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第十話:新たな旅路

【第十話:新たな旅路】

 フォーグマ洞窟の探索から戻って2日後、

ギルドから要請がありセツナたちはエルヴィンの執務室に呼ばれた。


執務室に入るなりエルヴィンが口を開く。


「依頼は確か…探索だったはずだが…

その後、洞窟の探索に、選りすぐりのパーティーを向かわせたのだが…全滅だ…」


エルヴィンの全滅という言葉に「え!?」となるセツナたち。


エルヴィンがこう付け加えた。


「敵の方がな…

敵が一匹も残っていなかったそうだ。

おかげで戻ってきたパーティーのリーダーから“こんな子供のお使いみたいな依頼をすんな!”と苦情を受けてしまったよ。

もちろん彼らには高い報酬を我々ギルドは支払ったがね…」


その言葉に胸をなでおろす一同。


「ははは…それはご愁傷様で…」と苦笑いするレイダー。


「結果的に君たちの活躍により、フォーグマ洞窟の敵は一掃されていた。

敵が居なくなった事もあり、その後の魔煙漏出を抑える作業もスムースに行われた。

君たちに大神官様より、感謝状が届いている。

受け取りたまえ。」


エルヴィンがそれぞれに証書を手渡す。


感謝状を受け取ったロビンが聞く。


「で?まさかこれだけで済ませようだなんて思っちゃいねぇよな?」


するとエルヴィンが手元にあった書類を確認しながらこう言った。


「その後の調査で、洞窟やその周辺で討伐された事が確認できた魔物は、危険度Dクラスのゴブリン135匹、危険度Cクラスのオーガ15匹、危険度Bクラスのブラッディ・ゴブリン124匹、そして極めつけは危険度Aクラスのブラッディ・ゴブリン・ロード1匹。

