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第十九話:盗人たちの輪舞 後編

ルカ・フェブール イメージ

挿絵(By みてみん)

【第十九話:盗人たちの輪舞 後編】

港町ポスカ・ハルデロ 郊外 領主アルフレド・フォン・バルトロ邸前

 一方、地上では火事の混乱に乗じてロビンとレイダーが敷地の外へと抜け出したところだった。


すると予定どおり、クレストフが騎兵を従えてこちらに向かってきていた。


すれ違いざま「後は任せるぜ!」とロビンがクレストフに言う。


クレストフは僅かに唸づた。


クレストフは現場につくなりこう言い放った。


「貴様ら!領主様の旧屋敷に火をつけるとは言語道断!全員拘束せよ!」


その号令と共に、騎士団が敷地内になだれ込んだ。


その数総勢200名。


荒くれたちは訓練された兵士たちの前に次々と取り押さえられてゆく。


一方その頃、ロト商会の会長であり、スリ集団の元締めであるミゼット・ロブルはいち早く異変を感じて裏口から親衛隊を引き連れ馬車で早々に逃げだしていた。


「くそ!誰だか知らんが奴隷風情が舐めた真似を」とミゼット。


そしておもむろに懐から禍々しい黒光りしたペンダントを取り出して首にかけた。


「そうだ…これで…あの屋敷を証拠も騎士団も、全部消し飛ばしてやる!」


ミゼットが詠唱する。


『目覚めよ。赤い暴君の申し子。レッドドラゴン』


すると禍々しいペンダントの黒光りしていた鏡面に、まるでドラゴンが瞬きをしながら、向こうからこちらを覗き込んでいるかのような赤黒い色にグルンと変色し、怪しく揺らめいた。


と、ちょうどその時だった。


林道脇から魔法が馬車に向かって放たれた。


ボン!という破裂音と共に、地面が隆起しその勢いに押されて馬車が突き上げられるように弾むと、着地と同時に横転する。


攻撃された瞬間、突き上げられた弾みでミゼットの身体がフワっと宙に浮いた。


それと同時に首から下げていたペンダントがスぅーっと首もとから離れた。


「ペンダントが!」


慌てて掴もうと手を伸ばすミゼット。


しかしペンダントには届かず空を掴んだ。


そして馬車の着地と同時にその弾みでジャララと音を立てながら馬車の床を滑り落ち、反動でパカっと開いた扉から外へと転がり落ちる。


車外に落ちたペンダントは、横転した馬車の下敷きになってしまった。


ミゼットは辛うじてシートにしがみ付いて外に投げ出されずに済んだ。


「くっ!何事だ!!」とミゼットが叫ぶ。


横転した馬車の周りを親衛隊が取り囲んで防御を固める。


すると逃げ道を塞ぐように人影が立ちはだかった。


「忠実な部下を置いて逃げるのは、関心できないな」とルディウス。


するユアラが続く。


「覚悟しなさい!ミゼット・ロブル」


すると馬車から這い出たミゼットが叫んだ。


「貴様ら!何てことしてくれたんだ!!

