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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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波乱含みの始業式

 それは夏休みが終わった最初の朝。 


「おーい、一輝」


「おはよう、友也」


 まだ夏休み気分が抜けないままにぼんやりと歩いていた僕に声をかけてきたのは、幼なじみの友也だった。


 同じ高校に通っているから時間が合うのは不思議では無いけれど、声をかけてくるのは珍しいな。


「お前、彼女いるのか」


「えっ!?」


 ずいぶん前にも同じ様なやり取りをした気がするけれど、あれは図書館で結星先輩の事を勘違いした時だったっけ。


「いないけれど、何でだよ」


 返事を返すと、なんだか妙に口ごもっている。


「いや、ちょっと⋯⋯。」


 夏休み中は結局ずっと部活ばかりだったし⋯⋯。


 待てよ⋯⋯。


「だったらいいけど⋯⋯。いや、やっぱり⋯⋯」


 相変わらずおかしな様子の友也と歩きながら、僕は思い出してしまっていた。


ーー真理恵ちゃん。


 忘れていたというよりは、思い出さない様にしていたと言った方が正しいかもしれない。


 思い返せばこの前の観測会の時、結星先輩とはあまり会話が無かったのも、無意識に避けていたからかも。


「いや、だって、あれは⋯⋯」

 

 気付けば僕は、友也よりも挙動不審になっていた。


「なあ」「ねえ」


 ようやく2人同時に口火を切りかけた時には、校門が目の前に迫っている。


 周りにも登校中の知り合いも見えているし、なんとなくこのまま話を進めるのは気まずいかもしれない。

 

「今度少し話をしないか」


「部活次第だけど、連絡するよ」


 そう言って別れたけれど、やっぱり真理恵ちゃんの事だよな⋯⋯。


 


 朝から落ち着かない気持ちのまま、ぼんやりと始業式を終えた僕は、とりあえず部室の方に顔を出す事にした。


「お疲れ様です」


「ああ、お疲れ⋯⋯」


 そこには気のせいなのか、こちらもなんだか様子のおかしい幸田部長。


「まだ皆さん来ていないんですね」


「うん、そうだね⋯⋯」


 普段からあまり喋るタイプでは無いけれど、今日の様子はいつもよりも妙に口数が少ない気がする。


 どうやら合宿と、この前の観測会の写真や動画をチェックしていたみたいだ。


「結構、沢山ありますね」


「うん、そうだね⋯⋯」


 夏の大三角形や、流星群といった星空の他にも、流しそうめんやスイカ割りの時の様子まできちんとフォルダ別に整理されている。


 日常風景とか、いつの間にこんなに撮っていたのだろう。


「これって誰が撮っていたのですか?」


「うん、そうだね⋯⋯」


「⋯⋯部長?」


 さっきから何を聞いても同じ返事ばかりというか、心ここにあらずといった様子。


 もしかして夏休み中のイベント続きで、少し夏バテでもしているのかな。


 そんな事を考えながら、しばらく編集作業を手伝っていると、やがて他の部員達も顔を出し始めた。


「久しぶりっ」


「この前会ったばかりでしょ」


「あっ、この写真欲しいっ」


「えっ、見せて見せて〜」 


「あっ、ちょっと⋯⋯」


 編集していた画面を目ざとく見つけた高塚さんと宮前先輩達が、幸田部長からマウスを奪ってパソコンを弄りだす。


「星雲ってこんなに綺麗に写るんだっ」


「ちょっと、わたしのスイカ割り盗撮してたの誰〜」


「おう!!俺の獲物も写っていたのか!!」


「高木先生や私、後は幸田君も撮っていたのよ」


 星空の写真は幸田部長と佐藤先輩を中心にみんなでセットしていたけれど、高木先生と結星先輩が副部長として中心になり、みんなの活動風景も撮っていたのだとか。


「あれっ、このフォルダっ」


「あっ、それは⋯⋯」


 さっきまでみんなが思い出を振り返っているのを眺めていた幸田部長が急に慌て出す。


「ねえ、これって⋯⋯」


 『S』とだけ書かれたフォルダの中にはステラの画像だけが日付順に並べられていたのだった。


「部長?!」


「いや、こ、これは違うよ。ほら、思い出をまとめて送れる様に整理していただけで決して⋯⋯」


「「決して?」」


 面白半分に幸田部長を問い詰める宮前先輩と高塚さんを見ながら、真理恵ちゃんと遊園地に行った事や、ましてステラにハグされた事は絶対に知られてはいけないと思う僕だった。


 

 

次回『同じ景色、違う風景』は6月5日(金)21時頃更新予定です

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