これは本来、軍隊が出動して鎮圧すべき規模の大群だ…」


セツナが小声で隣のレイダーに聞く。


「そんなに俺たち倒してたのか?」


「なんだよ。セツナは気づかなかったのか?ありゃ規格外の量だったぜ」


エルヴィンが言う。


「依頼を受ける条件に“倒した魔物の危険度に応じて報酬を支払う”と書いていたが…

確認できた数での今回の総額は218,150リンドル相当になる」


「なかなかいい稼ぎになったじゃねぇか」とロビン。


するとエルヴィンが書類にある魔物が抜けている事に気づいてこう言う。


「ところで…ルシエラたちが襲われたという魔物についてだが…どんな相手だったんだね?」


するとルディウスが言う。


「あれはノーフェイス・レイスでした。危険度Sクラスの魔物です。」


「それは…どうなった?」とエルヴィン。


するとセツナが口を開いた。


「…倒しました。」


「ほぅ…」


セツナのその表情を見てエルヴィンはしばらく考え込む。


そして、セツナを試すようにこう聞いた。


「確かに、その後の報告にも遭遇したという報告は無かった…

これは興味本位で聞くのだが、それはセツナが倒したのかね?」


エルヴィンの言葉に、セツナが言う。


「いえ、みんなの協力がなければ倒せない強敵でした」


その言葉にエルヴィンはほほ笑んだ。


「セツナ。君はいい成長をしているようだ」


そしてエルヴィンは机の引出しから小切手を取り出すと、

そこにサラサラとサインをし、セツナに手渡した。


「特別報酬として50,000リンドルを報酬に加えよう」


レイダーが思わずガッツポーズをする。


「本日中に各自の銀行口座に43,630リンドル振り込もう。

下に降りたらカウンターで手続きをするといい」とエルヴィン。


するとセツナが言う。


「あ…俺。口座持ってない…」


セツナのその言葉に全員から「あぁ…(そうだった)」と声が漏れた。


ユアラがセツナに連れ添ってギルドの窓口で、口座開設の手続きを説明する。


「ここにサインして…」「ここかな…」「で、ここに手をかざして詠唱する」


セツナは教えられたとおり詠唱をする。


『キサラギ・セツナが乞う。我が求めに応じて、糧をここに託せ。』


すると書類が青く光り、サインの上に方陣が光る。


「できたわ。この書類さえあれば、本人であれば、いつでもこれでやり取りできるわ」


「便利だな…これどんな魔法なんだ?」とセツナ。


「私もよく知らないけど、取引する書類同士を重ねて詠唱するだけでコインが転送出来るのよ」


ユアラはそう言うと、書類を折りたたんで、セツナに渡す。


「はい!これは肌身離さず持っておいてね。無くさないでね。」


渡された書類を改めて眺める。


羊皮紙のような茶色い書類には、サインと、報酬の総額、それに何に使ったのか記載できる欄がある。


「(まるでスマホのタッチ決裁画面だな…)」


すると、ロビンたちが声をかける。


「おーい。終わったか~?そろそろ行くぞ~」


 先日の祝勝会の中で、次にどこに向かうかという話になり、

レイダーが以前に言っていたキュウェルドー山のドワーフ族の鍛冶街に向かう事になってる。


「できた!お待たせ!」


セツナは言うと、書類をポケットに丁寧にしまい込んだ。


ギルド施設の外ではルディウス、レイダー、ロビンが装備を背負って待ち構えていた。


レイダーはハルバートを背負い、ロビンは盾の他にツヴァイハンダーを背中に背負っている。


ロビンが港に歩きだしながら聞く。


「んじゃ行こうぜ!

ところでキュウェルドー山のオフロ・ザブンコにはどこの街で会うんだっけか…」


「ゾロッサ・ロンド公国のザンブリ・フロドーロさんだ」とレイダー。


するとルディウスが補足した。


「ここからだと、ナセナル運河を船で下り、港町ポスカ・ハルデロで外海用の船に乗り換えて、ランバルト大陸にある港町クシュナールを経由して陸路でキュウェルドー山のゾロッサ・ロンド公国といった経路だ」


するとユアラがゾッとしたような顔をしながら質問する。


「話を聞いただけで遠さが判るわ。

一体、何日かかるのかしら。」


するとすぐ横を歩いていたレイダーが振り返って言う。


「ざっと計算して25日間…」


「うわ…長いわ」


一方でセツナはわくわくしていた。


「(どんな世界が待っているのだろう)」


傍らにはフィールがいそいそと歩いている。


それを見てセツナがボソッと言う。


「フィールは良いよな。空が飛べるんだもんな」


するとユアラが以外といった表情でセツナに言う。


「あら。私たちだってワイバーンに乗れば空だって行けるわよ」


「ワイバーン!?それ乗っていいものなのか?」と驚愕するセツナ。


するとレイダーが笑いながら言う。


「ま、ワイバーン・ライダーっていう誰もが憧れる兵科もあるくらいだからな。

俺も兵士の訓練で何度か乗ったけど、あいつら気性が荒い上に、乗り方も癖が強かった。

振り落とされないよう必死にしがみ付いてたよ。ハハハ!」


するとロビンが言う。


「セツナ残念だが。当分は船旅だ。

レイダーも言っていたが、ワイバーンの操竜は馬より遥かに難しい。」


「そうか。どんなものかちょっと気になるけどな」とセツナ。


するとルディウスが笑いながらこう言った。


「なに残念がる事はないさ。

フィールが成長すればそのうち乗れるようになるだろう」


さらっと言ってのけるルディウス。


その言葉に全員から「ええ!?」と声が上がった。


「乗りたい!セツナ。成長したら一緒に乗ろ!」とユアラが目を輝かせる。


ロビンが「ま。考えて見りゃ当然か…どんな犬種でも成長はするからな…」とフィールを見た。


「(なんでロビンって犬が基準なのだろう…)」と一同。


レイダーがフィールの様子を見て聞く。


「そう言えば、フィール召喚したての頃より、少し大きくなっていないか?」


その言葉にセツナが頭を掻きつつこう返す。


「僕の勘違いだと思っていたけど、やっぱりそう思う?

