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外れスキル『コンビニ』で、異世界の狂った生態系を無双する 〜ヤラセ配信で村を荒らす勇者は、日用品トラップで大炎上させます〜  作者: 月神世一


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EP 6

「ハゲたぬきのポンポコ節 〜魔物も踊る狂乱の宴会芸〜」

「突撃ィィィッ! 辺境の村ごと、あの光学兵器を叩き潰せ!!」

アバロン魔皇国の下級魔将軍が剣を振り下ろすと、黒甲冑の兵士たちが怒声と共に村の防壁へと殺到した。

だが、その殺伐とした空気を、PM(プロジェクトマネージャー)の冷酷な声が切り裂いた。

「よし、お前ら。特等席だ」

アラトが指を鳴らした瞬間、防壁に仕掛けられていた火炎放射魔導具が一斉に火柱を吹き上げた。

『ドォォォォォォォンッ!!』

「ぬおぉぉぉッ!? なんだこの熱気は!」

突撃の足を止められた魔族たちの頭上を、魔法反射パネルから放たれる極彩色のレーザーが狂ったように飛び交う。

俺の【コンビニショップ】から提供されたカラーフィルムが、アラトの魔法によって完全にクラブイベントの照明と化していた。

戦場は一瞬にして、極彩色の光と炎が乱舞するド派手なライブ会場へと変貌を遂げたのだ。

「い、いや、これはただの舞台照明だぞ! ビビってねぇで……」

俺が魔族たちにツッコミを入れかけた、その時だった。

「みんなー! 深夜のテンションで、アゲていくわよぉぉぉッ!!」

キャルルが特注の安全靴で地面を蹴り、広場のお立ち台へと飛び上がった。

彼女の目は、12時間耐久ドリンクバーと徹夜のせいで完全にガンギマリしている。

手には、昨夜から調合し続けていた大量の『月光薬』の小瓶が握られていた。

「ちょっと待てキャルル! お前、それ……」

「ほっとけないわ! 疲れ切った顔してる魔族の皆さんにも、強制回復(エナジーチャージ)のお裾分けよぉ!」

キャルルは狂ったような笑い声を上げながら、月光薬の小瓶を空高く放り投げ、自身のダブルトンファーで片っ端から粉砕した。

『パァァァァァァァンッ!!』

銀色に輝く月光薬の霧が、村の入り口一帯に降り注ぐ。

本来、重傷者を回復させるための秘薬。それを健康な(しかも臨戦態勢の)魔族たちが頭から浴びた結果——。

「……ふぉぉぉぉぉぉぉッ!?」

「な、なんだこの溢れ出る活力は! 徹夜で進軍してきた疲れが全部吹っ飛んだぞ!!」

「うおおおおッ! なんだかわからねぇが、血が騒ぐゥゥゥ!」

魔族たちの目が一斉に血走り、全身の筋肉が異様にパンプアップし始めた。

怪我がない状態での月光薬の過剰摂取による、強制的な『ハイテンション・バフ』である。

「バカ! 敵にバフかけてどうすんだよ村長!!」

「大丈夫よ陸人! 会場が温まったわ! さぁリーザちゃん、あなたの出番よ!」

キャルルの無責任なパスを受け、ステージの中央に突き出されたリーザは、ガクガクと膝を震わせていた。

目の前には、極彩色のレーザーの中で筋肉を膨張させ、興奮状態にある数百人の魔族たち。

「む、無理ですの……! あんな怖い顔した軍隊を前に、私の可愛いアイドルソングなんて……ッ!」

「歌え、リーザ!!」

アラトがPA卓(魔法制御陣)から怒鳴る。

「お前はファンから全てを奪うアイドルなんだろ! だったら、あの武装した客どもの視線も、思考も、全部お前の歌で奪い尽くしてみせろ!!」

「ひぃぃぃっ! や、やりますわ! やればいいんですのね!」

極度の緊張と恐怖、そしてアラトからのプレッシャー。

パニック状態に陥ったリーザの脳内で、人魚姫としての高貴な歌声のストックが完全に吹き飛んだ。

