↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
90/100

「最深部への道」

浮遊居住区の警備は明らかに強化されていた。


ゼノンが物陰から周囲を確認した。


「予想通りだな。前回の倍近い人数がいる」


「突破できるか」


蓮が小声で聞いた。


「俺に任せろ」


ゼノンは静かに言った。


「保安部隊の巡回パターンは知り尽くしている」


四人は闇に紛れながら慎重に進んだ。


クロが背後を警戒しながら囁いた。


「今のところ気づかれていない」


ルシアが端末で警備の配置を確認した。


「巡回のタイミング、記録通りね」


「ゼノンの情報のおかげだ」


蓮は小声で言った。


途中で巡回中の保安部隊とすれ違いそうになった。


「隠れろ」


ゼノンが囁いた。


四人は物陰に身を潜めた。


隊員たちの足音が近づき、そして遠ざかっていった。


「危なかった」


クロが小さく息を吐いた。


「油断は禁物だ」


ゼノンが低く言った。


「ここから先は、さらに警戒が厳しくなる」


---


保守用通路の入り口に着くとゼノンが立ち止まった。


「ここからは以前とは違う区画を使う」


彼は壁の一部を指した。


「非常用の避難路だ。普段は使われていない」


「よく知っているな」


蓮が言った。


「隊長として、施設の隅々まで把握させられていた」


ゼノンは静かに答えた。


「役に立つ日が来るとは思わなかったが」


四人は狭い避難路へと身を滑り込ませた。


避難路は想像以上に長かった。


「まだ続くのか」


クロが息を切らしながら言った。


「もう少しだ」


ゼノンは前を見据えたまま答えた。


途中で足元がぐらつく箇所があった。


「気をつけろ、老朽化している」


ゼノンが警告した。


ルシアが慎重に足を運びながら言った。


「こんな場所まで、よく覚えているものね」


「隊長という立場は、時に厄介な記憶を強制される」


ゼノンは短く答えた。


その声にはかすかな苦笑が滲んでいた。


四人はさらに奥へと進み続けた。


---


通路の奥へ進むにつれ空気が変わっていくのを蓮は感じた。


微かなマナの振動が肌を刺すようだった。


「近づいている」


ルシアが緊張した声で言った。


「装置の中枢に」


やがて広い空間に出た。


天井まで届く巨大な構造物が、以前より強い光を放っていた。


「これは」


蓮は息を呑んだ。


「休眠状態じゃない」


ルシアが険しい表情で言った。


「明らかに活性化が進んでいる」


蓮は構造物を見上げた。


結晶と機械が融合した表面に、無数の光の筋が走っていた。


「これが装置の本当の姿か」


彼は低く呟いた。


クロが緊張した面持ちで武器を確認した。


「思ったより時間がなさそうだな」


「急ごう」


ルシアが言った。


「制御盤まであと少し」


四人は構造物の周囲を慎重に回り込みながら進んだ。


床に走る配線が脈打つように光っていた。


「まるで生きているみたいだ」


蓮は呟いた。


ゼノンが辺りを警戒しながら言った。


「油断するな。何が起きてもおかしくない」


---


クロが端末で構造物を確認した。


「制御盤はあの位置だ」


彼は一点を指した。


四人は慎重に近づいた。


ルシアが端末を接続しようとした瞬間空間に声が響いた。


「よく来たな」


全員が身構えた。


構造物の陰から一つの人影が現れた。


カインだった。


彼は以前よりもさらに痩せ憔悴した様子で立っていた。


「待っていたのか」


蓮は鋭く聞いた。


「ゼノンが妹を助けた時から、いずれこの日が来るとわかっていた」


カインは静かに答えた。


彼の視線がゼノンへと移った。


「裏切ったな」


「裏切ったんじゃない」


ゼノンは静かに答えた。


「あなたに従う理由が、なくなっただけだ」


カインは僅かに目を細めた。


「妹のことか」


「そうだ」


ゼノンは前に進み出た。


「もう、あなたの道具として使われるつもりはない」


カインはしばらく沈黙した後小さく息を吐いた。


「そうか」


彼の声には、意外にも怒りの色はなかった。


「それも一つの選択、ということか」


---


「装置を止めさせてもらう」


蓮は言った。


「できるものならやってみろ」


カインは微かに笑った。


「だが、これは私一人の意思では止められない。もう遅いんだ」


「どういう意味だ」


蓮は聞き返した。


カインは構造物を見上げた。


「評議会が、直接介入を決めた」


その言葉と同時に構造物の光が一段と強さを増した。


「時間がない」


ルシアが叫んだ。


「制御盤に触れる。援護して」


蓮は頷き武器を構えた。


「クロ、ゼノン、周囲を頼む」


「任せろ」


クロが答えた。


彼はパイルバンカーを構えながら周囲に目を配った。


「増援が来る前に決着をつけたいところだな」


「同感だ」


ゼノンも静かに構えを取った。


彼は鉄片を握りしめカインを見据えた。


「カイン様、これが最後だ」


「そのようだな」


カインは静かに応じた。


彼の目には、これまでにない諦観と、それでも消えない強い意志が同時に宿っていた。


ルシアが静かに前へ進み出た。


「兄さん」


彼女はまっすぐカインを見据えた。


「私も、あなたを止めに来た」


カインは僅かに目を細めた。


「お前まで、か」


「私は、ずっとあなたを止めたかった」


ルシアは静かに続けた。


「それだけが、私の目的だった」


カインはしばらく妹を見つめていた。


「変わったな、本当に」


彼は静かに呟いた。


「昔のお前なら、決してそんな目で私を見なかった」


「昔の私は、何も知らなかっただけよ」


ルシアは答えた。


カインは小さく息を吐いた。


「始めよう」


彼は静かに言った。


装置の中枢で、最後の対決が始まろうとしていた。


---


第90話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。