昨日、久々にフィールが僕のベッドに乗ってきたんだけど、重すぎてベッドが潰れかけた。」


するとユアラが「そっか~フィールはいつもいっぱいお肉食べてたもんね~」とフィールの頭を撫でた。


フィールもユアラの手に鼻をクンクンと匂いを嗅ぐと、舌でペロっと指先を舐める。


その仕草は犬そのものだ。


「(確かに、大型犬くらいのサイズ感になってるかも…)」とセツナは思った。


ルディウス言う。


「フィールにしても、ワイバーンにしても、乗り方にはコツがいる。

下手な乗り方すると、乗り手が危険な事は当然だが、フィールやワイバーンにも致命的な負担がかかるから、操竜の訓練は欠かせないだろう。」


「でもよー俺は兵士だから訓練受けたけどよ。

操竜の訓練受けるにもライダー経験5年以上ある教官の指導が欠かせないぜ」とレイダー。


するとルディウスが言う。


「問題ない。私がいずれ教えよう」


ルディウスのその言葉に改めて全員が思った。


「(この神官は何者?)」


そうこう話していると城壁の向こうに運河が見えてきた。


城壁の門を抜けると、すぐ目の前は運河だ。


交通の要所ということもあり、港はよく整備されており、石畳が運河にそって長く続いている。


川の幅は広く向こう岸までは100メートル以上ありそうだ。


整備された岸壁には複数の帆船が停泊している。


どの船も荷物の出し入れで忙しく人が行き来していた。


一行が港町ポスカ・ハルデロ行きの船着き場を探して歩いていると、一人の少年が声をかけてきた。


「よう!そこのご一行!船をお探しかい?」


見るとその少年はまだ10歳くらいのようだ。


日に焼けて褐色の肌には太陽の光で汗が光っている。


するとロビンが言う。


「おう!港町ポスカ・ハルデロ行きの船着き場を探してんだ」


すると少年が目を輝かせて言う。


「お!旦那方は運がいいね!ちょうど俺の船の行き先が港町ポスカ・ハルデロだ。

案内するから着いて来なよ!」


するとレイダーが止める。


「いやいや。大人をからかうのは止してくれ。“俺の船”ってまだ子供じゃないか」


すると少年が言う。


「てやんでぇ!バーロ畜生め!子供だからって舐めんなさんな!

こう見えてもナセナル運河の風雲児。ロドリゴ・ナセナル運輸の若社長コメット・グレウとは…ア!俺の事よォ~!!」


コメットは自己紹介すると歌舞伎ばりの睨みを披露してみせる。


それを見てロビンが素っ気なく言う。


「んじゃ。他あたるわ…」


「ちょ!ちょっと待った!」とコメット。


「運がいいってのは客引き文句でもなんでもないぜ。

あそこ見て見な。この船の3艘向こう側、少し離れて一隻だけポツンと停泊しているだろ?

あの辺りが港町ポスカ・ハルデロ行きの停泊場所だ。

見てのとおり、港町ポスカ・ハルデロ行きは俺の船一隻だけだぜ」


確かに、手前は複数の船が並んでいるが、奥の方は閑散としており、一隻しか停泊していない。


するとルディウスが言う。


「では船主。我々を港町ポスカ・ハルデロまで乗せていってくれないか?」


するとコメットが言う。


「おお!神官様は判ってらっしゃる!いいぜ。一人12リンドル。港町ポスカ・ハルデロまでは3日の旅だ。食事は朝だけサービスだ。それ以外は5回の陸揚げした時を見計らって、現地で買っておいてくれ」


