「父の遺産」
隠れ家に戻った四人をタクマたちが出迎えた。
「無事で何よりです」
タクマが安堵の表情を浮かべた。
「収穫はありましたか」
「予想以上にな」
蓮は答え、鞄から日誌と記憶媒体を取り出した。
「解析を頼めるか」
「もちろんです」
ジェイクが即座に端末を準備した。
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彼は記憶媒体を接続し、慎重にデータを読み込ませた。
画面に膨大な量のファイルが展開された。
「これはすごい量ですね」
タクマが息を呑んだ。
「均衡プロジェクトの全容、評議会の組織構造、それに」
ジェイクが画面をスクロールしながら言った。
「『封印装置設計案』というファイルもあります」
「それだ」
蓮は身を乗り出した。
「詳しく解析してくれ」
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ジェイクは慎重にファイルを開いた。
複雑な回路図と数式が画面いっぱいに広がった。
「専門的すぎて、すぐには理解できませんが」
彼は真剣な表情で言った。
「この装置は評議会のネットワークに干渉するために設計されているようです」
「干渉、というのは」
エマが尋ねた。
「評議会の監視網や制御システムを一時的に無効化する仕組みだと思われます」
ジェイクは答えた。
「工藤さんはこれを使って評議会の支配から人々を守ろうとしていたのかもしれません」
エマが画面を覗き込みながら言った。
「起動には、どれくらいのエネルギーが必要なんですか」
ジェイクは資料を確認しながら答えた。
「マナ炉三基分、というところでしょうか。決して小さな数字ではありません」
「調達できるのか」
蓮が聞いた。
「ジャンク・ギルドの技術力があれば、不可能ではないと思います」
ジェイクは答えた。
「ただし、時間はかかります」
ローレンが端末を操作しながら付け加えた。
「必要な部品のリストを作成します。ラムさんに相談してみましょう」
「頼む」
蓮は頷いた。
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蓮は日誌のページをめくった。
さらに詳しい記述があった。
「『封印装置は評議会の中枢に直接接続することで最大の効果を発揮する。だがそのためには接続経路を確保する必要がある』」
彼は声を出して読み上げた。
「接続経路、というのは」
ルシアが聞いた。
「評議会の本拠地への物理的、あるいは電子的な経路のことだろう」
カインが答えた。
「私が知る限り、その場所は徹底的に隠蔽されている」
ルシアが日誌の別のページを確認した。
「ここにも、経路に関する記述がある」
彼女は静かに読み上げた。
「『接続経路は複数存在するが、いずれも高度な防衛機構に守られている。単独での突破は不可能に近い』」
「単独では、か」
蓮は繰り返した。
「つまり、俺たちのようなチームであれば可能性があるということかもしれない」
カインが頷いた。
「父上は、そこまで見越して記録を残していたのかもしれないな」
蓮の胸に、確かな希望が灯った。
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タクマが別のファイルを開いた。
「これを見てください」
画面には地図のようなものが表示されていた。
「『評議会中枢への接続経路』というファイルです」
蓮は身を乗り出した。
地図にはいくつかの座標と暗号化された文字列が記されていた。
「解読できるか」
「時間はかかりますが可能だと思います」
タクマは答えた。
「これが本物なら、評議会の本拠地に近づく手がかりになります」
クロが地図を覗き込んだ。
「座標はどのあたりを示している」
「まだ確定ではありませんが」
タクマは慎重に答えた。
「大陸の中央部、人跡未踏の山岳地帯を指しているようです」
「そんな場所に」
エマが驚いたように言った。
「隠すには、うってつけの場所ですね」
ローレンが険しい表情で頷いた。
「アクセス自体が困難な立地です。相応の準備が必要になります」
蓮は地図を見つめながら静かに言った。
「時間をかけてでも、必ず辿り着く」
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ミオが静かに口を開いた。
『この情報が世界を変える鍵になるかもしれません』
「そうだな」
蓮は頷いた。
