◯◯計画始動
「久しぶり」
「焼けたねー」
「課題進んでる?」
お盆明けのある日、僕たちは久しぶりに部室に集合していた。
合宿から半月くらいしか経っていないのに、少し懐かしい気持ちと同時に落ち着くこの空気感。
「久しぶりね、牧田君」
「お、お久しぶりです倉野先輩」
少し挙動不審になりかけたけれど、当然結星先輩も来ている訳で⋯⋯。
「あら、少し背が伸びた?」
「えっ」
そう声をかけられ、少し上目使いに僕を見るそのの姿に思わずどきりとする。
一瞬言葉が詰まったその間に、先輩は他の部員にも声をかけに行ってしまい、それ以上の会話は続かなかった。
別にいつも通りの風景だったけれど、どこかすれ違いの様に感じたのは僕の気のせいなのだろうか。
「それではミーティングを始めます」
全員が揃った所でいよいよ計画の説明が始まった。
「ね〜。今回の計画の名前とかどうする〜」
「名前?」
「折角だからあった方が盛り上がるかなって思って〜」
いきなり予想外の話題を持ち出したのは宮前先輩だった。
「夏合宿リモート編なんてどうかなっ」
「夜空のかけ橋大作戦とかは?」
「遠距離スターライトデート、みたいな〜」
「遠くて近い夜空の下で計画」
「地球丸ごと観測隊はどうだ!!」
「離れていても一緒だよ、とか」
「プロジェクト・スターリンク」⋯⋯。
ネタっぽいのからロマンチックなものまで、それぞれが思いつくままに好きな事を言い出す。
「これ、どうしよう⋯⋯」
候補名を黒板に書き出していた結星先輩も苦笑いだ。
「みんな違って、みんないいだねっ」
どこかで聞いた事のある高塚さんのセリフだけれど、確かにみんなの思いが伝わってくる。
だけれど、今のままだと名前を決めるだけで今日が終わってしまいそうな気がしてきた時だった。
「このままだときりが無いので、好きなフレーズを書いてこの箱に入れて下さい」
そう言って幸田部長が空き箱を持って来た。
なるほど、投票して、ランダムで抽選ってわけか、流石頭脳派らしいアイデア。
「これって、いくつ書いても良いの?」
「多すぎても困るから3つくらいまででね」
「ちえっ」
組織票は当然不正だよね。
とりあえず僕も思いついたフレーズを幾つか書いて投票する。
「それじゃあ、開票します」
とりあえず出揃った所で、幸田部長が投票用紙を適当に取り出して机に並べた。
『遠くて近い』 『夜空に願いを』 『プロジェクト』 『かけ橋』 『計画』 『南の空へ』
結構いい感じじゃないかな。
「えっと⋯⋯。『遠くて近い南の夜空へかけ橋をプロジェクト』⋯⋯みたいな?」
「少し長くない?」
「ラノベのタイトルみたいだねっ」
「もう少しシンプルに『南の夜空へかけ橋を計画』なんてどうだろう」
「俺の観測隊がっ!!」
「スターライトデートも無かった〜」
⋯⋯えっと今日の本題はなんだったっけ。
「それでは『夜空のかけ橋計画』の観測テーマについてですけど」
あっ、強引にまとめた。投票した意味は一体なんだったのか。
そんな考えが少し頭をよぎったけれど、このままじゃ進まないし⋯⋯。
あらためて僕達は夏休み最後のイベントに向けて、計画をまとめていく事にしたのだった。
「よしっ、これで行こう」
月とアンタレスの接近、オーストラリアの天の川、色々なアイデアが出たけれど、今回僕達が選んだ観測テーマは金星。
今の季節は、太陽と金星の距離が最も離れる時期らしく、観測するには最高の条件なのだとか。
「東方最大離角って言うのよ」
そう言って解説してくれる結星先輩の姿を見ていると、また少し胸の奥が騒ぎそうになるけれど、今はそんな事を考えている場合では無い。
「それじゃあステラに連絡してスケジュールを確認しておくわね」
「それじゃあ、あらためて『夜空のかけ橋計画〜日本とオーストラリアをつなぐスターライトデートナイト〜』の成功を祝ってかんぱーい」
宮前先輩、いつの間にか、勝手にサブタイトル増えてますけど?!
という事で次回はいよいよ本番
次回『つながる夜空』は5月15日(金)21時頃更新予定です