そこまで言うとコメットが人数を数え始める。


「1,2…5人と…あとはペットが1匹ね…そいつは体重何キロあるんだ?」


「ペット!?」とセツナ。


するとコメットが言う。


「そう。その犬は重量にもよるが、ざっと見は別料金で10リンドルだ。」


「いや、犬じゃなくてフェザー・ドラゴンで…」とセツナが言うと。


「てやんでぇ!バーロ畜生め!俺が犬といったら犬なんだ!」とコメット。


「(そ…そうなんだ…ま、いいか)」


「おそらく20キロ?くらいかと…」とセツナが自信なさげに言う。


「カー!飼い主失格だな。自分の犬の体重も知らねぇってか!」とコメット。


するとロビンがわざとらしく咳払いをしながら言う。


「フィールはこの前俺が抱いた時の感覚からすると、18.5キロくらいだぜセツナ。

“犬”の事なら任せろ」


一同は思う

「レイダー:(ロビンいつフィールを抱いたんだ!?)」

「ルディウス:(犬か…実家で飼っていたな…)」

「ユアラ:(ああ、フィール、かわいいわ)」

「心の声:(まあ、そう気にするなセツナ)」


「ま、そのくらいの重さなら問題ないか。んじゃ。一行様ご案内~」


コメットはそう言うと、一行を船に案内するのだった。


 乗船するとフィールは大きめのケージに入れられ荷物のように積まれた。


「(ああ、可哀そう…でもそんな姿もかわいい)」


ユアラはフィールの檻の前にあった、木箱の上に座ると出発を待つ。


コメットが船員に言う。


「おっし!離岸する!出航だ!」


船員2名が橋げたを縄で引っ張り上げて船内に引きずり込むと、

別の船員たちが木の棒で護岸を「せーの!」と息を合わせて押す。


すると船体がゆっくり運河の中央に向けて横滑りしだした。


「ルックアウト!進路確認!」とコメット。


「進路に障害物なし!」とマストの上の船員が言う。


コメットは船尾の舵輪を握ると、ガラララ!と舵を切って船首を川下へと向ける。


船は運河の流れに身を任せて船足を上げた。


甲板でクレス・ヴェイガルドの城壁が離れてゆく様子を眺めるセツナ。


「(ここでは色々あったな…)」


セツナはノーフェイス・レイスの少年の事を思い出し、少しだけ目が潤んだ。


気持を紛らわすために、今度は視線を対岸の方に向ける。


滔々と流れる広い運河は穏やかで、その水は微かに茶色だ。


するとレイダーが声をかける。


「セツナ。どうせ暇だろ?ちょっと練習に付き合えよ」


そう言うレイダーの手にはどこで入手したのか、ハルバートと同じ長さの木の棒が二本握られている。


レイダーはそのうちの一本をセツナに差し出しながら言う。


「船長。ちょいと新兵訓練したいんだが、甲板を使ってもいいか?」


それを見たコメットが言う。


「使ってもいいが、もし積み荷とか、甲板傷つけたら弁償だからな!!」


「だとよ。どうする?」とレイダー。


セツナは少し迷った。


「(どうする…怖いが…)」


すると心の声がまた響く


「(生き残りたいなら訓練だセツナ)」


「…お願いします」


セツナはそう言うと以前に言われた通りに棒を正眼で構える。


レイダーも静かにセツナと同じように構える。


しかしレイダーの構えはさすが死線を潜り抜けた兵だ、スキがあるようで全くない。


レイダーがセツナに言う。


「まずは教えた通り突いてみな」


セツナは一呼吸おいて、半歩動いた。


と、次の瞬間、レイダーがセツナの突いてきた棒の先をパッシ!と弾いて軌道を外へとズラすと、そのままセツナの喉に棒を突き込んで寸止めした。


「はい。一本」とレイダー。


「基本に忠実なのはいい。が全体的な動作が遅いな。足の動きと腰の動きに時間差があると、

