35話
扉をノックして入って来たのは、リッツさんとリッツさんによく似た厳つく大きな男性と、女性と見紛う程に綺麗な男性でした。
ダンさんが即座に敬礼をしています。私も慌てて立ち上がり、礼を取ります。
「ミーナちゃん、久しぶりだな。
怪我は無かったか?」
「はい、どこも怪我はしていません。
えっと、そちらの騎士様は第2騎士隊隊長と第5騎士隊隊長の方でしょうか?」
「ミーナちゃんは会った事が無かったのか。
まず、俺に似た厳つい顔のでかい男が、第2騎士隊隊長のグロー・ルダートで俺の弟になる。
もう一人の顔が綺麗な男が、第5騎士隊隊長のシャルフ・ドレットだ。」
「初めまして、ルダート隊長、ドレット隊長。
ミーナ・ヴァグナークと申します。」
「おう。ルダートだと兄貴と紛らわしいから、グローでいいぞ。」
「ミーナ譲、初めまして…と言いたい所ですが、2年前の事件の時にお会いしてますよ。
まぁ、その時は女性の恰好をしてシャルナと名乗っていましたが。」
「えっ、シャルナさんですか!?
嘘…女性だと思っていました。気が付きもせず申し訳ありません。」
「いいんですよ。どちらかと言うと、あちらの姿の方が普段の姿ですので。
今日は、騎士団で隊長以上での会議が合ったので、この格好なのです。ですから、呼び方も今後もシャルナでお願いしますね。」
「はい、わかりました。」
シャルナ隊長は心が女性なのですね。今後失礼な事を言わない様に注意しましょう。
そして、グロー隊長はリッツさんの弟さんですか。確かに顔の造りがそっくりですが、グロー隊長の方が若干厳つい気がします。
「挨拶はそれで終わりにして、本題に入ろうか。
今朝の出来事の確認をさせてくれ。まず、ミーナちゃんの今朝の行動と荒くれ共と出会うところまで頼む。」
「はい。今日もいつも通り、早朝の父様との稽古をした後に教会に向かいました。
教会に着いた後は、ナディエージ神に祈りを捧げて教会内と周辺の掃除を1時間程行い、学院に行くのに迎えに来てくれた友人2人と連れ立って、教会から学院に登校していました。
学院の正門に続く道に入って少し歩いた所で、後方から家紋が見当たらない見慣れない馬車が猛スピードで近づいてきたので、友人2人の手を引いて道端に避けて立ち止まったのですが、私達が立ち止まったのを見て、馬車の方もスピードを落として私達の近くに止まり、中から人が降りてきて、‘ラッキーだな。お前らは学院の生徒で合ってるな?大人しくしていれば、それほど痛い目には合わせないからな。’と言われました。」
「そうか。その友人2人と言うのは、今別室で待機してもらってるセシル・アンダーソンとアンナ・リーベルトで間違いないな?」
「はい。2人には敵の隙をついた際に、脱出してもらいました。
護身術は教えていても、普通の女の子ですから。
血生臭くなるあの場所から離れてもらいたかったのと、騎士様を呼んで来て欲しかったですし…。」
「…そうか。
あの子達もその状況で、友人1人を残して行動する事を選べたな。大したもんだ。
ミーナちゃん、その後の顛末を聞いてもいいか?」
「…あのセシル達は、襲撃者の事で何か言ってませんでしたか?」
「いや、俺達が直接聞いた訳じゃないが、ミーナちゃんが襲われたとしか…。
何か他にあったのか?」
「私達が攻撃を避けた事で、動揺した1人が目的を語っていたのですが。」
「ミーナちゃんの誘拐か殺害じゃ無かったのか?」
「違います。私を襲ったのはたまたまだったと思います。
動揺した人曰く、プランツェ王国の王都襲撃時に学院内で暴れると言っていました。
その為に、学院内での潜伏場所を確保する為に、学院に向かって歩いていた私達に目を付けたのだと思います。」
「っな!王都襲撃だと!?
フォスキー、お前は確か現場に駆け付けたんだったな。話は聞いていたか!?」
「いえ、初耳です。セシル達は酷く動揺して慌てていた為、要領が得られず分かった内容がミーナが襲われている事だけでしたので。
申し訳ありません。落ち着かせてから、詳しく内容を聞くべきでした。」
「いや、あのエリアの重要事項はミーナちゃんの安全確保だからな。そのミーナちゃんが襲われているとなれば、それを優先しちまうのは仕方のない事だ。2人の動揺も間近で友人が襲われた為だと思えるしな。
それで、それ以外の詳しい内容は分かるか?」
「恐らく、動きが統率されたものでしたので、どこかの兵隊だとは思うのですが。
一応、リーダー格の男と動揺して口走った男とその男と同格の男は生け捕りにしてあるので、尋問してもらう他ありません。」
「生け捕りに成功したのか!?さすがだな。
ダン、今の内容を団長と各隊隊長に大至急伝令をしろ。シャルフは通常の姿に戻り、第3騎士隊に先行して、王都襲撃に係わる情報の入手だ。
グローは、大至急第2騎士隊のシフトの編成を行え。人員が足りない様なら第5から引っ張ってこい、許可する。
時間との勝負だ、急げ!」
「「「はっ。」」」
「ミーナちゃんと友人2人はしばらくここに滞在してもらう。
万が一、敵方に情報が回っていたら、口封じに襲われかねないからな。」
「そうですね。
一応取り逃がした者はいませんが、騎士様が到着された時には野次馬が数人いましたから。」
「そうか。2人が待機している部屋へ移動しようか。
…何かあったのか?」
どうやら、私の顔色が悪くなってしまった事に気が付かれたようです。セシルとアンナに会うのが、今更ながら怖いです。だって私は2人の前で躊躇いもなく人を殺してしまったのですから。
「…2人を逃がす時に、2人の前で人を殺したので……会うのが怖いんです。」
「…そうか。でも、いつまでも避けられないだろう?
ミーナちゃんの数少ない友人なんだからな。それに、向こうは、自分たちの所為で人殺しをさせたと思ってるかもしれないぞ。
それをそのままにしていいのか?」
「っダメです。」
「じゃあ、行こうか。」
リッツさんに促されて、2人が待つ部屋に向かいます。
リッツさんの言っている事は分かるのですが、それでも怖いです。2人は、唯一の友人なのですから。
お読み頂きありがとうございます。
グローはリッツの一卵性の双子の弟になります。なので、リッツ同様に厳つい顔に産まれ、父親から剣を渡されリッツと共に家庭教師を付けられて、騎士の道へ。




