新たな目標と突然の連絡と
「それじゃあまた後で」
目の前で交わされた、まさかのやり取り。
いや、別にデートの約束とかではなく、結星先輩はただ写真部の見学に行くだけだし。
頭ではわかっているのに、島本先輩とこの後会うというだけで落ち着かない。
予定が無ければ、僕も勉強の為にとか何とか言って一緒に行けたかもしれないけれど、僕の展示当番は、この後結星先輩の組との入れ替わり。
せめてもう少し戻って来るのが遅かったならば、余計な事なんて知らずに済んでいたかもしれないのに⋯⋯。
「それじゃあこの後はよろしくお願いします」
そんな事を考えている間にも時間は過ぎて、結星先輩と宮前先輩は、幸田部長と僕に後を任せて展示会場から出て行った。
「この時間帯はみんなお昼ご飯食べたりしているから、あまり人も来ないだろうし、ゆっくりしていていいよ」
そう言いながら自分も用意していた軽食を食べ始める部長。
さっきまで友也と軽く食べていた僕は、なんとなく間が持たないのと、少し落ち着きたい気持ちもあって、中断したままになっていたさっきの話題をもう一度聞いてみる事にした。
「部長、さっきの話の続きなんですけど」
「うん?」
「今度の企画は僕達1年生がというやつです」
「ああ、その事ね。学園祭が終わると僕達は修学旅行の準備があるから」
そうか、2学期って色々と忙しいんだな。
部長の説明によると、この修学旅行で2年生が不在の期間に1年生は秋の観測テーマを考えて、実際の計画をたてるのが恒例となっているらしい。
そうか、夏休み中ほどでは無いけれど、結星先輩とまたしばらくは会えなくなるのか。
「もちろん旅行から帰ってきたら僕達も確認するから、そんなに心配する事はないよ」
僕の顔色が不安気に見えたのか、そんなフォローをしてくれる部長。
まさか結星先輩の事を考えていたとは言えるはずも無く、あいまいに笑ってごまかす。
「いや、大丈夫ですよ。僕達だって色々勉強してきましたし」
そうだ、僕だって成り行きだったとはいえ、天文部に入部してからのこの半年ほどで、結星先輩の事ばかり考えていた訳では無い。
逆に僕達1年生だけでどこまで出来るのか、そして先輩達に認めて貰える様にならなければ。
結星先輩の事も気になるけれど、新しい目標の話で少しだけ胸のモヤモヤが晴れかけた、その時だった。
『今、展示会場?』
あれっ、友也からだ。
『そうだよ、1時半までが担当だから』
『真理恵が行くらしいんで場所教えておいたからよろしく』
⋯⋯はあ?!
あまりにも予想外のメッセージに、再び混乱し始める僕の脳内。
いや、確かに他校の制服姿も途中で見かけたけれども、真理恵ちゃんが来る可能性なんて思いもしなかった。
友也だって、一緒にいる時には全然そんな話題を口にしなかったのに、よりによって逃げ場所の無いこんな時間帯になんで⋯⋯。
『もしもし、真理恵ちゃん来るの?』
『ん?アイツ今日は朝練行くって出ていったから俺も知らなかったし』
思わず通話で確認しなおしたけれど、やっぱり間違いでは無さそうだ。
まさか、別れ際に天文部の展示会場を教えておいたのがこんな事になるなんて。
「どうしたの牧田君」
「いや、ちょっと知り合いが来るかもしれないという連絡で⋯⋯」
挙動不審な僕の様子を見て、心配そうな様子の部長。
出来るだけ、普通に返事をしたと思うけれど、大丈夫だったかな。
部長にだったら真理恵ちゃんの事を知られてもみんなに言いふらしたりはしないだろうけれど、問題は真理恵ちゃんの目的だ。
いや、単純に遊びに来たついでかもしれないという甘い期待と、今頃になってわざわざ顔を見せにくるという事は、何かあるのでは無いかという不安で全然落ち着かないままに時間は過ぎていくのだった。
シルバーウィークお楽しみいただけでしょうか
次回『重なる来客と連鎖する反応と』は通常通り9月25日(金)21時頃更新予定です