今みたいに、先読みされて叩き落とされる。勝負する時は一瞬で決めろ」


「はい!」


セツナはもう一度構え直す。


セツナとレイダーが試合していると聞いてロビンとルディウスが見に来た。


「お、やってるなー」


セツナは間合いをギリギリまで詰め、自分の棒の先がどの程度まで届くかをイメージする。


「(力が入り過ぎだセツナ)」


不意に心の中に声が響く。


「(…この声、あの時のナッセなのか?)」


「(もう少し手首の力を抜いていい…)」


「(こうかな…)」


セツナはその言葉のとおりに少しだけ手首の力を抜く。


「(失敗してもいい…首元目掛けて突っ込め)」


「(…やってみる)」


セツナは心の声に従って早速行動する。


次の瞬間、セツナは後ろ足を蹴りだすと同時に腰を捻って棒を繰り出した。


「おっと!」


レイダーがセツナの棒をチョイと叩いて軌道を変える。


セツナの突きがレイダーの顔を霞める。


それを見たロビンが言う。


「なかなか筋がいいじゃねぇか」


するとレイダーが苦笑いしながら言った。


「急に上手くなりやがった…」


ルディウスが「セツナは才能があるようだな」とニヤつく。


するとレイダーが「いやいや、俺の教え方が上手いのよ」と返した。


セツナもほほ笑むと言う。


「ほんと、先生の教え方が上手いから自然に体が動くんだよね。

レイダー先生には感謝してます。」


「そ、そんな上手いって言われちゃあ…先生も本気だいちゃおうかな」


レイダーが嬉しそうに棒を器用に振り回すと構え直す。


その後、レイダーとセツナは僅かに揺れる甲板の上で、何度も練習を重ねた。


実際、セツナは飲み込みが異常に早かった。


それは、天賦の才があったという事なのだろう。


セツナはレイダーの教えを忠実に守りつつ、一突きごとに修正を加えてゆき、

着実に技の練度が増してゆく。


それに触発されたのか、うずうずしながらロビンがセツナにこう言う。


「セツナ。明日!明日は…俺が剣と盾の扱いを教えてやるよ!!な!やるだろ?」


セツナも自分が信じられないほどの上達を実感してわくわくしながらこう返す。


「はい!お願いします!」


こうして、甲板がさながら小さな道場になった。


ユアラは一人、木箱に座って「フーン…」と眺めている。


フィールも訓練風景を不思議そうに見て、舌をピロピロ出し入れしている。


ユアラは「これだから男って…」と言うと、フィールを撫でるのだった。


ナセナル運河下流 コトルの小港

 クレス・ヴェイガルドを出航して2日目の夕方、この日最後に立ち寄った小さな港町で、セツナたちは一旦陸へと上がり、夕食を仕入れることにした。


「あー…なんだか久々の陸地だな」とレイダーが背伸びをしながら言う。


「気のせいか地面が揺れている」とセツナ。


「波が少ないとはいえ、多少は影響でるだろう」とルディウス。


すると背後からコメットの声が響いた。


「なに~!荷物が奪われたって?そりゃどういう事でぃ!」


振り返るとコメットが地元の倉庫番と言い合いしている。


「俺たちの仲間もみなやられちまって…

金も荷物も…なんもかんも皆奪われちまった…本当にすんません!」


「俺たちの警備が甘かったからだろ!

それで、盗まれた荷物の在処は判ってるのか?」


「それは判ってますが、例の山賊のアジトみたいで…」


その会話を聞いていたレイダーが言う。


「なんだかトラブったみたいだな…」


ルディウスが言う。


「山賊か…確かに港町は賊のたまり場だからな、治安が悪いのはどこも同じだな」


コメットが指示を出す。


「アジトに乗り込んで取り返す。

お前たちの家族も連れ去られたとあっちゃ、放っておけるわけがねぇ!

