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外れスキル『コンビニ』で、異世界の狂った生態系を無双する 〜ヤラセ配信で村を荒らす勇者は、日用品トラップで大炎上させます〜  作者: 月神世一


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EP 8

「最弱の店員は膝を折らない 〜殴られた分の請求書は、必ず回収する〜」

「そのふざけたシナリオ……俺が全部、ぶっ壊してやる」

俺の宣戦布告を聞いた勇者ゼロスは、路傍のゴミでも見るような目で鼻で笑った。

「おい。その口の減らないモヤシに、少しばかり現実を教えてやれ」

ゼロスが指を鳴らすと、護衛の黒鎧の騎士の一人が無言で進み出た。

俺は構えようとしたが、相手の速度は常軌を逸していた。

『ガッ……!!』

みぞおちに、鋼鉄のブーツが深々とめり込む。

「カハッ……!?」

呼吸が完全に止まり、俺の体はくの字に折れ曲がって宙を舞い、泥まみれの畑に無様に叩きつけられた。

(速い……ッ、重い……!)

【マネー】の力で異常なステータスを付与された騎士の蹴りだ。ただのコンビニ店員である俺が、物理で勝てる道理なんて一つもなかった。

「陸人ッ!!」

防壁の陰からキャルルが飛び出そうとするが、アラトがその腕を強く掴んで引き止める。

「離して! あいつが殺される!」

「待て。今お前が出ても、あの装備の差じゃ犬死にするだけだ。……それに、あいつの目をよく見ろ」

アラトの静かな声が響く中、黒鎧の騎士はゆっくりと歩み寄り、俺の腹をさらに蹴り上げた。

泥水をすすり、口から生暖かい血の味が広がる。

全身の骨が軋み、本能が「服従しろ」「命乞いをしろ」と警鐘を鳴らす。怖い。死ぬほど怖い。

「大人しく逃げ出せばいいものを。英雄の邪魔をするからこうなる」

騎士は俺を見下し、その足で、農家のおっさんが手塩にかけて育てた『太陽芋』の苗を踏み躙ろうとブーツを高く振り上げた。

(——ふざ、けるな)

自分の命を見世物にされ、村の苦労を泥靴で踏みにじられる。

俺は痛みに震える体を無理やり動かし、地を這って、振り下ろされるブーツと苗の間に自分の体をねじ込んだ。

『ドゴッ!』

「ぐあぁッ……!!」

俺の背中を、容赦ない蹴りが踏み砕く。

だが、俺は地面の苗を両腕でしっかりと庇い、絶対にどかなかった。

「……退けよ、ゴミが」

「……退かねぇよ。ここは、俺の店(村)の敷地だ。お前らみたいな悪質クレーマーに、これ以上……好き勝手はさせない」

恐怖で歯の根が合わない。全身がガタガタと震えている。

それでも、俺は絶対に膝を折らず、彼らから目を逸らさなかった。

「死に損ないが。その両腕ごと、すり潰してやる」

騎士が剣を抜き、殺意を込めて振りかぶった、その瞬間。

「……いってぇな。殴られた回数と、踏み躙った苗の数」

俺は、這いつくばりながらも、騎士のブーツを両手でガシリと強く掴んだ。

「……今の全部、レジ(算盤)に打ち込んだぞ。請求書は、利子をつけてまとめて払ってもらうからな」

負け惜しみにしか聞こえない、静かな一言。

それを聞いたゼロスは「チッ」とつまらなそうに舌打ちをした。

「興が醒めた。相手にするな。どうせもうすぐ、本命の魔物が村を食い破る。行くぞ」

ゼロスの命令に、騎士は俺の背中をもう一度蹴り飛ばし、踵を返して森の奥へと消えていった。

「ゲホッ、ゴホッ……あーあ、全身泥だらけだ……」

俺が大の字になって荒い息を吐いていると、キャルルが血相を変えて駆け寄ってきた。

「陸人! しっかりして! 今すぐ治すから!」

泣きそうな顔で『月光薬』を錬成しようとするキャルルを、「怪我は浅いから大丈夫だ」と手で制する。

その横で、アラトがゆっくりと歩み寄り、俺が倒れていた畑の地面を冷ややかな目で見下ろした。

「……おい、バイトリーダー。お前、ただ殴られてただけじゃねぇな?」

アラトの視線の先。

俺が先ほど、騎士のブーツを掴んだ時のことだ。俺の手の中には、【コンビニショップ】で具現化した『超強力両面ガムテープ』が握られていた。

俺は殴られ、泥にまみれながらも、相手のブーツの裏にその粘着テープをべったりと貼り付けていたのだ。

「あぁ。あいつら、重たい鎧を着てるから小回りが利かない。おまけに足の裏に強力な粘着テープを貼られりゃ……後で俺の『油トラップ』を踏んだ時、絶対にリカバリーできずにすっ転ぶ」

俺がニヤリと笑うと、アラトは呆れたように天を仰いだ。

「……圧倒的な戦力差でボコボコにされながら、反撃の布石を打ってたってのか。自分の命を懸けて」

「言ったろ。俺はシフトを回すのが得意なんだ。店員が殴られている間に、裏で罠を仕掛けるくらい、どうってことない」

アラトは懐からミント味の飴玉を取り出し、口の中に放り込んだ。

『ガリッ!!』

静かな畑に、飴玉を噛み砕く鋭い音が響いた。

それは、アラトが冷酷な打算を捨てて、俺の狂気に全額ベットした『本気のサイン』だった。

「……ハッ。狂ってやがる。本当に、計算が合わねぇバカだ」

アラトは背負っていた弓を下ろし、俺に向かって右手を差し出した。

「お前のその狂った算盤(シフト)……俺も乗ったぜ、相棒」

俺はその手を取り、痛みで顔をしかめながらも力強く立ち上がった。

『ズズズズズズズ……ッ!!』

直後、森の奥から地鳴りのような咆哮が響き渡り、空が異様な暗雲に覆われ始めた。

ゼロスが引き連れてきた『ヤラセ配信』の本番。魔物の大群の襲撃が始まったのだ。

読んでいただきありがとうございます。

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