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外れスキル『コンビニ』で、異世界の狂った生態系を無双する 〜ヤラセ配信で村を荒らす勇者は、日用品トラップで大炎上させます〜  作者: 月神世一


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15/25

EP 15

「帰る場所ができた夜 〜その宴の影で、新たな波乱が目を覚ます〜」

焦げた油の匂いと、村人たちの割れんばかりの歓声。

ポポロ村の広場には、異世界には似つかわしくない大量のジャンクフードが山積みになっていた。

「食え食え! 今夜のシフトは、店長(俺)の奢りで食べ放題だ!」

俺が声を張り上げると、村人たちがドッと沸いた。

広場の中央には、俺の【コンビニショップ】スキルで限界まで具現化させた『ホットスナックの唐揚げ』『フライドポテト』『缶ビール』の山ができている。

腹の底からごっそりとカロリー(体力)を持っていかれたが、今の俺には不思議と疲労感よりも充実感の方が勝っていた。

「ギャァァアアッ!」と走り回る人参マンドラを子供たちが追いかけ、三面記事を喋るネタキャベツをツマミにして、大人たちが宴会で大笑いしている。

「おい、店長。あんまり無理してスキルを使うなよ。過労で倒れられても、俺の計算(シフト)が狂う」

片手に缶ビールを持ったアラトが、呆れたように隣にやってきた。

ピンクのエプロンはすでに外し、いつもの冷めた顔に戻っているが、その口元は微かに緩んでいた。

「平気だよ。今日は特別だ。……それに、お前が【家庭科】スキルで唐揚げを最高の温度で二度揚げしてくれたおかげで、村の連中も大喜びだ」

「フン。元・伯爵家の三男坊にして社畜SEが、まさか唐揚げを揚げるPM(プロジェクトマネージャー)をやらされるとはな」

アラトは自嘲気味に笑い、俺の持つ缶ビールに自分の缶を軽くぶつけた。

「だが、悪くねぇプロジェクトだった。……お疲れさん、相棒」

「あぁ、お前もな」

炭酸の効いた冷たいビールが、乾いた喉を滑り落ちていく。

72時間のワンオペ明けに一人で飲んだ、あの味気ない缶ビールとは違う。泥にまみれ、命を懸けて守り抜いた後に飲む酒は、信じられないほど美味かった。

少し離れた場所では、村長のキャルルが村の子供たちに囲まれていた。

「ほら、走るから転ぶのよ。全く、手のかかる子たちね」

キャルルは文句を言いながらも、転んで膝を擦りむいた子供の前にしゃがみ込み、躊躇うことなく『陽薬草』を取り出した。

自分の体力を削る治癒魔法。どれだけ平和な宴の最中でも、彼女は目の前の怪我人を絶対に『ほっとけない』。

淡い光が子供の膝を包み、擦り傷が一瞬で消え去る。

「わぁっ! ありがとう、村長さん!」

「ふふん、怪我が治ったら、ちゃんと大根の収穫を手伝うのよ? さ、行ってよし!」

照れ隠しにツンとそっぽを向くキャルルを見て、俺は自然と頬を緩ませた。

自分の血を吐いてでも他人のために尽くす、最高に不器用で、最高に優しい俺たちの村長。

俺はあいつの負担を減らすために、あいつの背負うものを一緒に持つために、この村のシフトに入ったのだ。

「……何ニヤニヤしてるのよ、気持ち悪い」

子供たちをあしらったキャルルが、缶ジュースを片手にこちらへ歩いてきた。

「いや? ただ、良い村だなって思っただけだ。……改めて、俺をこの村に置いてくれてありがとうな、キャルル」

俺が真っ直ぐに礼を言うと、キャルルはピクッとウサギ耳を揺らし、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

「べ、別に! あんたのその変なスキルと、アラトの掃除の腕が少しは役に立ったから、特別に滞在を許可してあげてるだけなんだからね! 勘違いしないでよね!」

「はいはい、わかってるよ」

夜風が心地よく吹き抜け、村の笑い声が星空へと吸い込まれていく。

帰る場所なんて、どこにもなかった。

ただ消費されるだけの歯車だった俺に、守るべき店(村)ができ、背中を預けられる相棒ができ、放っておけない上司(村長)ができた。

——ここが、俺の新しい居場所だ。

俺はもう一度、冷えたビールを喉の奥へと流し込んだ。

     *

だが、平和な宴の光が届かない、ポポロ村から数キロ離れた深い森の中。

月明かりだけが頼りの獣道に、一つの影が静かに佇んでいた。

「……勇者ゼロスが、たかが辺境の村で敗北した、か」

影の主は、白銀の鎧を身に纏った、凛とした顔立ちの女剣士だった。

彼女の手には、ルナミス新聞の号外と、ゴッドチューブの配信映像を記録した魔道具が握られている。

「『100円のアイテム』とやらで、大群を蹂躙したイレギュラー。……ポポロ村、調べさせてもらうわよ」

月明かりに照らされた彼女の鋭い瞳が、遠くポポロ村の灯りを真っ直ぐに見据えていた。

俺たちの狂った日常に、新たな波乱が足音を立てて近づいていた。

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