そして、彼女がルナミス帝国の極貧生活の中、商店街の宴会に乱入して小銭を稼いでいた時に身につけた『最強のサバイバル宴会芸』が、無意識に発動してしまった。

リーザは芋ジャージのポケットから、大切に磨き上げた『五円玉』を取り出すと、それを両方の鼻の穴にカポッ、カポッと捻り込んだ。

「……は?」

俺が呆然とする中、鼻に五円玉を詰めた美少女が、自らのぽんぽこりんに膨らんだお腹(先ほどのドリンクバーの飲み過ぎによるものだ)を、両手でペチペチと叩き始めた。

「……た、た、たぬきのお腹は、ポンポコポンポン……ッ!」

マイク代わりの魔導拡声器に、震える涙声が響き渡る。

リーザが歌い出したのは、絶対無敵のスパチャアイドルソングなどではない。

場末の宴会で酔っ払いのオッサンたちが大喜びする、伝説の宴会芸【ハゲたぬきのポンポコ節】だった。

「月よ〜月で〜頭は、ハーゲハゲでピーカピカ〜!」

『ブォォォォォォォォンッ!』

アラトの容赦ない演出が炸裂する。リーザの背後で火柱が上がり、レーザー照明が彼女の鼻の五円玉をキラキラと照らし出す。

「お、おい! お前ら、なんだこの舐めた歌は!」

魔将軍が剣を振り上げて怒鳴るが、彼の部下たちの様子がおかしい。

月光薬の強制ハイテンションバフで脳内物質がドバドバに出ている彼らの耳には、その間の抜けたリズムと滑稽な姿が、異常なまでの『エンターテインメント』として突き刺さっていたのだ。

「お尻はツールツル〜、ターマターマはマ〜ルマル〜! ……ソ、ソレ! ヨイヨイ!」

リーザが涙目で合いの手を入れた瞬間。

「「「ヨイヨイッ!!」」」

なんと、最前列の魔族兵士たちが、剣を捨ててリーザと一緒に合いの手を叫び始めた。

「お、お前ら! 敵の前で何をやっている!」

「将軍! わかりません! なんだか楽しくて体が勝手に……! ソレ! ヨイヨイ!」

「は、は、葉っぱを乗せても、ドロンとドンドン……!」

リーザはもう止まらない。ヤケクソになって腹を叩く。

レーザーが乱舞し、火柱が上がり、極貧の人魚姫が鼻に五円玉を詰めて腹太鼓を打つ。

そのシュールすぎる光景と、異常なテンションの相乗効果により、魔族の軍隊は完全に戦意を喪失し、武器を捨てて一緒に踊り狂い始めてしまった。

「ア、ドッコイ!」

「「「ドッコイ!!」」」

防壁の外で、数百人の鎧の男たちが、芋ジャージの少女に合わせて一斉に腹を叩く地獄絵図。

「……なんだこれ。俺、72時間シフトの反動で夢でも見てるのか?」

「最高だぜ。俺の計算通り、完璧な『客席の一体感』が生まれやがった」

アラトがPA卓で不敵に笑うが、計算通りなわけがない。ただの事故だ。

「み〜んな合わせて、腹太鼓〜……ッ! ポンポコ、ピーヒャラ、テーンツルリン……ッ!」

リーザが最後のフレーズを歌い切り、ポーズを決める。

「「「ウオォォォォォォォォォォォォッ!!!」」」

魔族たちから、地響きのような大歓声と拍手が巻き起こった。

「最高だぜネーチャン!」

「俺たちもポンポコするぜぇぇぇッ!」

熱狂は頂点に達した。だが、それは最悪の事態の幕開けでもあった。

月光薬のバフと宴会芸の興奮で限界を超えた魔族たちが、暴走状態に陥り始めたのだ。

「もっと踊らせろォ!」「村に入って朝まで宴会だァァ!」

よだれを垂らし、目を血走らせた魔族たちが、理性を失って防壁に群がり始める。

「こんなの……私の思い描いてたアイドルじゃないですのぉぉぉー!」

鼻に五円玉を詰めたまま、ステージの上でワンワンと泣き崩れるリーザ。

それに合わせて、防壁の下でドンドコと腹鼓を打つ魔族の群れ。

戦場は、俺の常識人としてのツッコミが全く追いつかない、完全なるカオスへと突入していた。

読んでいただきありがとうございます。

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