彼はしばらく資料を見つめた後、静かに言った。
「父は最初からこの日のために準備していたのかもしれない」
灯がそっと兄の隣に座った。
「お父さんの意志、確かに受け継がれていますね」
「ああ」
蓮は静かに頷いた。
「だからこそ、無駄にはできない」
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エマが険しい表情で言った。
「ですがこの情報が敵の手に渡れば危険です。厳重に管理しないと」
「その通りだ」
蓮は頷いた。
「バックアップを複数箇所に分散させよう。一箇所が破られても全てが失われないように」
ローレンが提案した。
「ジャンク・ギルドの倉庫にも一部を預けられるかもしれません」
「ラムさんに相談してみよう」
蓮は言った。
タクマが真剣な表情で続けた。
「並行して封印装置の設計図の解析も進めます。実際に製造できるかどうか、確認する必要があります」
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夜が更けた頃、蓮はカインと二人で資料を見つめていた。
「本当にこの装置は機能するのか」
蓮が尋ねた。
「理論上は」
カインは慎重に答えた。
「だが実際に動かすには膨大な資源と技術が必要になる」
「時間はどれくらいかかる」
「わからない」
カインは首を振った。
「だが不可能ではないはずだ」
蓮はしばらく沈黙した後、静かに言った。
「やってみよう。父が命をかけて残したものだ」
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カインは彼の横顔をしばらく見つめていた。
「お前は本当にお前の父によく似ている」
「そうなのか」
蓮は苦笑した。
「会ったこともないくせに」
「記録映像で何度か見たことがある」
カインは静かに答えた。
「頑固なところも諦めの悪さも驚くほど似ている」
その言葉に蓮は複雑な感情を覚えたが悪い気はしなかった。
「一つ聞きたい」
蓮は言った。
「お前は、これからどうしたい」
カインはしばらく黙り込んだ。
「今まで、私は誰かに命じられて生きてきた」
彼は静かに続けた。
「これからは、自分の意志で何かを成し遂げたい。それだけだ」
「それでいい」
蓮は答えた。
「一緒に、成し遂げよう」
カインは僅かに口の端を上げた。
「悪くない誘いだな」
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翌朝、全員が円卓に集まり今後の方針を話し合った。
「封印装置の製造と評議会中枢への接続経路の解読。この二つを並行して進める」
蓮は言った。
「装置の製造は俺とカイン、ジェイクで進めます」
タクマが手を挙げた。
「経路の解読は俺とローレンで担当します」
「エマとクロは引き続き警備と情報収集を頼む」
蓮は続けた。
「ルシアとゼノンは屋敷に残る資料の再確認を」
「了解」
ルシアが答えた。
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灯が静かに口を開いた。
「私とミオは国際仲裁機関との連携を続けます。世論の動向も注視しておかないと」
「頼む」
蓮は頷いた。
ミナも小さく手を挙げた。
「私にも何か手伝わせてください」
「ありがとう」
灯が微笑んだ。
「一緒に頑張りましょう」
ゼノンが静かに口を開いた。
「俺とルシアは、戦闘面の備えも並行して進める」
「頼む」
蓮は頷いた。
「敵がいつ動くかわからない以上、常に備えておく必要がある」
クロが腕を組みながら言った。
「装備の見直しも忘れずにな」
「もちろんです」
エマが答えた。
蓮は仲間たちの顔を見渡した。
それぞれの役割が定まり、確かな連携が生まれ始めていた。
父が遺した意志を胸に新たな戦いへの準備が着実に進んでいった。
窓の外では朝日がゴーストタウンの廃墟を静かに照らし始めていた。
新しい一日が、確かな決意と共に幕を開けていた。
蓮は日誌をそっと胸元にしまい、静かに前を見据えた。
父が繋いだ想いを、必ず未来へと届ける。
その覚悟だけを胸に、彼は仲間たちと共に歩き出した。
隠れ家の外では、ゴーストタウンの風景が新しい朝の光を静かに受け止めていた。
長い戦いの先に見える答えへと、一行は着実に歩みを進めていく。
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第98話 完




