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32 シーラ、やはりお前もだったのか……

前書き



 ……完全にBL腐向け小説じゃないですか。

 ヤダ~



(てことで、今までにない『腐向け警報発令』です)

 クルトが王都の城壁に大穴を作った日から数日後。


 新たな剣を手に入れることができたのはクルトのおかげだったので、コウは城壁の弁済の為に、有り金全てを失ったことは許した。

 実際、有り金全部出しても手に入れることができないほどの剣を、手に入れられたのだ。



 とはいえ、おかげで資金がカツカツだ。

 そのような状況のため、コウはギルドの依頼リストと睨めっこしていた。

 報酬は問わないから、手早くこなせる依頼はないだろうか。今月どころか、明日の生活費も危険な状態だ。

 ヤクモを頼るという手もあるが、残念なことに従兄弟は未だに店を留守にしたままだった。

 このままだと、もしかしてまたドブサライに戻るのか?

 過去の悪夢が脳裏をかすめるコウ。依頼リストを見る目が、真剣なものとならざるを得なかった。

 とはいえ、報酬を気にしなくても、今日中にこなせるような都合のいい依頼がない。




「頼む、頼むから、これ以上俺に関わらないでくれ!嫌だ嫌だ嫌だー」

 そんなところで声がした。

 一体何ごとかとコウだけでなく、ギルドにいた全員の視界がそちらに向かう。


 ガタガタと全身を震わせて、身を縮めている男が1人。

「ごめんねー」

 と謝っているのはクルトだ。


「またか」

「ミンチメーカーに関わっちまっうとな……」

「あいつギルドに来たばかりなんだとさ」

 周囲でそんな声がした。


 体格のいい男だったが、目の前にいるクルトに怯えている。

「こんなところ、二度と来るか!」

 最後に叫んで、男はギルドの中から、逃げ出すように出て行った。



「また前衛してくれる人を探さないとね、シーラ」

「そうですね、先生」

 そう言い、2人の魔法使いはギルドの中に視線を向ける。


 だが皆ミンチメーカーとあだ名されるクルトの怖さを知っている。実力はこのギルドの中でおそらく随一だが、腕前がどうのと言う以前に、あの戦い方は完全な悪夢でしかない。

 皆、クルトの方から一斉に視線を逸らした。



「ねえねえ、バーンズさん」

「これから次の依頼でな」

 クルトに呼びかけられた男が、いそいそと席を立ちあがってしまう。


 仕方がないと、クルトは別の男に視線を向ける。

「は、腹の具合が……」

 そう言い、トイレへ走り出す男。



「マスター、ギルドに新しく来た人っていないかなー?」

「……お前らのせいで新人ギルド員が何十人いなくなったと思ってる?」

 犠牲に供された人数は、10人をとっくに超えてるようだ。


「ブーブー」

 クルトは不満そうにする。

 だがそんなクルトに、マスターは取り合おうとすらしない。


「ちぇっ」

 仕方ないとクルトはその辺りの開いてる席に座って、ドリンクを注文した。シーラも隣の席に座って、飲み物を頼む。



 ――この時、コウは血迷っていたのだろうか?

 あるいは前世のシリウスが、魔物に対して激しい復讐心を抱きながらも、それでも勇者と呼ばれた人間だった。それ故に、人を守ろうとする正義感が人一倍強かったのかもしれない。


 コウは、クルトとシーラの席へと歩いていく。

「なあ、クルト、シーラ」


「なーに、コウ?」

 と、クルト。

 シーラは無言だが、視線をコウに向ける。


「もしよければ、パーティーに正式に加えてくれよ」



 コウの決意。

 これ以上、この2人のせいでギルドの中から被害者を出してはならないという思いがあった。

 戦闘力ではこの2人は間違いなく最強のペアだろうが、味方への精神的なダメージの与え方も桁違いである。

 このままではギルドの中から、この2人以外には誰もいなくなってしまう。



 コウからの思いもしない提案に、クルトはシーラの顔を見た。

 シーラもクルトの顔を、思わず見てしまう。

 今まで自分たちのパーティーに進んで入りたいなんて言ってきた人間はあまりいない。

 クルトとシーラの2人は、常に高難易度で高額な報酬が約束された依頼を受けているから、それに釣られて自分から同行を申し出た人間が、過去に何度かいた。

 だが、一度戦闘を経験しただけで、全ていなくなってしまった。


「い、いいの!?

