少しの決意とまさかの展開と
「それじゃあ、そろそろ僕は戻るから」
「はいよ」
こうして友也と別れた僕は、まだ時間に余裕はあったけれども天文部の展示に戻る事にした。
今の時間の担当は結星先輩と宮前先輩だから、おかしな事は起こらないだろう。
移動する先々で色々有りすぎたから、少し休みたかったという気持ちと、今から行けば久しぶりに結星先輩とゆっくり話せるかもしれない、そんな下心も多少はあった。
振り返ってみると、合同観測会が終わってからは、佐藤先輩の離脱や、展示の準備が忙しくて、会話の機会は少なくなっていた。
いや、本当は真理恵ちゃんと出かけた遊園地で、はち合わせしたあの日から、気まずくてあまり話しかけられなかったというのもある。
そしてもう1つ。
準備が進んでいく中で、島本先輩と親しげに話している姿を見ていると、なんだか気後れしてしまっていたからだ。
このまま中途半端な気分のままではいたくは無いし、こうして一緒に活動出来るのは、来年のGWまでだ。
そう考えると残された時間はあと半年と少し、その時間を少しでも無駄にはしたくない。
今日がそのきっかけになれば、そんな気持ちで会場の方に戻ると、中からは、楽しそうな宮前先輩の笑い声や、喋り声が聞こえてきた。
朝一はかなり静かめだったから本当に来てもらえるのだろうかと思っていたから、なんだかんだで賑わいをみせている様子に少し胸を撫で下ろす。
頑張って用意した展示だから、楽しんでもらえるといいな。
そう思いながら会場の中に入ると、結星先輩と宮前先輩が来場者と談笑している姿と、そしてもう一人。
「あれっ、まだ時間には早いよ」
あれっじゃ無くて、逆に幸田部長こそなんでいるんだろう。
「部長こそ、お昼ご飯とか大丈夫ですか?」
「うん、パンとか買ってあるから」
もしかして、ここで1日中過ごすつもりなんだろうか。
「僕も戻ってきたし、少し休んできたらどうですか?」
少しは結星先輩と居られるかと思ったら、思いがけない邪魔も⋯⋯、では無くて当たり前の様にいる幸田部長。
ここまで来た以上、まわれ右をする訳にもいかず、仕方なく僕は部長の隣の席に腰を下ろしたのだった。
「他の所はどんな感じだった?」
「えっと⋯⋯、イベント会場とかは盛り上がっていましたね」
まさか遠山先輩が、わんこラーメンで個人記録を作っていたなどと報告出来る訳もなく、当たり障りなくお茶を濁す僕。
「それにしても、牧田君がこんなに部活に熱心だとは思わなかったよ」
すいません、本当は結星先輩が気になって早めに戻ってきただけなんです。
「この調子なら次の企画も安心だね」
次の企画?
そういえば、そろそろ秋の星空が見頃になるのかな。
半分上の空の僕には気付かずに部長は説明を続ける。
「今度は君達が主役の番だからね」
確か寒い時期の方が空気が澄んで、観測しやすくなるのだったっけ。
⋯⋯えっ!?
「部長、僕達が主役って」
「うん、学園祭が終わった後にまたあらためてみんなに伝えるけれど、次の観測会のテーマは君達1年生に企画してもらうからね」
僕たち1年生だけで?
予想外の部長のひと言に理解が追いつかなくなった時に、その人はやって来たのだった。
「こんにちは。お邪魔します」
「やあ、島本君。おかげで今年も良い展示が出来たよ」
「僕達はただお手伝いしただけですから」
なんで島本先輩がここに?
いや、写真部に協力してもらって展示パネルが完成したのだから、別に変な事では無いのか。
「あら、わざわざこちらにまで」
僕達のやり取りに気付いたのか、結星先輩もこちらにやってきた。
「うん、アドバイスはしたけれど、やっぱり実際の会場が気になってね」
「ありがとう。やっぱり写真の見せ方とかは私達じゃよく分からない事もあるから」
「そうだね。もし良ければ、写真部の展示も見てくれればもっと参考になるかも」
「そうね。この後は、私も空き時間あるから⋯⋯」
えっ、結星先輩?
「じゃあ、案内するからまた後で」
目の前で交わされた結星先輩と島本先輩の約束で、僕の頭はますますパニックになったのだった。
今週はもう一話!
『新たな目標と突然の連絡と』は22日(火)21時頃更新予定です




