➖閑話 〜ロイ・ヴァグナークの八当たり〜➖
予告なく閑話になります。
本編を楽しみにされていた方は申し訳ありません。
母上が流行病に倒れた時に、ミーナからの手紙をダン・フォスキーが預かり、伯父上の屋敷に届けたと知った時に嫌だと思っていた。
だってあいつは、少し人当たりが良くて明るいというだけなのに、周りから倦厭されがちな兄上と仲がいい。それが許せない。
兄上はかっこいいし剣の才能が凄くて、僕には遠く及ばない存在なんだ。
昔は、兄上にミーナを取られたくなくて張り合っていたけど、毎日訓練をしていれば兄上の凄さが身に染みて分かった。
いや、兄上だけでなくミーナの才能にも驚かされていた。
学院が再開された時に、兄上と一緒にダンを呼び出した。
兄上はダンに、ミーナに惚れたらタダじゃおかないと言い、ミーナの瞳の色を聞いていた。
どうやら、眼鏡の効果が発揮されていて瞳の色は分からなかったそうだ。
それの確認が済んだ所で、ミーナの存在自体を誰にも話すなと兄上が言えば、伯父上からも言われているから、言うことは無いと宣言している。
兄上はそれで納得していたが、僕はミーナの事が心配で、その後も視線に入れば睨み付けていた。
周りの友人からは、ダンと何か有ったのかと聞いてきては、ダンはいい奴だとか、兄上の友人なんだから信頼すればとか色々言ってきた。
何で皆、あいつの肩を持つんだ。こっちは、大事な兄上とミーナが関わってるのに。
イライラが募っていく日々を過ごしていた。
そんなある日、学院から帰ればミーナの姿が見当たらなかった。心配で家中を探していると、ミーナの部屋から話声が聞こえてきた。
「ふーん、もしかして、ダンにぃに恋しちゃった!?」
「セシルっ!」
「えっ、本当に?
ダンにぃって、何処にでもいる顔だし、何か特筆する事も無いと思うけど…。
うーん、ダンにぃの好きな人は聞いた事がないな。
今度聞いてみるね。」
えっ!?どういう事?
あいつの事をミーナが好きだって!?そんなの許せる訳がないじゃないか。
感情が昂り、色んな事が頭から飛んで行動していた。
=バン=
「どう言う事かな、ミーナ?」
その後は、ミーナの逆鱗に触れてしまい、ミーナから部屋を追い出された。
言われてみれば、怒って当たり前だった。
ミーナは色んな事を我慢している。
僕にとっては当たり前な事でも、ミーナにとっては当たり前ではないという事に、今まで思い至って無かった。
だって、それが当たり前だったから。
ミーナの生活を僕が受け入れられるのかと問われれば否だろう。
自由を享受しているのに、今更それを奪われるのは我慢ならない。
母上が倒れた時に、初めて他人との交流を持って自由を知ったのか、それとも、僕等が何気なくしている毎日の会話から憧れていたのか。
いや、両方なんだろう。だからこそ、心の中の自由を奪おうとする僕に怒ったのだろう。
これからミーナと何を話せば良いのか分からない。どうしたら良いのだろう。
僕はただミーナを大切にして守りたかったのに。
夕飯の支度が出来る頃に、ダイニングに降りていくと、ミーナの姿が無く、代わりに父上が既に帰宅されていた。
「ロイ、ミーナと何があった?」
どうやら、昼間の件を既に父上は知っている様だ。
エマが父上に知らせを出したのだろう。彼女はミーナをとても可愛がっているのだから。
僕は昼間の事を簡潔に、包み隠さず父上に話した。
既にダイニングにいた兄上も当然聞いていたが、2人して同じ様に眉間に皺を寄せていた。
「ロイ、お前は今までミーナの置かれている状況は把握していても、ミーナ自身の考えを何も考えていなかったのだな。
今回の事で、身に染みただろう。
自身の考えを相手に押し付けるのは、愚かな事だ。
理解が出来たのなら、次からは考えてから行動を起こせ。
…魔法を行使する時も、相手の考えを考えれば自ずと強くもなれる。」
「はい、父上。」
「ロイは魔法の才はあっても、猪突猛進だから攻撃がわかりやすいからな。
それより、ミーナがダンに惚れているのか。あいつの良さが分かるのは流石だが、何となく腹が立つな。」
兄上もやはり、ミーナがダンに惚れているのは嫌なんだな。
兄上の為にも、明日はあいつに攻撃してやろう。…今までのイライラの分も含めてだけどな。
ミーナが降りてきて夕飯になったが、ミーナと話す事は出来なかった。どうすれば許してくれるのだろうか。
話したくても、それが分からずにアーとかウーしか出てこず、ミーナには無視をされてしまった。
そんなっ!!
翌日の学院では幾度となくダンに攻撃を仕掛けた。
「ダン・フォスキー、許さないぞ!」
「何だってんだよ、今日は!
手合わせでは、シルバが何時も以上にえげつない攻撃してくれば、ロイは所構わず魔法を打ち込んでくるしっ。」
僕の放った攻撃を綺麗に切り裂き、無傷とか何様だよ。
くそっ、やっぱりお前はムカつくんだよ!
それからはほぼ毎日、暇があればダンに攻撃をして、父上が言っていた相手の考えを考えると言うことが理解出来て、かなり戦闘が上達した。
お読み頂きありがとうございます。
ロイは現在11歳(誕生日がくれば12歳)の子供です。考え方はまだまだお子様なので、生暖かい目線でお読み頂ければと思います。
独占欲が強くて、猪突猛進。自分の大切なモノを奪われたくなくての行動です。
不快に思われた方には申し訳ありません。
次回は本編に戻ります。
本日13時に更新します。