お前たちこいつらは後で良い。

まずはこの馬車を起こせ!!早く!」


「なに!?」


ルディウスがいぶかしんだ。


港町ポスカ・ハルデロ 郊外 地下 地の神殿跡

 一方その頃、地下神殿を歩いていたセツナとルカは神殿の奥からズズズズ…という何か重い物を引きずったような低い物音が響いてきたのを聞き立ち止まった。


「待った!今、何か音しなかった?」


セツナが目を凝らすがよく見えない。


「(こんな時フィールが居てくれたらな…)」


するとルカが何かの気配に気づいてセツナに慌てて言う。


「その照明魔法を消して!!早く!!」


セツナが直ぐに魔法を解除する。


一気に暗くなる神殿内。


暗闇には静けさの中に時折、水滴の落ちる音だけが響く。


もしかすると自分たちの息使いや、心音が聞こえてきそうな静けさだ。


するとまたズズズズ…とさっきより大きな擦れ音と、プシュタタタタ…という小さなエンジンを始動したかのような異音が神殿内に響いた。


するとルカの目が暗闇に慣れたのだろう。


セツナの裾を引っ張って、耳もとで小さくこう言った。


「(中央通路の出入り口に何か大きな黒い影が見えないか?)」


セツナがルカが指差した方向に目を凝らす。


すると次第にセツナ暗闇に目がなれてきた。


そしてセツナが息を呑み、腹の奥底に静かに鎮める。


…ドラゴンだ。あのシルエットは間違いなくドラゴンだ。


セツナは背筋に冷たい汗がしたたり落ちるのを感じた。


「(あのサイズはフィールを100倍しても届かないほどのサイズだ…なぜここに)」


するとドラゴンのバフューバフューという鼻息音が響き、そしてセツナたちの方に視線が向いた。


「まずい!気づかれた!!逃げるぜセツナ!」


言うが早いか、ルカが先導するかたちで中央通路を一気に駆けだす。


カッタタタタ!という二人の走る足音が地下神殿に響く。


二人の足音を追いかけて、背後から「グオオオオ」というドラゴンの雄叫びが響き、同時にドスドスという地響きがセツナたちを追いかけてきた。


「走れ!!追いつかれる!」とルカ。


するとセツナが詠唱をしはじめる。


『纏え。疾風の加…』


しかし走っている状態ではまともに詠唱ができない。


「(くそ…息が続かない…)」


すると心の声ナッセがセツナに呼びかけた。


「(セツナ。俺が代わりに追加詠唱をする。最初の言葉だけ頼む…)」


「(わかった!)」


『纏え!』「(疾風の加護よ、我らを速めよ)」


するとルカとセツナの身体に風の支援魔法がかかった。


支援魔法のかかったセツナたちは風の如く暗い地下神殿を駆け抜ける。


魔法の効果で足音も消えた。


しかしドラゴンはセツナたちを正確にロックオンしてくる。


「な!なんで!?」とセツナ。


するとルカが早口でこう言う。


「クソの量が多すぎたすまん!」


その言葉に「クソっ」という言葉がセツナから漏れた。


ルカの「こっちだ!」という道案内に従って、何度か角を曲がる。


しかしドラゴンは石柱をなぎ倒しながらセツナたちに迫り、とても振り切れない。


すると視線の先に光が差し込んできた。出口だ!