 僕たちのパーティーに入りたいなんて言ってくれたの、コウが初めてだけど」

 顔に驚きを浮かべているクルト。


「2人には武器の借りがあるし、それにこれ以上新人のギルド員を減らされても困るから」

「アハハ、ボクも悪気はないんだけどね~」

「先生、悪気があってやってたら、今頃このギルドからすべての人がいなくなってますよ」

 やっぱり2人、いろんな意味で危険だと改めて思わされてしまうコウ。


 たった今抱いた自分の正義感に、少し後悔しそうになるコウ。

 だが、引き下がるわけにはいかない。


「パーティーに加わってくれるなんて、嬉しいな~。これからもよろしくね、コウ」

「よろしくお願いします、コウさん」

 クルトはニコニコ笑う。シーラも口を微かに笑わせている。2人とも嬉しいのだ。

「2人とも、これからよろしく」

 と、コウも請け負った。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 しかし、クルトたちのパーティーに正式に加わったが、金欠問題が存在するコウ。


「うーん、手っ取り早く稼げる依頼ね~」

 コウの金欠問題の原因を作り出したのは、そもそもクルトである。

 コウの財政危機を聞いて、依頼のリストをジーと眺めている。


 その間シーラは、マスターのところに行って何か話していた。



「とっておきの依頼を取ってきました」

 そして、シーラはひとつの依頼を手に、2人のところに戻ってきた。


 依頼の内容は、討伐専門ギルドのはずなのに、なぜか討伐依頼でない。しかも1時間もあればできるという、すごく簡単なもの。

 おまけに内容の割りに、報酬がかなりいい。


 あまりにも破格の依頼であるため、3人はマスターのところに行った。

「マスター、この依頼どうしたんです?」

「これか。依頼人がやたら羽振りのいい人なんだが、旨みがあるからいつもすぐに取られる依頼でな」

「受けます!」

 マスターの言葉を聞いて、金欠になっていたコウは即決した。


 コウには金欠もあったが、この依頼の報酬なら、ヤクモを外食に誘えるだろうと考えた。

 ヤクモは最近忙しくしていて、ろくなものを食べてないようだ。今も店を留守にしているので、店に戻ってきたときに、外食に連れて行こうと考えた。



 しかし、その背後。コウに見えない場所で、クルトとシーラが互いに視線を交わした。

 ――先生、よろしくお願いします。

 ――まっかせといて~

 お互いに言葉は不要。ただ、視線だけで会話を交わし合った。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 依頼の内容は超簡単。

