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外れスキル『コンビニ』で、異世界の狂った生態系を無双する 〜ヤラセ配信で村を荒らす勇者は、日用品トラップで大炎上させます〜  作者: 月神世一


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EP 4

「元社畜SEの弓使いは、コンビニ店員を鼻で笑う」

床板を鋭く抉る、硬質な木の音。

俺の足元すれすれに突き刺さった一本の矢が、ブルブルと震えていた。

「ハッ。お前みたいな甘ったれたバカが、一番最初に死ぬんだよ」

窓枠に腰をかけ、氷のように冷たい目でこちらを見下ろしている男がいた。

黒い髪に、動きやすい革鎧。背中には年季の入った弓を背負い、腰には不釣り合いなほど大きな魔法ポーチをぶら下げている。

「なッ……何者よ! どこから入ってきたの!」

キャルルが一瞬で俺の前に立ち塞がり、腰に帯びていたダブルトンファーを構えた。

彼女の足が、床を蹴り砕く寸前の筋肉のバネを見せる。

「落ち着けよ、ウサギの姉ちゃん。俺は通りすがりの冒険者だ。ただ、あまりにも胸糞の悪い『ブラック案件』の匂いがしたんでな、つい口を挟んじまった」

男は両手を軽く上げて見せたが、その瞳には明確な嘲笑が浮かんでいた。

彼はひらりと窓枠から部屋の中に降り立つと、俺の顔を真っ直ぐに指差した。

「おい、そこのフリーター。お前、さっき『時給0円のシフトに入る』とか言ってたな?」

「……盗み聞きかよ。趣味が悪いな」

「聞こえちまったんだよ。いいか、ここは最前線だ。大国の軍隊がドンパチやって、魔物がうろつく死地だぞ。お前みたいに腕力も魔力もないモヤシが、綺麗事で生き残れるほど甘い世界じゃねえ」

男の言葉は冷酷だが、的を射ていた。

確かに俺は、昨日のバカでかいカマキリ(ネクロマンティス)相手に腰を抜かした。たまたま100円のアイテムが上手くハマっただけで、一歩間違えれば確実に死んでいた。

「お前みたいな『気合いと善意だけでなんとかなる』って思ってるバカが、一番周りに迷惑をかけるんだよ。……昔、俺に無理難題のデスマーチを押し付けてきたクソ上司そっくりで、反吐が出る」

男の言葉の端々に、妙な単語が混じっていることに俺は気づいた。

「……デスマーチ? ブラック案件?」

「あぁ、そうだ。俺も日本からの転生者だからな。元・下請けIT企業の社畜SEだ」

男は呆れたように肩をすくめた。

まさかの同郷。しかも、俺と同じように過労で死んだような匂いがプンプンする。

「俺の名はアラト・バレンタイン。転生先は伯爵家の三男坊だったが、家督争いに巻き込まれて追い出された。今はしがない弓使いの冒険者だ」

「俺は秋月陸人。元コンビニのアルバイトリーダーだ」

「……アルバイトリーダーが、何の勝算があって戦争の最前線に立つんだ? 彼女が過労死しそうだから? 笑わせるな。お前が死ねば、結局この姉ちゃんが悲しむだけだぞ」

アラトの言葉に、キャルルがピクッと肩を震わせた。

「そ、そんなことないわよ! こいつが死のうがどうなろうが、私には関係ないんだから!」

「嘘をつけ。お前、こいつを治すために自分の血を吐いたんだろ」

アラトの鋭い指摘に、キャルルは言葉を詰まらせた。

アラトは再び俺に向き直る。

「お前は弱すぎる。気合いだけじゃ、世界は救えない。自分の手の届く範囲すら守れずに死ぬのがオチだ。大人しく安全な街へ逃げろ」

「……逃げない」

俺は、アラトの冷たい視線を正面から見返した。

「俺は弱い。魔物を見たら足も震える。でも、この村の『シフト』には俺が必要だ。キャルルを一人でボロボロにさせるわけにはいかない」

「だから、それが綺麗事だって言ってんだよ!」

「綺麗事で結構だ! 勝算がないなら、これから作る! 俺の【コンビニショップ】の棚と頭を使って、絶対に死なない戦い方を見つけてやる!」

俺の言い返しに、アラトは目を細めた。

部屋に重い沈黙が落ちる。

(……あぁ、本当に嫌になる)

アラトは内心で深い溜息をついていた。

自分を犠牲にする無償の愛。そんなものは、損得勘定で動く世界では一番価値のないゴミだ。

だが、なぜだろう。目の前の底抜けにバカな善意を見ると、俺の中の『狂った算盤』が弾きたくてウズウズしてくる。

「……チッ。どいつもこいつも、計算が合わねぇバカばっかりだ」

アラトは懐から小さな『飴玉』を取り出すと、ポイッと口の中に放り込んだ。

ガリッ!!

静かな部屋に、飴玉を噛み砕く鋭い音が響いた。

「いいだろう、アルバイトリーダー。お前がその狂ったシフトを本当に回す気なら、俺が『PM(プロジェクトマネージャー)』をやってやる」

「……え?」

「お前のその腐った根性を、物理的に叩き直してやるって言ってんだよ。俺が師匠になって、お前に『腕力や魔力に頼らない戦い方』を叩き込んでやる」

アラトは背負っていた弓を手に取り、ニヤリと底意地の悪い笑みを浮かべた。

「ただし、俺の研修(しごき)は、元の職場のデスマーチよりキツいぞ。覚悟しておけ」

こうして、俺の異世界での本当の地獄が幕を開けた。

明日から始まるのは、剣の素振りでも魔法の詠唱でもない。

ただひたすらに、100円のアイテムと地形を利用した『異常な殺し合いの算段』だった。

読んでいただきありがとうございます。

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