「あそこまで走れ!!」


セツナとルカがラストスパートをかける。


そして一気に光の中へと飛び出す。


一気に視界が広がる。


するとそこは森に囲まれた大きな円形競技場コロッセオになっていた。


転がるように外に出る二人。


これで逃げ切れると思った瞬間、セツナたちの後方からドラゴンが、神殿の狭い入り口を石積みごとズガン!!と砕いて這い出てきた。


「しつこい奴め!」とセツナ。


それを見てルカが言う。


「レッドドラゴン!?」


周囲を見るとどこも高い壁に囲まれていて、よじ登れそうな場所がない。


「万事休すか…」


セツナはそう言うと、レッドドラゴンを前に静かに戦闘姿勢を取るのだった。



港町ポスカ・ハルデロ 郊外 領主アルフレド・フォン・バルトロ邸 裏手

 ミゼット・ロブルの親衛隊たちは、4人だけをルディウスたちを警戒するように対峙させつつ、残りの8名で馬車を引き起こそうとしている。


「せーのっ!押せ!!」「オオオ!!」「もう一度だ!押せ!!」「オオオオ!!」


ルディウスたちそっちのけで必死になって馬車を起こす親衛隊たち。


しかし無駄に装飾が豪華なその馬車は重すぎてそう簡単には起き上がりはしなかった。


押し上げる作業が何回か続いた後、ミゼットが声をあげる。


「ストップ!そのままストップ!手を離すなよ!!」


そして何やらゴソゴソ馬車の下を弄っていたが、ジャララと禍々しいペンダントを馬車の下から引っ張り出した。


ミゼットはそのペンダントをすかさず首にかけると、こちらの様子を静観していたルディウスたちに向けて勝ち誇ったように言い放った。


「ハハハ!恐れ!そして慄くがいい!」


ミゼットが勝利確定と言わんばかりにのたまう。


ルディウスはその宝石を見て言う。


「まさか…使役の宝珠か!」


するとミゼットが不気味な笑みを見せつつ、ルディウスたちの方に手をかざしてこう叫ぶ。


「領主すら恐れた、我らの力を特と見るがいい!

我が元に飛来せよ!レッドドラゴン!

我が前に立ちはだかる愚か者どもをその爆炎で食らい尽くせ!!」


「なんだとっ!」


ルディウスが攻撃に備えて身構える。


「…」


「……」


が、いつまで経ってもレッドドラゴンは飛来してこない。


「…」


「…あれ?」


ミゼットが首に下げた宝珠を見る。


その宝珠を見ると、ヒビが入っていた。


おそらくさっき馬車を何度も揺らした事で破損してしまったようだ。


「ど…どうしてくれるんだ貴様!!」とミゼットが狼狽する。


するとユアラが言う。


「アンタが勝手にした事じゃない!

こっちは手を出さずに待ってあげたんだから感謝しなさい!!」


するとミゼットが狂ったように笑いながら言う。


「ククク…フハハハ!!

貴様らのせいでポスカ・ハルデロもおしまいだ!