 コウとクルト、シーラの3人は、マスターに連れられて、ギルドの奥にある部屋に案内された。


 だが部屋に入ると共に、シーラの魔法が突如発動。

 コウの両手と両足が拘束されて、動くことができなくなってしまった。

「シーラさん!」

 突然の出来事に驚くコウ。


 ――ガチャリッ

 背後で、マスターが部屋の外からドアに鍵をかけてしまった。

 室内は完全な密室。出入り口のドア以外は全て石造りの壁に囲まれていて、窓すらない。


 マスターはすでに室外にいて、部屋の中にはコウ、シーラ、そしてクルトの3人だけだった。


「危険はないから大丈夫だよ。依頼の内容は超簡単で、このソーセージを食べるだけ」

 部屋の中に置かれていた机。そこにある皿の上に、1本の太くて長いソーセージが棒に突き刺されている。

 その棒を、クルトが持ち上げる。


 太さは5センチほど。長さは20センチ近くある。

 海港都市ディールでは、ソーセージが町の特産品になっているが、ソーセージと言うよりは、フランクフルトと言っていい大きさ。


 クルトはそんなビックソーセージに、白いヨーグルトソースをドバドハと惜しみもなくかけ、さらに香辛料をたっぷりつける。

 ヨーグルトソースは意外に粘着性があって、ビックソーセージにネトネトとへばりつく。しかしやたらとかけまくったものだから、一部が床へと垂れくる。


 コウは、本能的な危機を感じた。

 ――この依頼は何かがおかしい。危険すぎる。

 このままではまずいと思い、逃げ出そうとする。

 しかし、シーラの魔法による拘束のせいで、両手両足が自由にならない。慌てたせいもあって、バランスを崩して床の上に倒れてしまった。


「はい、アーンして」

「ムガッ」

 床に倒れたコウの口に、クルトが容赦なくビックソーセージ突っ込んだ。


 ――い、嫌だ。

 こんな依頼、嫌すぎる。


 この場から逃げ出したいコウ。

 しかし、自由を奪われている上に、口にはとてつもない大きさのソーセージを押し込まれ、しゃべることすらできない。

 おまけにソーセージに塗りたくられた香辛料がやたらに辛く、口の中がヒリヒリする。

触れたわけでもないのに、あまりにも加減のない辛さのせいで、目に染みる。


 うっすらと、目に涙がたまってきた。


 だが、抵抗できないコウを相手に、クルトはサーセージを突き刺した棒を右へ左へと動かして回る。

 口の中でソーセージがモコモコと動き回り、舌の上を転がりまわる。

 ソーセージに必要以上にまとわりつくヨーグルトソースの白い液体は、ピチャピチャ、ネトネトと音を立てて辺りに飛んだ。


 白い液体が床にベタベタ飛び散り、一部はコウの服に付着して、ジワリと濡らす。中には顔に飛んできたものもある。あまりに辛い香辛料とセットになっているせいで、触れただけで、その場所が熱くなるほどだ。

「うぐぐっ、あうっ、あっ」

 巨大なソーセージが口の中に突っ込まれているせいで、口を開けることもできない。

 漏れ出す声は、声とならずに、まるで喘ぎ声のよう。


 おまけに、白い液体と混じり合ってしまった香辛料のせいで、それに触れた肌からヒリヒリと焼ける感覚が伝わる。



「そーれそーれ」

 しかしクルトはコウの苦悶など、まるで意に返さない。穢れなき無邪気な笑顔を浮かべ、棒を上へと動かす。


 ――ビチャッ 


「うあっ!」


 ソーセージについた白い液体が思い切り飛び散り、それがコウの右目に命中した。

 右目に激痛が走る。

 あまりの痛さに、コウは右目を閉じざるをえない。


 それだけでなく、白い液体はさっきからかなり飛び散りすぎて、顔のあちこちが濡れてしまった。


「はうっ、ううんっ」


 あまりにもひどい。

 口の中の激辛。ヒリヒリする肌。右目は激痛のせいで開けることすら叶わない。

 口に突っ込まれたサーセージのせいで、呼吸も満足にできなくなる。苦しさから、息が荒くなってしまう。



 こうなってしまっては、もはやこの滅茶苦茶な依頼を早急に片づけるしかない。


 コウは覚悟した。

 口の中に押し込まれていた太いソーセージをかみ切る。


「おー、すごいすごい」

 関心の声を上げるクルト。


 だが、ソーセージをかみ砕き、喉の奥へと流し込んだ途端、香辛料の激辛がコウの喉を焼く。


「ゲホ、ゲホ、ゴホッ」

 むせ返り、言葉が出てこない。


「気を付けてねー。すごく辛いから、一気に食べると危ないよ~」


「あ、危ないとか・・・・・フグッ」


 コウの抗議を無視。クルトは棒をいじって、再び口の中にソーセージを突っ込む。


「ほーら、おいしいでしょー。ボク、ソーセージ大好きなんだー」

「うぐ、んぐぐっ」

 コウが何か叫んでいるようだが、聞こえない。


 口の中でまだ飲み込みきれてない肉の欠片もあり、コウは頬を大きく膨らませている。


「ワー、コウの顔がすごいよ~」

 シーラの方を純粋無垢、穢れなど一切感じさせない少年の笑顔で見るクルト。


 コウの顔には、激辛香辛料のせいで汗がジワリと噴出していている。おまけに香辛料の辛さを通り越した、燃えるような熱さのせいで、体中が火照って肌が赤くなっていた。


 息遣いも荒く、白い液体のせいで右目は閉じている。


 そんな弱り切っているコウの姿を、シーラは感情のない顔で見ている。


「先生、続きをどうぞ」

「はーい」


 ――ちょっ、お願いだからやめさせて!


