重なる来客と連鎖する反応と
この子は一体? と気になる方はGWの観測会(前編)をどうぞ
「はあ⋯⋯」
展示会場の外から聞こえてくる楽しそうな喧騒とうらはらに、僕の気持ちは、だんだんと重くなっていた。
真理恵ちゃんがこの会場にやって来るかもしれない。
別に後ろめたい関係では無いし、たとえ部員のみんなに知られても、矢口君と高塚さんの様に、ただの幼馴染ですと紹介すればいいだけの事。
そもそも友也が真理恵ちゃんに会場の事を教えなければと思ったけれど、良かったら見に来てと友也にこの場所を教えたのは僕自身だった。
それがまさかこんな事になるなんて⋯⋯。
「さっきから元気無いけど大丈夫?」
「いや、別になんでもないですよ」
一緒に会場の当番をしていた幸田部長にも、不審がられているし、今のままでは実際に真理恵ちゃんがここに来た時は余計に勘ぐられるかもしれない。
平常心、平常心。必死に心の中で自分に言い聞かせる僕だった。
ーーそして、その時は急に訪れた。
「こんにちはー。久しぶりです」
「えっ。こ、こんにちは」
目の前には中学生くらいの女の子と、お母さんらしい親子連れ。
親しげに挨拶してくれた所を見ると、部長の知り合いなのだろうか。
「げ、元気だったかな」
「うん、今日も散歩で走ってきたよ」
「そ、それは良かったね」
なんだか部長の様子がおかしいけれど、どうしたのだろう。
会話の様子だと知り合いみたいな感じだけれども、なんだか部長の様子がぎこちない。
もしかして、知られてはまずい関係だったりするのだろうか。
それにしてもこの女の子、どこかで見た様な気がするけれど、いつの事だっただろう。
「本当はテオも連れて来たかったけど」
「う、うん。ちょっとテオ君は無理かもね。そ、そうだ、動物が好きなら生物部の展示なんかもお勧めだよ」
「うちのテオが1番だし」
「そ、そうだね」
さっきからペットらしい名前や、動物の話題が出ているけれど⋯⋯⋯。
ーー思い出した。
確か、GWの観測会の時に部長を襲った(?)レトリバーを散歩させていた女の子だ。
もしかしてあれからずっと交流があったのだろうか。
「ぼ、僕はちょっと案内してくるからここはよろしくね」
そう言って席を立つ部長、別に隠すほどの事も無いというか、普通にしていればいいのに。
あれこれと写真を見せながら解説しているその姿を見ながらそんな風に考えていた時だった。
「元気でやってる?」
⋯⋯この声は。
「結構本格的にやってるね」
「ひ、久しぶり」
「なによ、変な顔して。友也から聞いてなかった?」
「さ、さっき連絡きた所」
「ちゃんと言っておいてって言ったのに」
さっきまで部長の事を普通にしていればとか思っていたのに、これじゃあ僕も同じじゃないか。
そんな考えが頭をよぎったけれど、僕も不審者ムーブが止まらない。
そう、今度こそ本当に真理恵ちゃんが会場に現れたのだった。
「ねえ、真理恵。この人が幼馴染?」
「そうよ、うちの友也と同級生」
「仲良いんだね」
「ついでに寄っただけだし」
思わず固まる僕の目の前で、友達らしい女の子達に僕の事を紹介してくれている(?)
「そ、そちらはバスケ部の友達?わざわざこんな遠い所までようこそ」
「ちょっと、何ふざけた挨拶しているのよ」
容赦ない真理恵ちゃんの突っ込みも無理も無い。
そう言われても部長の姿を見ながら油断していた隙を突かれた僕は、完全に余裕を無くしていた。
「こんにちはー。今日は真理恵に無理矢理連れてこられました」
「ちょ、ちょっと?」
「だって今日は練習終わったら解散の予定だったし」
「なんか面白そうだから行こうよって急に言われたんだよねー」
あれ、真理恵ちゃんまで様子がおかしいぞ?
「い、いいから折角来たんだし、案内してよ」
そう言って僕の腕を強引に引っ張って立たせると、無理矢理展示物の方へと誘う真理恵ちゃん。
一緒に来た友達たちがその様子を生暖かい目で見ている様に見えたのは、僕の気のせいなのだろうか。
こうして落ち着ける暇も無く学園祭のお昼は過ぎていくのだった。
次回『積み重ねた思い出と増えた秘密と』は10月2日(金)21時頃更新予定です




