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成り行き天文部員牧田君の日常 〜愉快なセンパイを添えて〜  作者: 甘木 


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すれ違いのラビリンス

「なるほど、途中の謎を解いて進んでいけばいいのね」


 そう言うと、真理恵ちゃんはさっさと歩きだした。


「えっ、正解ルートわかったの?」


「こういうのはとりあえず進んで行けばなんとかなるでしょ」


 ⋯⋯まさかの力技だった。


「確か左手を壁につけて進んで行くとかいう攻略法があったよな⋯⋯」


「ちょっと、壁なんか見つめてどうしたの?早く行くわよ」


「こうして進んでいけば、確実に脱出出来るはずなんだけど」 


「何言ってるの?確実にわかる事なんて面白く無いじゃない。」


「えっ!?」


「正解よりも頭空っぽにして、楽しむ事が大事じゃない?」 


 真理恵ちゃんのその言葉は、衝撃的だった。


 あれこれ考えるよりもただ楽しめばいい、確かにその通りかもしれない。


「ほらっ、さっさと行くわよ」


 こうして真理恵ちゃんに引きずられる様にして僕たちは進み始めた。


 途中、簡単なクイズに答えて正解ルートを探したり、平衡感覚を狂わせる通路なんかもあったりしたけれど、

ほぼ順調にクリア。


「これって結構いいタイムなんじゃない?」


「もしかしてランキング入りも狙えるかな」


 少し鼻歌を歌いながら上機嫌の真理恵ちゃん。


 つられて僕もあわよくば、なんて調子のいい事を考えてみたりする。


「次は⋯⋯扉の間?」


 どうやら四方向の壁に扉がついていて、正解を選んでいけば脱出出来るらしい。


「こんなの開く扉を開けて行けば何とかなるでしょ」


 そう言って、真理恵ちゃんは手当たり次第に扉を開けて進んで行った。


「ねえ、この部屋さっきも来たっけ?」


「えっと、そうかも⋯⋯」


 最初は簡単そうに見えていたのだけれど、途中で形やサイズの違う部屋が組み合わされていて、僕達は完全に進む方向がわからなくなっていた。


「なんで三角形や五角形の部屋があるのよ」


 そんな事言われたって、迷路なんだし⋯⋯。


「それに押し戸と引き戸を混ぜるなんて建築基準法違反だわ」


 うん、普通の家でも両方あるかもしれないよ⋯⋯。


「だいたい、通り過ぎたらオートロックにするからいけないのよ」


 ⋯⋯開きっぱなしだとすぐクリア出来ちゃうからでは?


 そんな事を考えながらも当然口には出せずに進んでいた時だった。


「Open Sesame! 」


 ずいぶん大きい声だったけれど、インバウンドのツアーとかもあるのかな?


「⋯⋯テ⋯⋯ラ、呪文ではドアは開かないわよ」


 ⋯⋯あれっ、この声?!


「No! ドアー タクサンデス」


 このどこかで聞いた事のある、たどたどしい日本語は⋯⋯。


「慌てないで、リラックスしていきましょ」


 そしてこの優しい聞き慣れた声、近づいてきたからか、その声がはっきりと聞き取れる。


「ユラ オトナ デス」


 間違いない、結星先輩とステラだ。


 まさかこんな場所でニアミスなんて、と言うか真理恵ちゃんと一緒の所を見られるのは非常に気まずい。


「どうしたの?急にそわそわして」


「えっと、うん、ナンデモナイヨ」


「変なの」


「ほら、早く脱出しないとランキング載れないでしょ」


 そう言うと、僕は手当たり次第に周りを見渡した、落ち着け、絶対どこかに正解があるはずだ。


「もしかしてトイレ行きたくなったとか?」


 それは正解じゃないよ真理恵ちゃん。


 思わず脱力して壁に手をつこうとしたその瞬間だった。


「あれっ?!」


「ちょっと、一輝!?」


 壁に触れたと思った瞬間、僕の身体が支えを失ったかの様に一回転して前へと進む。


 そんな僕の目の前に現れた光景は、先へと続く通路だった。


「まさか壁に見せかけた回転扉だったなんてね」


 わかってみれば簡単な仕掛けだけれども、目の前の扉ばかりに気を取られていた僕達にとっては、完全な盲点だった。


「とりあえずクリア出来てよかったわね」


「よし、次はどこに行こうか」


「何よ、急に積極的になって」


「ほら、時間無いから急いで周らないと」


「⋯⋯やっぱり変なの」


 もちろん本当の理由を言える訳も無く、愛想笑いで誤魔化す僕だった。



 

 


次回でデート編完結ですが⋯⋯

『不意打ちがいっぱい』は4月24日(金)21時頃更新予定です

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