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29話

イヴォール大臣の終了の合図で、私とオルデンさんはお互いに剣を引き距離を取ります。

距離を取りオルデンさんの顔を見ると、とても楽しそうであり残念そうな顔をされています。

父様、オルデンさんは、脳筋と言うより戦闘狂では無いでしょうか?


周りで見ていた陛下達の視線が、何だかいたたまれないのですが何故でしょう。何だか私まで脳筋の戦闘狂と思われていないでしょうか。

私は断じて違うのですが…。


「今の模擬戦は見事です。まさかクリーガ騎士団団長とここまで戦えるとは思っていませんでした。

次のネイルソン第1魔法士隊隊長との一戦の前に、少し休憩を取る事にしましょう。」

「ありがとうございます。」


イヴォール大臣からお褒めの言葉を頂きました。

休憩を取って良いとの事でしたので、伯父様の側へ移動します。

伯父様も私がここまで戦えるとは知らなかったようで、呆然と立ち尽くしていました。


「ルーカス伯父様?

呆然とされていますが、どうされたのですか?」

「いえ、ハンスから模擬戦に向けての仕上がりは上々だとは聞いていましたが、ここまでとは思いませんでした。

今ので無理をしたり、怪我をしたりはしていませんね?」

「…えっと、打ち身を少々していますが、問題ない程度です。」

「クリーガ騎士団団長は、タカを少し外されている様でしたからね。

後で抗議をしておきましょうか。」

「いいえ、戦闘中での事ですので、必要はありません。」

「…まあいいでしょう。

それよりも、どうしてこちらに戻って来たのですか?

まだ、ネイルソン隊長との一戦も残っているでしょう。」

「イヴォール大臣に休憩を取ると言われましたので。」

「なるほど。陛下達も予想外の結果に驚いているのでしょうね。

たかだか8歳の少女に、ここまで出来るとは思っていなかったのでしょう。意思の疎通をする時間にあてているのでしょうね。」


伯父様が何か独り言を言われていますが、聞き取れません。

きっと伺っても答えてはくれないでしょう。

折角の休憩時間ですので、水分補給をしておきましょう。ローネの果汁を絞って、ロイ兄様に冷やして頂いてローネ水は、とってもおいしいです。ついでに、トラベのドライフルーツも頂いておきましょう。疲れた時には甘いものですね。


「ミーナ嬢、そろそろ再開をしたいと思いますが、宜しいでしょうか?」

「はい。大丈夫です。」


どうやら休憩は終わりのようですね。

次はネイルソン隊長との一戦です。お祖父様曰く、計算して魔法を放ち、連続攻撃が得意との事です。

そして、風・水・土の属性との事でした。

さて、どのようにいたしましょうか。


「それでは始めたいと思いますが、魔法士は戦闘時は基本的に後衛職になります。

その為、先ほどよりも、開始時の間合いを開けていただきます。

では、両名前へ。」


私とネイルソン隊長はお互いに20歩ずつ離れた位置に立ちます。

お祖父様やロイ兄様との訓練の時はこれぐらい開けてから開始するので、順当ですね。

ネイルソン隊長の眼光も鋭いのですが、先程のオルデンさんと比べると、大人と子供程の差がありますね。

オルデンさんの眼光に耐えたので、対した威力ではありません。

私も先程と同じぐらいに目を鋭くさせていますが、ネイルソン隊長が少し身じろいでいます。仮にも隊長ですから、子供の眼光ぐらい平然と流してしまいましょうよ。

そんな事を考えていると、イヴォール大臣は私たちが立ち止まり向かいあったのを確認してから開始の合図をだします。


「っ始め。」


連続攻撃が出る前に、一気に距離を詰めましょう。

ですが、ネイルソン隊長も簡単に間合いを詰められない様に、土魔法で石礫を散開させ飛来してきます。

大きさが均一で丸ければある程度の被害を覚悟して飛び込んで行きますが、大小様々で丸い形や尖った形まで見受けられます。突っ込むのは得策ではありませんね。

石礫の攻撃を躱せる位置だと、距離が詰められませんね。

クナイを投げて、僅かでも集中力を落としてもらいましょう。


=シュッ、カン=


ネイルソン隊長の手元を見ると、先程までなかった氷の刃があります。

私の行動はお見通しと言いたいところでしょうか。

オルデンさんとの一戦でも、クナイは使ってましたからね。となると、飛び道具は虚を突かなければ意味がなく、こちらの手数を減らすだけですね。

こちらからの遠距離攻撃は使えないのであれば、ただ走るのでは無くて、ステップを付けてみましょう。


タタン、タタン、タタン、タタタン、タンタン、タタッタ、タン、タッタタタン…


私の独特な動きに、狙いが定めづらくなった様で、石礫の軌道が迷い出しています。

今の内に一気に距離を詰めます。

ですが、ネイルソン隊長もすぐに立て直し、今度は石礫に加えて幾つもの小さな水球を漂わせています。

待ってください。何故か沸騰している水球もありませんか?

流石に、あれが当たれば痕が残りそうです。模擬戦で使う魔法でしょうか?

水球は最初漂っているだけでしたが、私に向って飛来してくるものも出てきました。中には沸騰しているものもあります。

勘弁してください。私は女の子ですよ、痕に残るのは御免被ります。

一旦距離を取り、再度作戦を考えなければですね。


ネイルソン隊長は動揺しても立ち直りが早いので、動揺させてもあまりいい手に繋がりません。

クナイを数を打っても当たる気がしませんね。風魔法を使って軌道を逸らしてくるでしょうし…。

仕方ありません。腕がかなり大変な事になりますが、あれをしましょう。

お読み頂きありがとうございます。

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