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「集まる手がかり」

隠れ家に全員が戻ったのは深夜だった。


ルシアが日誌をテーブルに広げた。


「父は評議会と接触していた。そして蓮のお父さんとも面識があった」


蓮は日誌の文字を黙って見つめた。


「工藤、という名字だけで断定はできないが」


「可能性は高いと思う」


ルシアは写真も並べた。


「これも一緒に見つかった。隣にいる人が誰かはわからない」


蓮はその写真を手に取った。


見知らぬ男の顔に既視感はなかった。


だが胸の奥が微かにざわついた。


「他にも手紙が見つかった」


クロが束を取り出した。


「差出人の名前がない。内容も暗号めいている」


蓮は一通を手に取り目を通した。


「本当だ、まるで意味が分からない」


「時間をかければ何かわかるかもしれない」


ジェイクが手を差し出した。


「解析してみる。俺の得意分野だ」


「頼む」


蓮は手紙の束を渡した。


ジェイクはそれを丁寧にスキャンし始めた。


---


タクマが端末を開いた。


「通信解析、部分的に進展があった」


彼は暗号の一部を画面に表示した。


「完全な復号にはまだ時間がかかりますが宛先の地域だけは絞り込めました」


「どこだ」


蓮が聞いた。


「北部の旧管理区画です」


タクマは地図を表示した。


「地上にはほとんど施設がない場所ですが、地下に大規模な構造物が眠っているという記録があります」


ジェイクが腕を組んだ。


「評議会の拠点、かもしれないな」


「断定はまだ早い」


蓮は言った。


「だが有力な手がかりだ」


ローレンが地図を拡大した。


「旧管理区画には昔マナ研究施設があったと記録にあります」


「今も稼働しているのか」


「表向きは閉鎖されています」


ローレンは資料をめくった。


「ですが電力供給の記録を見ると微弱ながら稼働中の痕跡があります」


タクマが頷いた。


「地下構造物との関連は十分に考えられます」


「まずは監視から始めよう」


蓮は言った。


「いきなり踏み込むには情報が足りない」


---


灯が静かに口を開いた。


「ラムさんから連絡がありました」


彼女は端末を操作した。


「非公式の収容施設、一つ候補が見つかったそうです」


「場所は」


「旧発電所の地下です。物資搬入の記録に不自然な頻度がありました」


灯は資料を全員に見せた。


「ゼノンさんの妹さんが、そこにいる可能性があります」


タクマが身を乗り出した。


「確度は」


「高くはないですが、他に有力な候補もありません」


ミオが静かに言った。


『調べる価値はあると思う』


灯が付け加えた。


「ラムさんは救出作戦に協力すると言ってくれています」


「人員を出してくれるのか」


蓮が聞いた。


「情報提供と物資の面で、とのことです」


灯は端末を閉じた。


「直接の戦闘要員は出せないそうですが、それでも十分助かります」


タクマが小さく笑った。


「ラムさんらしい判断ですね。無理はしないが手は貸す」


「感謝しないとな」


蓮は頷いた。


---


蓮はしばらく考え込んだ。


「二つの標的がある。北部の旧管理区画と旧発電所」


彼は地図を見比べた。


「同時には動けない。優先順位を決める必要がある」


エマが口を開いた。


「人命がかかっている方を優先すべきじゃないか」


「ゼノンの妹のことか」


「そう」


エマは頷いた。


「評議会の拠点は逃げない。でも人質は違う」


蓮はしばらく黙った後頷いた。


「そうだな。まずは旧発電所を調べよう」


---


ルシアが手を挙げた。


「その作戦には私も参加させて」


「危険が伴う」


蓮が言った。


「わかってる」


ルシアは真剣な目で彼を見た。


「でも、ゼノンを味方につけられれば大きい。彼を放っておく理由はない」


クロが頷いた。


「一理ある。それにあいつの実力は俺たちも知っている」


蓮はしばらく考えてから頷いた。


「わかった。ただし無理はするな」


「約束する」


ルシアは静かに答えた。


エマが腕を組んで口を挟んだ。


「ゼノンが素直に話を聞くとは限らない」


「それはそうだが」


蓮は考えながら答えた。


「妹の情報を持っていけば態度は変わるはずだ」


「賭けだな」


クロが呟いた。


「今はそれしかない」


蓮は静かに言った。


ミナという名前が確認されたことを誰かが知らせに来る様子はまだなかった。


灯が静かに言った。


「妹さんの名前、わかったんですね」


「ゼノン自身が口にした」


蓮は答えた。


「随分と葛藤していたようだった」


灯は目を伏せた。


「早く助けてあげたいです」


ローレンが別の資料を提示した。


「旧発電所の警備配置図、概略ですが手に入りました」


「非公式施設にしては厳重だな」


蓮が画面を見て眉を寄せた。


「企業も本気で隠しているということだ」


タクマが言った。


「裏を返せば、そこに何か重要なものがある証拠でもあります」


クロが図面を指しながら言った。


「侵入経路はここが一番手薄に見える」


「排水路からのアクセスね」


ルシアが覗き込んだ。


「悪くない。ただし内部の構造は資料だけじゃわからない」


「実際に踏み込んでみるしかないということか」


蓮が言った。


「慎重に、だが確実に進めよう」


エマが装備リストを確認しながら頷いた。


「静音装備の追加分もそろそろ届くはずです」


「準備は着実に整っているな」


蓮は資料を見渡しながら呟いた。


---


作戦の概要が固まり始めた。


旧発電所の内部構造を洗い出し警備の配置を確認する。


決行はできるだけ早いほうがいい。


「人質がいるなら時間との勝負だ」


蓮は言った。


「明日から準備に入る」


タクマが頷いた。


「情報収集は引き続き進めます」


会議が終わり夜も更けていた。


蓮は一人資料を見つめ続けた。


工藤という名字が記された一文が頭から離れなかった。


父が何を知り何を隠していたのか。


答えに近づくたびに新たな謎が生まれていく気がした。


ミオが静かに隣に座った。


『眠らないの』


「少しだけ考え事をしていた」


蓮は苦笑した。


「父のこと、カインのこと、評議会のこと。全部が繋がっているような気がしてならない」


『焦る必要はない』


ミオは静かに言った。


『一つずつ、確かめていけばいい』


「そうだな」


蓮は小さく頷いた。


窓の外では月明かりが廃墟を静かに照らしていた。


明日から新たな作戦が始まる。


灯がそっと毛布を持ってきた。


「ここで寝落ちしたら、風邪をひきますよ」


「そうだな」


蓮は苦笑した。


「もう少しだけ考えたら休む」


灯は微笑みながら毛布を肩にかけた。


「無理はしないでくださいね」


「ありがとう」


蓮は静かに答えた。


彼は資料を閉じ静かに目を閉じた。


---


第83話 完

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