不意打ちがいっぱい
「ねえ、少し休憩しよう?」
僕達は迷宮を脱出した後、ショップコーナーをのぞきながら散策していた。
「それにしても、一輝があんなに積極的だったなんて、ちょっと見直した」
「いつまでも子供のままの訳無いでしょ」
まさか結星先輩とニアミスしたから先を急いだなんて、とても言えるはずが無い。
「それもそうね。私達、もう高校生なんだし⋯⋯」
気のせいか少し寂しそうに笑う真理恵ちゃん。
僕の記憶の中では、あまり見た覚えの無いその様子は、少し意外だった。
「なによ、急に黙っちゃったりして」
「なんでもないよ⋯⋯」
たまに会う従姉妹達よりも近い存在だった真理恵ちゃん。
進学先が分かれて偶然再会するまでは、連絡をとる事も無かったけれど、いつの間にかずいぶんと女の子らしくなっていたんだな。
結星先輩の事はもちろん気になってはいるけれど、宮前先輩や高塚さん達と部活で会う時とは違う、なんだか落ち着かない気持ち⋯⋯。
「ねえ、これなんかどうかな?」
声をかけられて我に帰ると、真理恵ちゃんが小さなグッズを僕の目の前に差し出していた。
「⋯⋯ストラップ?」
「⋯⋯今日の記念に⋯⋯みたいな⋯⋯?」
「記念⋯⋯」
「えっと、折角誘ってくれたんだから、ちょっとしたお礼よ」
少し早口になりながら手早くストラップを買って、僕に手渡してくる真理恵ちゃん。
その勢いにのまれてストラップを受け取った、その時だった。
「Howdy カズキ!」
「「?!」」
この声は⋯⋯。
「もしかして、牧田君?」
⋯⋯間違い無い。
恐る恐る振り向いた僕の目に映ったのは、こちらに手を振りながら向かってくるステラ。
その後からいぶかしげな様子でこちらを見ているのは言わずとしれた結星先輩⋯⋯ですよね。
「ねえ、一輝。あの人達って⋯⋯」
どうやら真理恵ちゃんも結星先輩の事を思い出したみたいだ。
「カズキ デート ナウ?」
「えっと⋯⋯」
幼馴染? ガールフレンド? 友達?
「始めまして。私は真理恵よ」
「ステラ デス」
戸惑う僕をよそにコミュケーションを取り始める真理恵ちゃんとステラ。
「ごめんね。お邪魔しちゃったかしら」
どうしていいのかパニック状態の僕に遠慮がちに声をかけてくる結星先輩。
「邪魔なんて、とんでも無いですよっ!?」
突然足元に謎の痛み。
そっと確認すると真理恵ちゃんのつま先が僕の足の上にのっていた。
「どうしたの?」
「いや、なんでも無いですよ」
結星先輩を心配させる訳にもいかずに笑って誤魔化しながら、そっと足を引く。
「こんな所で会うなんて偶然ですね」
「ステラの帰国前に思い出作りしてたのよ」
そうか、もうオーストラリアに帰っちゃうんだ。
一緒に過ごしたのは、夏合宿の僅かな時間だけだったけれども、なんだか寂しいな。
「ニホンノ アミューズメントパーク タノシイデス」
そう言って楽しそうに笑うステラ。
「良い日本の休日楽しんでいってね。」
そう言うと真理恵ちゃんは僕の方に向き直って言葉を続ける。
「邪魔しちゃ悪いから、そろそろ行こうか」
笑顔なのになんだか寒気を感じるのは何故だろう⋯⋯。
「カズキ タクサン アリガトウ Don't forget me」
「ステラも元気でね」
そう言ってステラと握手しようと伸ばした手が掴まれて、そのまま引き寄せられる。
「?!」
「「!!」」
太陽みたいな香りと少しだけ柔らかくて温かなぬくもり。
気が付けば僕はステラにハグされていた。
「ちょっ!」
そんな声が聞こえた気がしたけれど、あれは真理恵ちゃんだったのか結星先輩だったのか。
その後、笑顔で手を振りながら去っていくステラと結星先輩を見送りながら、僕と真理恵ちゃんはしばらく佇んでいた。
「なんだか、疲れちゃったわね。そろそろ帰ろうか」
「うん、そうだね⋯⋯」
気のせいか少し口数が少なくなった真理恵ちゃんとの帰り道、僕はあまりにも色々な出来事があった1日を振り返りながら上の空になっていた。
「あっ、一輝」
それはちょうど帰り道が分かれる交差点に差し掛かった時。
「頭に何か付いてる。取ってあげるから少し頭を下げて」
そう言われて少しうつむいた僕の頬に少しだけ柔らかい感触が触れた様な気がした。
「取れたわよ。今日は楽しかった。じゃあね」
急に早口で別れを告げながら去っていく真理恵ちゃん。
もしかして、今のは⋯⋯。
今夜は色々と眠れなくなりそうな予感がした僕だった。
真相は一体?
⋯⋯なのですがしばらく部員達を置き去りにしている間に新たな展開が
次回『なやみごころ、はずみごころ』は5月1日(金)21時頃更新予定です




