呼び出しと悪夢の再来と
「えーっと⋯⋯」
無事(?)に高塚さんのお使いを終えた後、僕はあらためてパンフレットを片手に校内を歩いていた。
出展しているのは、ほとんどが僕達みたいなクラブ活動の発表や展示、後は2年生が中心になって企画した、イベントやアトラクションが色々とあるらしい。
幾つか気になる所はチェックしてあったけれど、僕の担当時間は12時からなので、先に食べる物も確保しておきたい。
そんな考えもあって例のポップコーンを買ったのだけれど、あれは非常食過ぎる予感しかしなかった。
そんな訳で、まずは出店コーナーや、フリーマーケットの会場になっているグラウンドの方へ向かおうとしている時にスマホが鳴った。
『今どこよ?』
友也だ。
『フードコート見に行くところ』
『部活の方はいいのか?』
『担当は昼からだよ』
『ちょうど良かった。空いてるなら合流しない?』
ちょうど良かったってなんだろう、そう思いながら合流場所に向かうと、ヒマそうにしている友也の姿が見えた。
「おっ、来たな」
「なんか面白い事でもあった?」
「いや、ヒマしてるのならこれに誘おうかなと思って」
そう言いながら、何かの申し込み用紙を差し出してきた。
「⋯⋯わんこラーメンタッグマッチ?!」
「腹ごしらえも出来るし、一石二鳥だろ?」
一石二鳥の意味がわからない。
「優勝商品は、1年間優待パスもあるぞ?」
うん、ラーメンは少し前にかなり優待されたから。
「しかもあの『遠山』のラーメンが食べ放題!」
普段は帰宅部なのに、なんで体育会系みたいなノリなのか。
そして『遠山』と聞いて蘇るあの日の悪夢、これはもう絶対にこの間の、遠山先輩の伯父さんの店に間違い無い。
「やっぱり、棄権してもいいかな」
「なんだよ、付き合い悪いな」
いや、そうでは無くて⋯⋯。
「とりあえず、会場だけでも見に行こうぜ」
なんでこうも次々と難題が降り掛かってくるのか、そう思いながらも、半分友也に引きずられる様にして僕は会場へと向かったのだった。
「さあっ、盛り上がって参りましたっ! 次の挑戦者は、なんと店長さんの実の甥と部活の後輩コンビっ! 果たして、その絆で記録更新出来るでしょうかっ!」
「?!」
やたらとノリの良い実況の声と、なんだか聞き覚えのあるプロフィール。
慌てて、特設のステージ上を見上げると そこに居たのは間違いなく遠山先輩と、大山君の姿だった。
「よく来たな!! 渉!!」
「おう!! やるからには本気だぜ!!」
「よしっ!! お前の本気見せてみろ!!」
何故かヒートアップする2人のやり取りに盛り上がる会場と対照的に、1人だけ青ざめた顔の大山君。
もしかして、午後からの会場当番だけでは無く、1日中遠山先輩に付き合わされているのだろうか。
色々と突っ込みたい思いは、もちろんステージ上まで届くはずは無く、僕はただひたすら大山君の無事を見守る事しか出来なかった。
あらためて、ルールを確認すると、制限時間10分の間に食べた量を競うらしい。
1杯のサイズはお茶碗サイズだけれど、だいたい10杯で普通のラーメン1人前位だろうか。
ちなみにここまでの記録は、2人合わせて、67杯だとか。
単純に1人、3人前以上は食べている計算だけれど、どう考えても勝てる気がしない。
「さあっ、残り時間2分を切ったっ! どこまで記録を伸ばせるのかっ!」
「先輩、もう無理です」
「心配するな!! そんな時は味変だ!!」
涙目で限界を訴える大山君に、サムズアップで返す遠山先輩。
そういう問題では無いと思うのですけれど⋯⋯。
結局、遠山先輩は1人で36杯の個人記録を残したのだけれど、大山君は16杯で、無念の敗退となったのだった。
「なあ、一輝。天文部って体育会だったのか?」
「いや、遠山先輩が特別なだけで⋯⋯」
そして、あまりにもレベルの違う現場を目にした僕達は、大人しく出場を諦めたのだった。
次回『小さな疑問と深まる疑惑と』は9月18日(金)21時頃更新予定です




