28話
今日はいよいよ模擬戦の日になります。
王宮の訓練場でやる訳にはいかないので、陛下以下大臣方には視察や休暇などの理由で王宮から出てーー何名かは王宮に残りますーー私が普段行く森の泉の所で行われます。
私としては、この1ヶ月で出来る事はやったつもりです。
今からとてもドキドキしています。
森へは、父様とお祖父様が護衛で陛下達と来られるので、伯父様と一緒にプフェートに乗って来ました。
陛下達が来られる予定までまだ時間があるので、果物や薬草の採取をして時間を過ごしましょうか。
薬草を採って帰ると、セシル達アンダーソン一家が喜ぶので、最近は採取して帰る様になりました。
「…ミーナ、緊張感が全くないですね。それにその服装で本当にいいのですか?」
「ルーカス伯父様、普段通りにしていないと体が緊張で動かなくなってしまいます。
普通が一番なんですよ。」
「…はぁ、ミーナは大物なのか只の馬鹿なのか分からなくなりました。」
「ルーカス伯父様何て言われたのでしょうか?」
伯父様が呆れた顔をされて、最後に何か小声で言われたのですが聞き取れませんでした。
最近多い気がします。耳が遠くなったのでしょうか。どうやれば聴覚は鍛えられるのでしょう?
1時間程、泉の付近で採取を行っているとプフェートの嘶きが聞こえて来ました。
予定より早い到着になりますね。
伯父様と一緒に頭を下げ、最上級の礼をとり馬車から降りられるのを待ちます。
「待たせたな。
今回は非公式の場ゆえ、型苦しくするな。
2人共面を上げよ。
…少女が件の子供か?服装はそのままでいいのか…?」
「陛下、発言のお許しを。」
「許す。」
「今回の事で陛下方のお許しを得て、姪が自由に外出などが出来る様になった場合、外出中はこの様な一般的なワンピースでの外出になります。
模擬戦で、動き易いシャツ・パンツで実力を示したとしても、万が一襲われた際は動き難い服装になります。ですので、模擬戦でも普段と同じ格好で行い実力を示したいと、姪の意向でございます。」
「…確かにその通りですね。
陛下、ここは相対するクリーガ騎士団団長とネイルソン第1魔法士隊隊長が是であれば、その服装のままで行っていいかと。」
「如何だ?」
「「仰せのままに。」」
陛下達の話がまとまりましたね。
それよりも、服装の事はそんなにおかしな事だったでしょうか?
何の為に模擬戦をするのか、考えれば当たり前の行動だと思っていたのですが…そう言えば、父様達に言った時も微妙な顔をされていましたね。
私が自分で作っているワンピースだと暗器を取り出し易いんですが。
「では、早速始めて貰う。
イヴォール大臣、審判を。」
「はっ。
まずは、クリーガ騎士団団長との一騎打ちをして頂く。両名前へ。」
武器は刃を潰した模擬剣を使用します。
私には両手剣は重いので片手剣を、オルデンさんは両手剣を持ち、お互い10歩程離れた場所で向かい合います。
対峙すると、オルデンさんの眼光は普段以上に鋭くなっています。
普通の8歳児はそんな目線に晒されたら、お漏らしして泣きじゃくるか、気絶するでしょうね。
意地でも、目線だけでは負けませんよ。こちらも睨み返しますが、オルデンさんニヤリと笑わないで下さい。
本物の鬼に食べられる直前の様な気がします。
ここで漸く、イヴォール大臣が合図をしてくれるようですが、何故目線を逸らすのですか!?
目の端で捉えて不安になります。
「始めっ!」
オルデンさんは開始の声と共に、動きました。
やはりスピードが速いですね。ですが、まだ想定内の速さです。こちらも素早く動きます。
オルデンさんが迫りながら剣を突き出して来ましたが、左に飛んで避け、そちら側から私も迫り剣を振りかぶります。
オルデンさんは予想済みだと言わんばかりに、突き出していた剣を戻し受けの体勢をとりました。
ですので、振りかぶっていた剣を途中で止めてバックステップを踏み一旦離れます。
オルデンさんは怪訝な顔を一瞬したので、隠していた暗器の1つである小型のクナイーー訓練用の刃を潰したものーーを時間差で3つ程投げつけます。最後の1つを投げつけた後に、最高スピードで急接近して剣を右下から左肩に掛けて振り上げます。
➖カンカンカン、ガギーーン➖
流石、騎士団団長です。いとも簡単に防ぎますね。父様相手の時は初手のみでも擦り傷を付けられたのですが。
ですが、父様からオルデンさんの強さは人外だと聞いていましたし、尚且つ異常な程の脳筋で、戦闘中の勘は野生の獣以上だとも言っていましたので、その事では動揺する様な事はありません。
しかし、オルデンさんの顔が益々笑顔になってきているので、そちらには動揺しそうです。
オルデンさんは平凡顏の筈ですが、現在の顔は舌舐めずりしていて、かなりいっちゃっています。
あれ、私の命の保証はありますよね!?
次の手はどうしましょうか?全ての手の内を見せるのは流石に嫌なのですが…。
仕方ありません。左袖に隠している小刀を出して、双剣にして剣舞の様に舞いながら、スピード重視で捌き攻めましょう。
防がれた際に、素早く間合いを取っていましたが、オルデンさんが一気に詰めて来ました。
更にスピードが上がっています。
まだ想定内でしたが、幾つかは攻撃を喰らう事は確実ですね。致命傷になる物を優先的に防ぎましょう。
くぅー、痛いです。
段々オルデンさんのスピードが上がってきていて、防ぐのが難しくなってきました。
何時までも嬲られていては堪りませんね。
小刀を顔目掛けて投げて、剣を左手に持ち替えます。右袖の下に巻きつけてある細い鎖で、オルデンさんを拘束したい所です。
➖ガシャン➖
簡単に鎖を弾き飛ばされました。悔しいですね。
その悔しがった一瞬で喉元に剣を突き付けられてしまい、剣を離して手を上げ降参する様に見せかけ、もう1本の小刀をオルデンさんの脇腹に突き付けます。
「……そこまで。」
この勝負はどうなるのでしょうか?
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