今すぐ仲間を集めろ!!」


「あーらら。あの若社長、あんな成して結構武闘派だぜ」とロビン。


「あんな子供なのに?」とセツナ。


するとレイダーが言う。


「年齢は関係ないよ…この世界で生きるって事は、甘い事は言っていられないって事だろ」


するとコメットがセツナたちに駆け寄って声をかける。


「すまねぇ旦那方。

ちょいとトラブったから、港町ポスカ・ハルデロには予定より遅れそうだ。

追加の料金は要らねえ、滞在費もこちらで補填する。

それとも急ぎか?急ぎなら…」


するとルディウスが言う。


「いや、そう急ぐ旅ではない。それより何のトラブルなんだ?」


するとコメットがばつが悪そうに言う。


「お恥ずかしい話ですが、俺たちの倉庫が今朝、山賊の襲撃を受けちまって。

港町ポスカ・ハルデロに届けるはずだった、荷物が盗まれちまった。

自分の大切なモノさえ自分たちで守れないなんて、ほんと情けねぇ話だよな…」


するとルディウスが言う。


「私は回復魔法が使える。誰か傷者は出たのか?」


「いや、傷者はいねぇ…

それに偶然居合わせたお客の力を借りちゃぁ、ロドリゴ・ナセナル運輸の名が廃る。

うち等の詰まんねぇトラブルに巻き込んじまってすまねぇが、

さっさと終わらせて来るんで、旦那方はちょいとここで羽でも伸ばしてくだせぇ」


コメットはそう言ってはいたが、足を見ると膝が笑っている。


ルディウスはそれを見て小さくため息をする。


「…そうか。ところでコメット。君はなぜ若社長をしているのだ?」


「…なんでぇ急に…」


「若社長という事は、先代の社長がいるはずだ。今回の件、その社長に任せてもいいのでは?」


ルディウスの提案にコメットは急に黙り込む。


そして重い口を開いた。


「おやじは…先代の社長ロドリゴはこの前、死んじまった…」


「やはりそうか…」とルディウス。


「やはりってなんだよ!」とコメット。


「先代のロドリゴ・グレウとは旧知の中でな、私も何度となくこの航路を行く時にお世話になったのだ。

コメット君。ロドリゴはなぜ死んだ?病気か?」


「…山賊に…襲われたんだ。

プトレ・ファミリーっていう、ここいらを縄張りだと主張している危険な連中だ…。

今回の強盗事件も同じ連中が関係している。

でも勘違いしないでくれ。

俺は…おやじの敵を討ちたいんじゃねぇんだ。

おやじが残したこの会社を護りたいんだ。

今のままじゃ会社が潰れっちまう。

おやじの生きた証を護っていきたいんだ…」


コメットの言葉を聞き、ルディウスは何かを言いたげにこちらを見る。


するとレイダーがあきれ顔で空を仰いで言う。


「残念と言うべきか、嬉しいと言うべきか…

俺は最近ルディウスの性格が判ってきたんだよな~」


「…お、良い傾向じゃねぇか」とロビン。


「正直、私も人様のためにってのは嫌いじゃないのよね…」とユアラ。


「(まじか…皆、なんだかコメットに手を貸すような事を言ってるな…俺はどうする?)」


セツナだけは答を出せずにいた。


「(今度の戦闘は魔物じゃない。人だぞ…しかも見ず知らずの他人のための戦闘だ…)」


すると心の声が語り掛ける。


「(無理はしなくていい。ただ、セツナが目指す魔王との闘いはもっとキツいだろうな…)」


「(どうする…俺…決断しろ…)」


するとセツナの目に自分より年下のコメットの健気な姿が写り込む。


そしてこう切り出した。


「…ルディウス。もし手を貸すつもりなら…追加料金を請求しなくちゃな!」


セツナは少し上ずった声でそう答える。


「(言ってしまった…強がってしまった…)」


ルディウスがコメットに言う。


「という事だコメット…

我々も協力させてくれ。

だがセツナの言うとおり、それ相応の報酬は欲しいがな」


コメットの顔が明るくなる。


「ありがてぇ…正直。心細かったんだ。報酬は弾む!助けてほしい!!」


こうしてセツナたちは山賊討伐に参加するのだった。

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