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「次なる一歩」

隠れ家の円卓に全員が集まった。


蓮が地図と資料を広げた。


「父が残した証拠、その手がかりを探そう」


タクマが端末を開いた。


「父の研究データが保管されていた施設、心当たりをいくつか洗い出しました」


「候補は」


蓮が聞いた。


「三箇所あります。ただ、どれも決定的な確証はありません」


ジェイクが端末に地図を展開した。


「一つ目は旧研究都市、二つ目は地下三層の廃棄物処理施設、三つ目は父上の出身大学の資料室です」


「それぞれの可能性は」


蓮が聞いた。


「正直、決め手に欠けます」


ジェイクは首を振った。


「時間をかけて絞り込む必要がありそうです」


ローレンが腕を組んだ。


「三箇所全部を調べるとなると、かなりの時間がかかりますね」


「効率的に進める方法を考えないと」


エマが言った。


ジェイクが端末を操作しながら提案した。


「優先順位をつけて、有力な場所から順に潰していくのはどうでしょう」


「賛成だ」


蓮は頷いた。


「まずは一番可能性が高そうな場所から当たろう」


タクマが資料を並べ替えた。


「では、それぞれの施設の特徴を整理してみます」


---


カインが資料を覗き込んだ。


「その中に一つ気になる場所がある」


彼は一点を指した。


「旧研究都市の地下保管庫。評議会が過去に一度、調査に入った記録がある施設だ」


「なぜそこを知っている」


蓮が聞いた。


「私も一時期、その施設の管理に関わっていた」


カインは静かに答えた。


「詳しくは知らないが何かを探していたのは確かだ」


ルシアが真剣な表情で尋ねた。


「何を探していたか、本当に見当がつかないの」


「当時は末端の管理者に過ぎなかった」


カインは静かに答えた。


「上層部の意図までは知らされていなかった」


蓮は資料を見つめながら考え込んだ。


「それでも、有力な手がかりだ」


「同感だ」


タクマが頷いた。


「まずはそこから調べましょう」


エマが端末を確認しながら付け加えた。


「潜入班の編成も考えておいた方がいいですね」


「そうだな」


蓮は頷いた。


「今回は少数精鋭でいこう」


クロが軽く手を挙げた。


「俺は当然行くぞ」


「頼りにしている」


蓮は答えた。


---


ルシアが身を乗り出した。


「そこに証拠がある可能性が高いということね」


「断定はできない」


カインは慎重に言った。


「だが他の候補よりは有力だと思う」


蓮は地図を見つめながら考え込んだ。


「行ってみる価値はありそうだ」


エマが端末で施設のデータを確認した。


「現在の警備状況は不明です。事前調査が必要ですね」


タクマが付け加えた。


「ジャンク・ギルドの流通網を使えば、警備状況の一部は探れるかもしれません」


「ラムさんに頼んでみるか」


蓮は言った。


「連絡してみます」


灯が端末を操作しながら答えた。


ルシアが地図を見つめながら言った。


「私も、屋敷に残っている資料をもう一度調べ直してみる」


「頼む」


蓮は頷いた。


「小さな手がかりも見逃さないようにしよう」


---


ゼノンが腕を組んだ。


「今回は俺とカイン様の知識が役に立つはずだ」


「様はいらない」


カインが小さく言った。


「昔の癖だ」


ゼノンは苦笑した。


蓮はその様子を見て小さく笑った。


「随分と息が合ってきたな、お前たち」


「敵として長く戦った分、手の内は知り尽くしている」


ゼノンは答えた。


「変な話だがそれが今は役に立っている」


クロが二人のやり取りを見ながら笑った。


「戦友、というやつだな」


「戦友、か」


ゼノンは僅かに苦笑した。


「悪くない響きだ」


カインも小さく頷いた。


「奇妙な縁もあるものだ」


蓮はその光景を見ながら静かに思った。


敵として出会った者たちが、今は同じ目的のために動いている。


その事実に、確かな希望を感じずにはいられなかった。


---


ミナが遠くから会話を見守っていた。


「私にも何か手伝えることがあれば」


灯が彼女に微笑みかけた。


「情報整理、一緒にやりましょう」


「はい」


ミナは頷いた。


二人は端末を並べて資料の整理を始めた。


タクマがその様子を見ながら言った。


「随分と馴染んできましたね」


「ここはそういう場所だから」


蓮は静かに答えた。


「居場所を必要としている人間を拒む理由はない」


---


夜が更けた頃蓮は一人資料を見つめていた。


父が残そうとした証拠。


それが評議会にとって都合の悪いものだとすれば、世界を動かす鍵になるかもしれない。


ミオが静かに隣に座った。


『焦らなくていい』


彼女は静かに言った。


『一つずつ、確実に進めていきましょう』


「ああ」


蓮は頷いた。


「父が守ろうとした答えに必ず辿り着く」


窓の外ではゴーストタウンの夜が静かに更けていった。


灯がそっと部屋に顔を出した。


「兄さん、まだ起きていたんですね」


「少しだけ」


蓮は答えた。


「お前も眠れないのか」


「明日からのこと、考えていました」


灯は静かに言った。


「今度はどんな真実が待っているんでしょうか」


「わからない」


蓮は正直に答えた。


「でも、どんな真実でも受け止める覚悟はできている」


灯は微笑んだ。


「私も、同じ気持ちです」


二人はしばらく無言のまま夜の静けさを共有した。


やがて灯が静かに立ち上がった。


「そろそろ休みます。兄さんも、無理せず休んでくださいね」


「わかっている」


蓮は小さく笑った。


灯は部屋を出る前に振り返った。


「おやすみなさい、兄さん」


「おやすみ」


蓮は答えた。


一人になった部屋で、彼はしばらく資料を見つめ続けた。


やがて静かに端末の明かりを落とした。


新たな旅の始まりが静かに近づいていた。


---


第95話 完

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