レッドドラゴンが制御ができなくなった今、ヤツを人類が止めるのは無理だ。

いずれヤツの怒りがこの地を焼き尽くすだろう!!」


とそこまで言った矢先、ミゼットを取り巻いていた親衛隊が悲鳴を上げて地面に倒れ伏した。


見ると、背後からレイダーとロビンが左右から挟み込むように奇襲をしかけていた。


ロビンとレイダーの奇襲の前に、両脇の7名が次々と倒される。


ルディウスとユアラもそれに呼応して正面から突っ込んだ。


3方向から挟撃された親衛隊に反撃の余地は残されていなかった。


数分もしないうちに、ミゼット一人だけが、五体満足で立っていた。


ルディウスがミゼットに冷たい眼差しを向けながら言う。


「その宝珠の入手方法含め、貴様には聞きたい事がある。ご同行願おう」


ミゼットは何も反応を示す事もなく、力が抜けたように地面にへたり込むと、地面を見つめて小さく震えるのだった。



港町ポスカ・ハルデロ 郊外 地の神殿跡 円形競技場内

 レッドドラゴンが放った爆炎がセツナたちを襲う。


セツナとルカは左右に飛び退くと、身を回転させて素早く起き上がる。


セツナが手をレッドドラゴンにかざしで詠唱する。


『爆ぜろ。(怒りの炎よ、下劣な彼の四肢すら別て)』


即座に火炎弾がレッドドラゴンに飛び、炸裂する。


「グオオ!」と身を捩るレッドドラゴン。


しかしその炎は全身に回ることなく、分厚い表層を少し焦がしただけで爆散した。


「ちっ!炎耐性でもあるのか?」とセツナ。


するとレッドドラゴンが火炎放射のようにブレスをまき散らす。


ルカは華麗な身のこなしで空中へと飛ぶと、棒高跳びの選手のようにブレスを背中越しでかわす。


セツナも、ブレスが到達する瞬間、横っ飛びをして、三角とびの要領で壁をタタタン!と走り蹴り込んでブレスの範囲から離脱する。


そしてまた手をかざすと詠唱する。


『貫け。(激流の牙よ、愚者の命も共に削れ)』


それは水属性の魔法だ。


高圧化された水がビームのように伸び、レッドドラゴンの前脚を捉える。


シュパン!とドラゴンの指先を通過したが、その攻撃も小さく傷をつけただけで、致命傷には程遠かった。


セツナが叫ぶ。


「攻撃が通用してない!」


するとルカが回避しながら叫ぶ。


「首だ!レッドドラゴンの首の装飾品を壊せ!きっとあれでレッドドラゴンを操っている!」


見ると、レッドドラゴンの首に、禍々しい赤黒い宝石がついたバングルが巻かれていた。


「やってみる!」とセツナ。


ルカはわざと注意を引くようにレッドドラゴンの前を通過する。


セツナが魔煙を発生させようと胸に手を当てるが一瞬「イっ!」と顔をしかめた。


『貫け。(執心なる炎よ、愚者を穿つ鉾となれ)』


セツナはルカが注意を引き付けたレッドドラゴンのスキを突いて、バングルに向けて炎の槍を放つ。


放たれた炎の槍がバングルに当たる瞬間、パン!と防護方陣のような模様が中空に発生し、攻撃を防いでしまった。


それを見てルカが言う。


「くそ。解呪しないとダメか!

おいセツナ!お前の吸魔石を貸してくれ!俺があのバングルを解呪する!」


しかしセツナは吸魔石を持っていなかった。


「早く!」


ルカがセツナに手を伸ばした。


とその時、レッドドラゴンの太い尻尾が横なぎにルカを襲った!


「危ない!ルカ!」


セツナがルカを抱き締めるように突き飛ばす。


レッドドラゴンの強烈な尻尾の一撃が庇ったセツナの背中を襲った。


吹き飛ばされたルカとセツナは、互いを抱き締めたまま壁際までゴロゴロと地面を転がった。


そこに追い打ちをかけるようにレッドドラゴンのブレスが襲い掛かる。


とその直後だった!


転がったセツナたちの前にロビンがドシン!と盾を持って着地するとブレスを寸前のところで防ぐ。


『押し留めよ。雄々しき大地よ、我らに不屈の加護を』


ロビンの詠唱が響いた。


すると即座に地面が瞬く間に隆起し壁になると、ドラゴンブレスを遮断する。


「生きてるか!」とロビン。


するとセツナが身体を起こして言う。


「辛うじて…」


ルカがロビンに飛びつきながらこう言う。


「吸魔石を俺に貸してくれ!」


ルカは言うが早いかロビンの吸魔石を奪い取る。


「お?おお…俺魔法撃てなくなる…」とロビン。


そしてルカがレッドドラゴンに手をかざして詠唱する。


『英知の根源たる水の女神ツリョーセよ。

我が声に応えよ。』


するとルカの足元に青白い光と共に魔法陣がフワリと浮かび上がり、その魔法陣から濁りが一切ない透明な水がボコボコと湧き出たかと思うと、一瞬にして水の柱がセツナたちを水中に沈めた。


