「世界への告知」
数日後国際仲裁機関から緊急会見が開かれた。
蓮たちは隠れ家の端末でその様子を見守っていた。
マリアが壇上に立った。
「本日、皆様にお伝えしなければならない事実があります」
彼女の声は緊張していたが確かな覚悟が感じられた。
「これまで水面下に存在していた組織について、情報を公開します」
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会場がざわめいた。
「評議会と呼ばれる存在が企業の枠を超えて世界規模の監視網を持っていることが判明しました」
マリアは静かに続けた。
「その目的、実態については現在も調査中です」
記者の一人が手を挙げた。
「その組織は危険なのですか」
「断定はできません」
マリアは慎重に答えた。
「ですが私たちの知らないところで多くの決定がなされてきた可能性があります」
別の記者が声を上げた。
「具体的にどのような決定がなされてきたのですか」
マリアは一瞬言葉を選ぶように間を置いた。
「企業間の紛争の裏側、あるいは知性体との対立の一部にも、この組織の影響があったと見られます」
会場の空気がさらに張り詰めた。
「証拠はあるのですか」
「現時点で確実な証拠はまだありません」
マリアは正直に答えた。
「ですが、複数の独立した情報源から、同様の存在が示唆されています」
記者たちの間でざわめきが広がった。
マリアは最後に一つ付け加えた。
「私たちは、この事実を隠すことなく、世界と共に向き合っていく決意です」
その言葉には確かな重みがあった。
会見はそのまま質疑応答へと移り、長時間にわたって続いた。
蓮たちは最後まで画面を見つめ続けた。
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灯が端末を見つめながら呟いた。
「本当に公表したんですね」
「マリアさんらしい判断だ」
蓮は答えた。
「隠し続けるより向き合う道を選んだんだろう」
クロが腕を組みながら言った。
「勇気のいる決断だな。反発も相当あるだろうに」
ルシアが静かに付け加えた。
「兄も、似たようなことをしようとしていたのかもしれない」
彼女はカインを見た。
カインは静かに頷いた。
「情報公開の是非については、私も昔から考えていた」
「あなたも」
ルシアが驚いたように聞いた。
「立場上、実行はできなかったがな」
カインは苦笑した。
タクマが険しい表情で言った。
「反響が心配です。評議会が沈黙を守っているとは思えません」
ジェイクが端末を操作しながら言った。
「既に世界中で議論が始まっています。パニックというより困惑が広がっている印象です」
エマが端末の画面を全員に見せた。
「各国政府の反応も分かれています。すぐに調査委員会を立ち上げる国もあれば、静観する構えを見せる国もあります」
ローレンが険しい表情で言った。
「知性体側の反応も気になりますね」
『既に一部の集落から声明が出ています』
ミオが静かに言った。
『評議会という存在についても、以前から薄々感じ取っていたそうです』
「知性体たちも、気づいていたのか」
蓮は驚いたように言った。
『マナの流れに敏感な者は、何か大きな意思の存在を察知していたようです』
ミオは答えた。
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その日の午後マリアから直接連絡が入った。
「蓮さん、公表の判断について、事前に相談できず申し訳ありませんでした」
「いえ」
蓮は答えた。
「必要な判断だったと思います」
「ありがとう」
マリアの声に安堵が滲んだ。
「これから評議会との交渉の道を探ることになります。あなたたちの協力が必要になるかもしれません」
「いつでも力になります」
蓮は静かに答えた。
通信を終える前にマリアが付け加えた。
「一つ、報告があります。装置の停止コードの情報、専門家チームで検証させていただきました」
「結果は」
蓮は聞いた。
「有効性が確認されました。おかげで、今後同様の事態が起きても対処の道筋が見えてきました」
「よかった」
蓮は安堵の息を漏らした。
「あなたたちの行動が、世界の未来を確かに変えています」
マリアは静かに続けた。
「今後も、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
蓮は頭を下げた。
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通信を終えた後カインが静かに口を開いた。
「危険な賭けだな」
「そうだな」
蓮は頷いた。
「だが隠し続けるよりはいい」
カインはしばらく黙り込んでいた。
「評議会は公になることを最も嫌う」
彼は低く言った。
「今回の公表で向こうも何か動きを見せるはずだ」
ルシアが険しい表情で言った。
「備えておかないと」
ゼノンが腕を組みながら言った。
「装備の点検、再度やっておこう。いつ何が起きてもいいように」
「頼む」
蓮は頷いた。
エマが端末を操作しながら言った。
「通信網の強化も進めておきます。情報の遅れは命取りになりかねません」
「ありがとう」
蓮は仲間たち一人ひとりの働きに感謝の念を抱いた。
蓮は仲間たちを見渡した。
灯が静かに口を開いた。
「私も、何かできることがあれば」
「無理はするな」
蓮は答えた。
「でも、お前の言葉が世界を動かしてきたのは事実だ」
灯は真剣な表情で頷いた。
「もう一度、皆の前で話したいです。今度は評議会のことについて」
ミオが静かに寄り添った。
『私も一緒に立ちます』
タクマが端末を操作しながら言った。
「世論の動向を注視しておきます。何か変化があれば、すぐに報告します」
「頼む」
蓮は仲間たち一人ひとりの顔を見渡した。
世界が新たな真実と向き合い始めていた。
ミナが端末の画面をじっと見つめていた。
「私も、少しでも力になりたいです」
彼女は静かに言った。
灯が彼女に微笑みかけた。
「一緒に頑張りましょう」
二人は並んで画面の向こうの世界を見つめ続けた。
その先に何が待っているのか、まだ誰にもわからなかった。
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第94話 完