 抗議したいコウ。


「あううっ」


 だが、クルトが棒を「えいえい」と押し込んできたせいで、だらしのない声が出てしまう。

 おまけにクルトは棒をうまく操って、ソーセージを口から出し入れする。


 口の端から、チュパッ、ポチョッと音が漏れた。




 その後も、ひどいものだった。


「ほーら、こっちだよー。やっぱりこっちー」

 早くソーセージを食べ終わらないと、この地獄から解放されない。

 コウはやけくそになっていた。


 だが、そんなコウの焦りを知っていてか、残り少なくなったソーセージを右へ左へ振って、コウが噛みつけないようにするクルト。


「い、いい加減にしろ!」

 弄ばれてしまっているコウが叫ぶ。

「えへへ~」

 いつものように、見た目だけ可愛らしい声を出すクルト。


 ――鬼だ。鬼畜だ。悪魔だ!


「あっ、噛まれちゃった」

 残り僅かなソーセージをコウの前で右に左に振るって遊んでいたら、とうとう食いつかれてしまった。


 その後、コウはなんとかサーセージを完食し、この地獄の依頼を終わらせることができた。


「フーフー、ハーハー」

 激辛のせいで全身汗だく。息も荒い。

 というか、あまりの辛さのせいで、頭がクラクラしてしまう。


「お疲れ様です」

 完食したことでシーラによって施されていた魔法の拘束は解除されたが、コウは頭がふらついて、しばらく立ち上がれる気がしない。



 ――ガチャッ

 そんな中、部屋のドアの鍵が開かれる音がした。

 外にいたマスターが、ドアの隙間から顔を出す

「シーラ」

 呼ばれてシーラは、部屋の外に1人で出て行った。そして、再び閉じられるドア。




 コウとクルトの視界から隔離されたドアの向こうで、シーラは鼻に手を当てた。

 ――ポタッ、ポタタ

(いけない。興奮しちゃって……(えき)が)

 マスターが無言でハンカチを差し出してきたので、シーラは受け取って鼻から出てくる赤い液体を拭った。


「マスター、ありがとうございます。約束の報酬です」

 小さな金色の棒が10本以上。小さいと言っても、金貨にすれば10枚はくだらない、純金の棒だった。

「確かに受け取った」

 それだけ言って、マスターはこの場を後にする。



「フフッ。それにしても先生、相変わらず最高のショーでした。ただのソーセージで、あそこまでできるなんて。私、どこまでもついていきます!」

 シーラはぎゅっと拳を握り、普段の落ち着いた様子と違って頬を赤く染めていた。



 ――男同士って最高!




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 この依頼の後、コウは香辛料のせいでか、しばらく涙が止まらなくなってしまった。

 涙が目から零れ落ちる中、報酬の小さな金の棒が、シーラから差し出される。

「コウさん、お疲れ様でした」

「……もう嫌だ。おいしい話なんで、2度と乗らない……」

 流れている涙は、果たして香辛料のせいだけだろうか?

 コウの涙には、もろもろの感情が詰まりまくっていた。



「先生もお疲れ様です」

「えへへ~。楽しかった~」

 こちらもシーラの手から報酬の金の棒が1本手渡される。



 ただコウに一つ分かったことがあった。

 クルトはショタの姿をした、鬼畜ドSだ。


あとがき



 さあ、本編の読後感とか、いろんなものをぶち壊す時間を始めましょう(そう言うのが嫌な人は、あとがきを読まずにスルーすることを強く推奨します)。




 最近まともだったんですけどね……このままいけば、普通のファンタジーになりそうだったんですけどね……テヘッ~

(作者の頭の故障ぶりは、相変わらずです~)



 ええ、完全にBL腐向けですよ。

 やましい物(物質)は、何一つ使用していませんがね~



 今回の話は、実は第2章を書き終えた後に執筆した内容でした。

 その時はクルトがキャラとしてきちんと固まっていなかったので、この子にギルドマスターさせるかな~とか考えていました。

 なのでその時に執筆したものでは、クルトはマスターになっていました。

 ただ、その後3章を実際に執筆していく段階で、ギルド員の1人ということで落ち着きました。



 とはいえ、もう書いちゃったものがあるわけだから、手直しを加えて腐向け小説をなんとか突っ込んでおかないとね~

 てなわけで、わざわざ2度手間をやらかしてまで、今回の話を入れちゃいました~

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