慌てるロビンとセツナ。


しかし不思議な事に水中に居るはずなのに息が出来ている。


ルカは集中しながらその水柱の中でレッドドラゴンを見据える。


すると水柱が形状を変え、女神の姿を形成する。


突然目の前に出現した水の女神にレッドドラゴンの動きが止める。


しかし女神もまたそれ以上動かない。


ルカが吸魔石をチラリとみて叫ぶ。


「魔煙が足りない!!」


見ると、吸魔石の中央にか細く魔煙が残っているだけだ。


それを見てセツナが顔をしかめながら吸魔石に触れ、意識を集中しだした。


すると吸魔石の中央にボコボコ!と沸騰するかのうように魔煙が噴出し、吸魔石を黒々とした魔煙で満たされてゆく。


「これは?」とルカ。


しかしセツナが吸魔石に手を添えたまま言う。


「いいから。ルカ詠唱に集中してくれ!」


セツナのその言葉にハッとなってルカが一気に集中力を高める。


そして最後の詠唱をしだした。


『ここに秘めたる彼の者の深淵を解き放て』


すると女神がレッドドラゴンの首元に優しく触れると、禍々しいバングルに一瞬防護方陣が現れがた、その防護方陣ごとパキンと亀裂を生じさせ破壊した。


バングルが壊れ、地面に落ちる。


それと同時に「グルル…グガオゥゥ!!」とレッドドラゴンが咆哮する。


しかしレッドドラゴンは先ほどの荒ぶった行動とは打って変わって落ち着きを取り戻していた。


すると上空からセツナを追いかけてきたフィールがフワリと舞い降りる。


フィールは降り立つと、レッドドラゴンに近づき、首をもたげ、視線を向けた。


するとレッドドラゴンもフィールに顔を近づけてくる。


レッドドラゴンの口にスッポリ入るほどの小さなフィールは臆する様子もなく鼻先を近づけると「グロロ」と鳴く。


「ブシュフー。ブシュフー」


レッドドラゴンの鼻息が突風のようにフィールを包み込んだ。


しばらくすると大きな首をもたげたレッドドラゴンが「グルルガオォォン!」と空に向かって咆哮すると、大きな翼を広げて上空へと飛翔した。


砂埃と突風がセツナたちを襲い、レッドドラゴンは空の彼方へと飛び去っていった。


レッドドラゴンが去ったのを見届けると、集中を切らし、気を失うように倒れるルカ。


するとそれと同時に水の女神もカタチを保てなくなりザバン!と水の塊となってセツナたちを押し流した。


「うわっプ!!」セツナが思わず溺れかける。


するとロビンがルカが倒れたのを見て駆け寄る。


「おい!ルカ!大丈夫か!!」


ロビンがルカの小さな体を抱き上げて揺さぶる。


するとルカが意識を取り戻してニヤつきながらこう言った。


「俺様。大…活…躍」


そしてまた意識を失うのだった。


 こうしてセツナたちとルカの活躍、そして入手した書類により、ロト商会と領主アルフレド・フォン・バルトロの関係が明るみになった。


ロト商会はレッドドラゴンを使役し、領主を恫喝していた。


またそんな領主も、ロト商会が人身売買をしていると知りながら、各所に圧力をかけ、もみ消し、その見返りに金品や奴隷を受け取っていた事実が発覚した。


その他、街で横行していたスリなどの犯罪の手引きや、搾取、暗殺依頼など、ありとあらゆる犯罪の数々が明らかとなり、ロト商会は即日解体・関係者は逮捕された。


逮捕されたロト商会の会長ミゼット・ロブルと、血魔女のキレーヌ、そして領主アルフレド・フォン・バルトロはクレストフの騎士団によって拘束され、裁判を受けるべくクレス・ヴェイガルドへと移送される事となった。


