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転生ですか?…すみません ウチそういうの結構です   作者: ODN(オーディン)
第二章

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63.「不孝」

63.「逃亡」


—――私たちは不拭の罪を犯してしまった。

誤りではない過ち。私たちは自らの意志で母に背き、大地たる母に怒りを与えてしまった。

その事実だけは覆しようもなく、真実は私たちにも分からない。

私たちは「世界の腹を満たそうとした」だけ。それだけだったはずなのに…何故に歪んでしまったのか。

それは私たちには、もう分からない。

過ぎたことを思い出しても犯した罪は変わらない。真実を知るよりも、事実を/罪を血に刻み、戒め続けねばならない。

私たちは不拭の罪を犯した。赦しは求めない。ただこの血が果てるまで私たちは咎人で在り続けねばならない。

罪は大地と共に、もう誰も、二度と同じ罪を繰り返さぬために。

私たちは真なる■■を求めて、無様に、醜悪に、惨めに…生き続ける—――。



「なぜ村を捨てたワシに…こんなものを託したのか」

老人は古い紙片を挟んだ手記を閉じて大きくため息をつく。普段は全く手を付けない手記を開く気になったのは、あの青年のことを思い出したからなのか。かつて古着を置いていた棚の余白に手記を置き、封をするように老人は戸棚を閉める。

〝カニエ=ソジェール〟という青年が我が家を訪れた事は今でも鮮明に思い出せる。

薄くやせ荒んだ髪の毛にボロボロの手足。抜け、欠けた歯から覗く黒い口蓋と歯肉に刺さった木片。獣のような目をした青年の様相に老人は龍白との戦いで亡くなった息子の死影を重ねた…。


 一回り年下の妻との間に授かった息子は妻が語った白銀英雄譚に憧れた。ところが妻が病で亡くなると息子の憧れは心酔へと移り、執着へと形を変える。先走った理想に伴わない実力。理想に燃えながらも現実に冷やされる葛藤に苦しむと、いつしか堅実に剣術を磨く意義を見出せなくなり、しまいには剣技を(おろそ)かにして魔術にのみ没頭するようになった。

…そんな息子の行く末を見かねた老人は()を返上すべく息子と共に大都アスカテーラへと参上した。手続きを済ませる間、息子には食糧を買い込んで先に帰るよう命じていたが、どこからか龍白襲来の噂を聞きつけた息子は少ない貨幣を握ったまま大都で行方をくらませてしまう…。

そんなことはつゆ知らず。数日掛かりで家に帰ると息子の姿はなく、いくら待っても一向に戻ってこない。

何かの事件に巻き込まれたのか。大都の番人を務めるリンドン家の協力を求めて、急ぎ大都に出向くと大都内は非常に慌ただしくなっていた。忙しく行き交う人々に事情を聞くと、どうやら山脈方面から龍白が現れたらしく近隣の村々に被害が出ているのだという。

…「ヴァルマン家当主が近くの騎士たちを引き連れて迎撃に向かった」「いや当主は既に戦死した」…など様々な情報が交差する中、死傷者の一部が大都内搬送されるのを見た。


「—――バカ息子が」

…その腰に携えた鞘を見間違う筈もない。再会した息子は見るも無残な死に姿であった。

龍を相手に盾すら持たず、動きづらいマントなぞ身に着けて…戦いに出向いた当時の息子の心境が手に取るように分かる。

きっと死が訪れる瞬間まで愚かな息子は『夢に描いた英雄』であったのだろう。

最後まで夢に溺れたのか。それとも最期には気づいたのか。その真偽を知るすべはない。

けれど一概にも息子を親不孝者だと断ずることもできない。

最も断ずるべきは齢16に至る息子の葛藤を無視した自分自身。その結果が息子の暴走であり、息子の死ひいては息子の代まで続いた騎士家系の終わりを招いた。


青年と息子。見捨てた(、、、、)村ガルーラの生き残りと葛藤に燃え尽きた我が子。

両者の要因を作り出した愚かな自分を呪いながら老人は——かつて一族が立て直そうとしていたガルーラの方向を見据えて、ただただ今日を生きていく。贖うこともできないまま孤独に死ぬことが自らへの罰だと信じて…。


コンコン…


「はい?どちらさまで—――」

聞き違いかと思われたが家の戸を叩く音が数回聞こえた。

最近は好奇心で戸を(つつ)くミュートがいるため初めは無視していたが、どうもミュートの(くちばし)よりも少し重い音に思われて、片足を引きずりながら扉に手をかけると不意に青年の姿が蘇った。

「君なのかい?」戸を開くと同時に尋ねると、そこには銀髪緑眼のエルフと位の高そうな装備を身に着けた女騎士(、、)の姿があった。


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