➖閑話 〜シルバ・ヴァグナークの兄心〜➖
本日2話目です。
流行病により学院が休講してから、1週間程がたった。
今日はルーカス伯父上に呼ばれていて、ロイと一緒に屋敷に向かった。どうやら、ミーナの事で話があるらしく、流行病が蔓延してから帰って来れなかった父上も時間を作り途中でやって来るそうだ。
屋敷に着き、サロンに通されお茶を飲んでいたが、従弟のアルノーに剣の手合わせをしたいと言われたので庭の訓練スペースで手合わせをしたが、余りにも弱くて驚いた。
近くで見ていた伯父上とカール兄上は苦笑いをし、ロイはポカンとしていた。
「アルノー、本気出してるのか?」
「これでも本気出してるんだけど…シルバ兄さんが強過ぎるんだよ。」
「…ミーナとやっても、瞬殺されるんじゃないかな。
騎士になる事はお勧め出来ないな。」
「…えっ!?」
「まぁ、アルノーは剣の才能が無いからね。今度ミーナに手合わせしてもらったらどうだろう?」
「そうですね。もしミーナに負けたら騎士になるのを諦めて、文官になりなさい。」
「父上まで…4歳も下の女の子に負けるはずが無いじゃないですか。」
「「「「………。」」」」
どうやらアルノーは、自分の剣の腕前がわかっていない様だ。
そうこうしている内に、父上が到着したようで、応接室へ移動する事になった。
「今日集まって貰ったのは、ミーナの今後について、共通の認識をしておこうと思っていてね。
ミーナの魔力系統と魔力と容姿の関係性などを解明しなければ、学院に通えないのは知ってるね?
それを解明できる、つまり、それだけプランツェ王国の魔法研究が進んでいると各国に知らしめる為に、ミーナを国家機密扱いで、鳥の籠の中の鳥にせざるを得ないからなんだけどね。
要は、未知の魔法研究をする為に他国に奪われない様にする為だね。
…まぁ陛下達のミーナの安全・安心な生活を守る為の方便ともいえるね。
取り敢えずそれは置いておいて、学院に通えなければ、将来、結婚も仕事に就くのも難しくなります。この家の直系の令嬢でもあるミーナを、この家の侍女にする訳にはいかないし、他の家に行かせる事も出来ませんから、ミーナの将来に不安が残ります。
そこで、一族経営の商会を作り、そこの副会頭になって貰おうと思っているんですよ。
どうでしょう?」
「会頭は誰がなる?」
「カールに任せようと思うよ。カールもそれでいいね?
商会を任せるに当たっての勉強もここ何年かさせてたから、問題も無いでしょう。」
「カールであれば、私に依存はない。」
「叔父上、シルバで無くていいのですか?
私自身は依存ありませんが。」
「シュテルネン伯爵家の嫡子が会頭であれば、将来的にも横槍を入れられにくいからな。」
私では後楯になれないからな。
本当だったら、私自身がミーナを守ってやりたい。その為にも強い騎士になろうと思っているのに。現実は、身分がものを言うからな。
それでもプランツェ王国は、貴族と平民の垣根は低い。只、他国の事を考えるとどうしても、貴族の身分の者が表だって守らないと、守り切れないだろう。伯父上の家では、他国に対して圧力が足りない気もするが。
「伯父上、商品は何にされるのですか?
それによっては、商会の収益が違ってくると思いますが。」
ロイが伯父上に質問している。私も気になっていたが、おそらくドライフルーツだろう。
甘味は、貴族や裕福な商人にとって、茶会や夜会で多く出せればステータスになるからな。
「幾つか考えてますよ。
1つ目は、ミーナがデザインする洋服や帽子・バック・靴などの服飾関係。
2つ目は、ブランド化させて販売するぬいぐるみとそれに付随させる洋服などの小物類。
この小物類はミーナがデザインする洋服類のぬいぐるみ版で、持ち主とぬいぐるみがお揃いの洋服を着ることを可能にします。
3つ目は、ドライフルーツ。
4つ目は、マーガレットが作るアクセサリー。
主商品は1つ目と2つ目になり、4つ目は限定商品にして、3つ目はお得意様限定の商品にします。
あぁ、因みに陛下と宰相、各大臣にはお得意様になって貰って、商会を守って貰う手筈になっていますよ。」
伯父上、一体どの様な手を使ったのですか?
皆の顔を見ると、否定の色は無い様だ。と言うより、決定事項の説明の会になってるな。
話がひと段落した所で、ノックされる音がした。
カール兄上が応対していると、険しい雰囲気になり伯父上に手紙を差し出している。
「父上、ミーナからの手紙だそうです。門番のベルノルトの話によると、少年が届けに来たそうです。」
少年って誰だ!?
皆の雰囲気が一気に険しくなり、伯父上の手にある手紙に視線が集中する。
手紙を読んでいた伯父上の表情は、眉間に皺がより、険しい表情のまま父上に手紙を渡した。
父上も手紙を読み、目を見開いて固まり母上の名前を呟いている。
母上に何かあったのか?
「父上、ベルノルトにはその手紙を持ってきた少年を応接室に連れて来るように伝えています。
父上は、そちらへ移動お願いします。
叔父上、手紙には何と書かれていたのでしょうか?」
「…マーガレットが高熱で倒れたと。ミーナが医師か薬師を手配する為に街に出て、手配が付いた時にこの手紙を兄上に届けてもらうように依頼したと。」
「「「「っ!!?まさか流行病に?」」」」
「兄上が少年から話が聞け次第、家に向かうぞ。
シルバ、ロイ支度を。カールとアルノーは兄上の指示に。」
私は、母上が倒れて不安になっているだろうミーナを1人家に残してきてしまったのか。
伯父上からの招待であろうと、何と不甲斐ない事か。
手紙を届けてくれた少年は、私の学院での友人の1人であるダンが届けてくれた様だ。
ダンには、この事の礼と私の口からも再度口止めをしなければ。
あぁ、ダンがミーナに惚れてなければいいが。
家に着けば、ミーナと母上の姿が見当たらない。
2階のベッドで寝ているのだろうか?
父上達と階段に差し掛かった所で、ミーナと小柄で清潔な感じの女性が降りてきた。
女性が母上を診察してくれた方の様だ。
父上と伯父上がその女性が応接室で話をしている。
私達は、リビングにてエマの淹れてくれたお茶を飲みながら、父上達を待つが、ミーナに掛ける言葉が見つからない。
本当に不甲斐なさすぎる。私はもっと頼れる兄になろう。
その後、父上から母上の容体が話された。
私には騎士になり強くなる以外に何が出来るだろうか。
取り敢えず、ダンを締めに行こう。
お読み頂きありがとうございます。
次回は本編に戻りますが、投稿は明日の7:00の予定になります。
昨日の時点では、本日投稿と予告させて頂いていましたが、執筆時間が取れず書けなかったので明日に延期させて頂きます。
申し訳ありません。