空の彼方へと飛び去ったレッドドラゴンについては消息不明である。


事の発端となったセツナの金管証明については、その後、ロト商会の関連施設内に保管されていたのをクレストフが見つけ、セツナの手元に無事に戻った。


ナセナル運河 河口付近 港町ポスカ・ハルデロ 宿屋

 ルカはその後2日間、目を覚まさなかった。


ユアラがルカを就ききりで看病していた。


「ううん…」


ルカが意識を取り戻す。


ユアラが声をかける。


「ルカ!ルカ!」


「…ん…ん!?ここは?」


「ポスカ・ハルデロの宿屋よ。よかったぁ~!」


ユアラがルカを抱き締める。


「な…なんだよ…」と戸惑うルカ。


すると、扉がコンコンとノックされ、ロビンが入って来るなりこう言う。


「おーいユアラ。俺、見舞いの花、買ってきたんだけど…これも」とロビン。


するとルカが起きているのを見て、サッと花を背中に隠す。


「あ!お…お、起きたのか…」


ルカがいぶかしんだ目で言う。


「あ?ああ…まぁな」


「そ、そうか…良かったな」とロビン。


するとユアラが笑いながらロビンに言う。


「その花も昨日と同じように、そこのテーブルのコップに差しといて」


ユアラが指を指したテーブルには花がもうすでにコップに差して置かれていた。


するとルカが言う。


「この花なに?」


するとユアラがこう言う。


「ん?これはロビンが毎日届けていたものよ」


するとロビンがコップにササッと花を差す


「あーそれじゃ!俺はこれで!」


慌てて部屋を出ようとする。


するとルカが言う。


「俺…花より食べ物のほうが嬉しかったんだけどな…」


とロビンが向き直り「なんだとこの…」と言いかけた時、ルカがほほ笑んでこう付け加える。


「でも、初めてのプレゼントが花ってのは、それはそれで良いかもな…」


その言葉とルカの表情にロビンの顔が赤くなる。


「う…旨いもんでも食って早く元気になりやがれ!」と言うと、部屋を出て行った。


ルカがハッとした表情になってユアラに聞く。


「ところであの後はどうなった?成功した?」


「うん。成功したよ。」とユアラがほほ笑む。


するとルカが少しニヤつきながら言う。


「ならさぁ…」


ユアラに呼び出されたセツナたち。


ユアラが言う。


「さて。皆さん。今回の功労者。ルカ・フェブールに何か言わなきゃいけない事あるわよね?」


するとセツナが言う。


「ルカ!ありがとう!本当レッドドラゴンでの召喚?魔法には驚いた!」


するとルディウスが言う。


「ルカくんは召喚魔法が使えるのか?素晴らしいな。

ルカくんのおかげで、ロト商会だけじゃなく、領主の悪行も暴けた、きっとこれでルカくんと同じ身の上の子たちも救われるだろう。ありがとう」


そしてロビンが少しはにかんで言う。


「おう!ルカ!お前の雄姿かっこよかったぜ!」


そしてレイダーが言う。


「ありがとな!」


するとユアラが言う。


「あらら?レイダー何か忘れてない?」


「えっ…(やばい)」


するとユアラが淡々とレイダーの声を真似てあの言葉を言う。


「なんでしたっけね?“よし判った!それならルカくんこうしよう。

この件が決着ついたら“お兄さん”が、一つだけ願いごと叶えてやるよ“でしたっけね?」


その言葉にレイダーの顔が引きつる。


「あ…それは…」


するとルカもレイダーの声を真似て付け加える。


「レイダーが俺の耳もとでこう言ったんだ。“予想も出来ない程良いものあげちゃおう”って」


するとロビンがニヤニヤしながら言う。


「アチャーそれは叶えないと男が廃るなレイダー」


「わ。わかったよ!約束は約束だ!なんでもこのお兄さんが叶えてやるよ!!」とレイダー。


するとルカがクスっと笑ってこう言った。


「予想もできない程良いもの…それはもう俺は手に入れたんだ。

あのクソみたいな人生から、ロト商会の支配から解放された。

だからもう本当は約束は果たしてるんだ」


その言葉にレイダーが「良かった~」と肩をなでおろす。


しかしルカがこう付け加えた。


「俺、できればこのパーティーと一緒に冒険の旅に出たいんだ」


ルカのその言葉にロビンが小さくガッツポーズする。


「俺に何が出来るか判らないけど…一緒に連れて行ってくれないか?」とルカ。


するとセツナが言う。


「もちろん!」


「ルカくんが仲間に入ってくれるなら、今後のダンジョンの鍵開けは任せたい」とルディウス。


ロビンはなぜか「よかったな~よかった!!」と泣いている。


レイダーは「お、俺も最初からそうしようと思ってたんだ!」となぜか嘘をつく。


するとユアラがルカにこう言った。


「私たちと一緒に。世界を救いに行きましょ!ルカ」


こうしてルカ・フェブールがセツナたちのパーティーに加わるのだった。


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