょうか?
「セシル・アンナ…2人も怪我はない?大丈夫?
…それに私が怖くないのですか?」
「私達は怪我もないわよ。ミーナが庇って逃がしてくれたんだから。」
「そうよ、それに怖いなんて事はない。ミーナが優しい子だって知ってるんだから。
それに、おじ様から2年前の事件の事もその顛末も聞いて知ってるの。
だから、ミーナに護身術を習って少しでも支えられたらって思ってたんだから。」
「それなのに、気が動転し過ぎててミーナが言っていた事も守れなかったのが悔しい。
ごめんね、力になれなくて。」
「セシル・アンナ…私こそごめんなさい。」
私も2人に泣きながら抱き着きました。
リッツさんが少し呆れた顔をしているのが、目の端に映ります。
「感動中に悪いが、今後の事で話がしたいから、中に入ってもらえないだろうか?」
2人がリッツさんを見て固まっています。そう言えば、リッツさんは子供受けが悪かったのでしたね。女性受けもあまりよくは無い様です。
あからさまに2人が怯えています。失礼ですよ。
「セシル・アンナ。こちらは騎士団のリッツ・ルダート副団長です。
少々怖い顔をされていますが、とても気さくで優しい方ですよ。ただし、敵には容赦しないですから、鬼神の異名で恐れられていますが。」
「ミーナ!?本人目の前で鬼神とか何言ってるの?」
「セシルの方が失礼よ。
お初にお目にかかります。ミーナの友人でアンナ・リーベルトと申します。」
「失礼しました。ルダート副団長様。
同じくミーナの友人で、セシル・アンダーソンと申します。」
「そこまで硬くならなくていいぞ。騎士団の人間じゃないんだからな。
それに、初対面の連中は大抵怯えるから、その手の反応は慣れてるからな。
それより、中に入っていいか?」
「すみませんでした。入り口で自己紹介をするなんてとんだ失礼を、どうぞ。」
ようやく、室内に入る事が出来ました。
部屋に入ると、騎士様がいらっしゃいました。中で警護されていたのでしょうか?
普通は扉の前の様な気がしますが、そう言えば扉の前に人がいませんでしたね。
騎士様の顔が何故か引きつっていますがどうしたのでしょうか?
「ほう、警護は扉の前でする決まりだったはずだが。部屋の前に警護が誰もいないから不思議だったが、お前の職務はなんだ?
少女と一緒にお茶をする事か。どうした、顔色が悪いな。」
「申し訳ございませんでした。
本来の職務に戻ります。」
それだけ言い残して、まだお若い騎士様がそそくさと部屋から退出されました。
何だったのでしょう?まさか、セシルとアンナをナンパしていたのでしょうか?
「セシル・アンナ、先程の騎士様に何もされませんでしたか?」
「えぇ、お話ししてただけよ。」
「そうそう、ずっと立ちっぱなしは大変だろうからお茶を差し入れたら、部屋に入って来てソファに座ってお茶を飲みだしてびっくりしたんだよね。」
「…そう。」
リッツさんの顔を見ると、すごく黒い事を考えているような顔をされています。
あの騎士様は、明日を無事に迎えられるのでしょうか?
見なかった事にしましょう。
「うぅん。
さて、今後についてだがな。貴女達にはしばらく、騎士団預かりのもと、騎士団の隊舎で過ごしてもらう。
そんな心配そうな顔をするな。理由としては、王都襲撃を企てる者どもに接触されたからだ。
そいつらの一部が、今朝貴女達を襲った連中だ。襲った連中は捕まえたが、それ以外の概要が全く分かっていない現状だ。
その為、一部とはいえ概要を知り尚且つ、連中の一部を捕まえる手助けをした貴女達を、残りの連中に襲われる可能性があるから、こちらで保護させてもらう。」
「…そんな。」
「あの、父と母はどうなるのでしょうか?一緒に保護してもらえるのでしょうか?」
「保護の為に動いている。
ただ、敵がどこに潜んでいるかわからない状況だから、すぐには動けない。」
「どうしてですか?」
「騎士団に何のかかわりもない者をいきなり保護すれば目立つからな。
学院も通常通り行われているから、学院が終わる時間帯に学院の関係者を装った騎士を向かわせ、説明と保護を行う。」
リッツさんがスラスラと既に決定している事の様に伝えていますが、そんな事いつ決まったのでしょうか?先程はその様な内容は1度も出ていませんでしたが。
リッツさんを見ると、目線が黙ってろと言っている様です。今決めた内容なのですね。
「状況の説明が終わったから、俺は退出させてもらう。
今後の対応を団長が動く前に決定して、周知させないといけないんでな。
くれぐれも、勝手な行動はしてくれるなよ。」
「「「わかりました。」」」
リッツさんはそれだけ言うと、あっという間に退出していきました。
さて、私達はいつここから王宮内にある隊舎に移動するのでしょうか?それまで何をしていましょう?
「…ミーナ、大丈夫だよね?」
「騎士団の力を信じましょう。」
「それに、魔法士団もでしょ?」
「そうですね。」
やっぱり、王都襲撃の話を知り怖いですよね。それによって、自分も命を狙われるかもしれないのですから。
でも、敵はいつ王都襲撃を実行する予定なのでしょうか?
まだ数日の猶予があればいいのですが…。
「ねぇミーナ。
こんな時に無神経かもしれないけど、2年前の事件の事聞いてもいい?」
「セシルそんな事今は関係ないでしょ?」
「そうだけど、両親が狙われるかもしれないと思うと、最悪の場合の心構えが必要でしょ。
ミーナが何を感じて何を思ったのか。どうやって乗り越えたのか。
今知っておかないと後悔する気がするの。
もちろん、無理にとは言わない。話したくなければそれでいい。どうかな、ミーナ?」
「……わかりました。ですが、私も心の傷が完全には癒えていないので、途中で話せなくなるかもしれませんが…。」
「ありがとう、ミーナ。」
お読み頂きありがとうございます。




