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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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同じ景色、違う風景

 幸田部長が編集していた夏休み中の部活の記録。


 その中にあった、ショートステイでゲスト参加していた、ステラだけが収められたフォルダ。


「やっぱりあのスイカ割りの時に⋯⋯」


「この間の観測会の時も妙に張り切っていたよな!!」


 それを見つけた宮前先輩と高塚さんが早速いじりだすと、遠山先輩まで参加し始めた。


 普段の部活より活き活きしているのは、気のせいだろうか。

 

 他の1年生組ーー僕と大山君、矢口君の3人は、下手に先輩いじりに参加出来るわけも無く、とりあえず騒ぎを眺めていた。


「あれっ、そう言えば佐藤先輩は?」


「ちょっと用事があるって」


 クール系に見えて、意外と遠山先輩と組んで悪ノリする事もある佐藤先輩。


 情報処理部と掛け持ちしている関係で役職は無いけれど、知識や経験は幸田部長とツートップなんだよな。


「佐藤君はまだだけど、そろそろ学園祭の展示企画を進めましょう」


 とりあえずこの場を収めようと、結星先輩が今日のミーティングについて説明を始めた。


「今年は夏合宿の他に合同観測会の写真もあるから素材は一杯ね」


「ステラの写真も一杯だし〜」


「⋯⋯」


 うん、そろそろ幸田部長のライフがマイナスになっている気がするぞ。


 



その後は流石にみんなで真面目に写真を選んだり、解説の原稿作りの担当やスケジュールを決めていた頃だった。


「悪い。遅くなった」


 そう言って部室に入ってきた佐藤先輩だけれど、なんだか様子がおかしい。


 打ち合わせの確認の最中も「ああ⋯⋯」とか「うん⋯⋯」みたいな生返事をするだけで、半分上の空のままに見える。


 幸田部長の方は多分問題無さそうだけれど、佐藤先輩までこんな調子で大丈夫かな。


 色々気にはなったけれども、僕も自分の問題を解決しなければ⋯⋯。




 ひとまずこの日は始業式だけだったので午前中に解散となり、帰宅した僕は友也に連絡を取ってみる事にした。


「もしもし?」


「おう」


 朝とは打って変わって気だるげな友也の声。


 人の気も知らないで呑気なものだと思ったけれど言葉を続ける。


「あのさ、朝の話なんだけど⋯⋯」


「ああ、あれね」


「ちょっと!シャワー使った後はちゃんと換気しといてよ」


「やべっ」


 ノックの音もそこそこに誰かが入って来た気配がしたと思ったら、いきなりの真理恵ちゃんの怒鳴り声。


「大体最近たるんでいるのよ」


「帰宅部でもいいけど、もう少しちゃんとしたら」


 あーあ、完全に滅多打ちだな。


「悪い、また後で」


「ちょっと、電話してたなら早く言ってよ」


 そんな会話を最後に突然切られた通話。


 しばらく呆気にとられていた僕だったけれど、気を取り直して、割り当てられた写真についての原稿に取りかかり始めた。


「まずはこれか⋯⋯」


 一際目立つ赤い星とその上の方に並ぶ3つの星、下の方へたどっていくと、ゆるやかなS字を描く曲線。


 初心者の僕でも知っていたけれど、写っているその姿は僕の知っているものとは全然違っていた。


 日本でもよく知られているさそり座の1等星、『アンタレス』。日本でもT字型の頭の部分はよく見えるけれど、尻尾の方のS字型の部分は地平線に隠れている事も多く、なかなか全身を見られる機会は少ない。


 それに比べて、天頂高くへ立ちのぼっていく様にも見えるその姿は、まさしく怪物サソリの姿に見えた。




「見え方か⋯⋯」


 あの日、僕は久しぶりに幼なじみと遊ぶのも良い気分転換になるか、くらいの感覚だった。


 振り返って見ると、偶然のアクシデントからの流れだったとはいえ、その強引さに少しは気付けば良かったのかもしれない。


 そういえば、夏休み前の最初の再会の時から色々近況を気にしていたっけ⋯⋯。


 明るくて、さっぱりとした性格だとばかり思っていたからこそ気付けなかったのかもしれない。


 僕は目の前の写真を前にしたまましばらく動き出す事が出来なくなっていた。


 


 

次回『決意の放課後』は6月12日(金)21時頃更新予定です

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