-【8-2】-少し性癖が歪んだ
笑いながら鼻水を手で擦り上げるリュンクに、
アテテロは「ばっちぃなぁ」とハンカチをあてがう。
リュンクの心は、何だかポカポカと温かい。
「へへへ」と惚けるリュンクの背後から
何者かが近づいたかと思えば、
目の前のテーブルの上にカコンと何かを置いた。
リュンクが反射的に顔を上げると、
一際大きな影が彼の視界を遮って佇む。
「ほれ、無くした水分を補給しとけよ」
野太い声と、天井に手が届きそうな大きな体、
声の主は、先ほど何処かしらに消えたオーケンで、
早々に用事を終えて帰って来たようだ。
ふと彼が何かを置いた机の上を見ると、
木製のコップに入った二人分のジュースがタプタプと揺れてるのが見える。
「オーケン様‥もしかして‥わざわざこれを買いに?」
アテテロは、ハンカチで鼻をスリスリしながら
まん丸な目を大きく開いている。
「ん?‥いいや。
そういう訳じゃ無いさ。
用事のついでだよ」
「ありがとうございます!」
そういうや否や、アテテロは両手でコップを持つと
ストロー状の木の管を、嬉しそうな顔でちゅうちゅうと吸い上げ一息ついた。
「‥‥‥‥」
オーケンは、ああ言ったが
リュンクには彼の心中が知れる。
用事があると席を外したのは、
リュンクとアテテロを二人きりにして
お互いの遺恨を解消させようと言う彼の計らい。
普段は大雑把で、下品で、荒っぽい性格をしている癖に、
人の弱い部分を埋める事だけは妙に鼻が利く。
偏にこれが彼の人間性なのだ。
リュンクや、アテテロに起こった最近の境遇に、
思いを馳せている者でなければ
こういう気の使い方はできないだろう。
リュンクは「この人が指導者に選ばれたのはこういう部分か」と感心しながら、
乾いた喉を潤そうと、なみなみ注がれたジュースに口を付けた。
ドスっ!
「ぐぷっ!?」
そして、不意に脇を小突かれ
ジュースは口から溢れ床に滴る。
「自分を否定する気持ちと和解するのは簡単な事じゃ無い。
よく逃げなかったな。立派だぞ、リュンク。
まぁ〜俺から言わせれば、まだまだ豆粒小僧だがなぁ?」
「‥オーケン‥どうしてそれを‥」
リュンクは、オーケンに胸の内を明かした記憶はない。
自分の中でも整理のついていない思慮、
悩みとして告げようにも
今のリュンクには、上手く言葉にできない。
それにも関わらず、自己嫌悪に陥りながら、
頭を悩ませていた内容までこの人には分かっていたのか。
リュンクは、うまく言葉にできない感情を得る。
自分が何かに思い悩んでいる事を誰かが理解してくれている。
それを肯定するでもなく、否定するでも無く
ただ干渉せずに見守ってくれている。
ただそれだけの事なのに、
言い表せない勇気じみた感情になる。
この名前のない感情を、リュンクは持て余してしまう。
「た‥堪んないよ‥
全部お見通しなんだもんなぁ‥」
「前にも言っただろう?
俺も元は少年だ。
似た様な傷心に覚えがあるだけだよ」
そばに居てくれたのがオーケンで本当に良かったと
今ばかりは、本心でそう思うリュンクだった。
「地方同盟というのは、中々に尊い絆があるのね。
私は、少々魅入ってしまったよ」
リュンクが感慨にしみじみしていると、
オーケンの背後、ジョラピオ医院の入り口から、
嫋やかで張りのある女性の声がした。
聞き覚えのない声に警戒し、
オーケンの脇からひょっこりと顔を出したリュンクは、
帽子のツバから、声の主をソワソワとした気持ちで見つめる。
「やぁ。
君が噂のリュンクだね。
初めまして。
私は、アンガフ決起隊の戦士長のミアキスだ。
これからよろしく頼むよ」
「あっ‥はい!
よろしくお願いします!」
「うん!良い返事だ!」
オトロのが着用していたものと同じ意匠で作られた軽装、
そこから覗くのは、若竹の様にしなやかな身体。
短く整えられた銀色の髪に、深い葡萄酒色の瞳。
知的な言葉遣いに、懐の深そうな穏やかな表情は、
名乗った戦士長と言う肩書きに対して
やや幼さの残る顔をした彼女の印象を、
それ相応の信用に足るものへと押し上げている。
しかし、ミアキスが余りにも顔をまじまじと見つめるので、
リュンクは少し顔を赤らめて照れてしまう。
「アツを助けてくれた事と、
ウチの人間の不手際の尻拭い。
どちらも解決してみせるとは恐れ入ったわ。
決起隊の面々を代表してとても感謝している」
「えっと‥アツとオトロが居てくれたからだよ
二人とも凄い強さだったから」
「なるほど。
オーケン殿、貴殿の地方同盟は、
少年兵にして謙虚とは感服しました。
こちらの子供らにも見習ってもらいたいものだ」
「う〜ん‥‥そうでも無いぞ?
こいつはアレだ。
あんたに良い格好したいだけさ」
オーケンは、そう言ってリュンクの頭に手を乗せるが
言葉とは裏腹にやんわりと撫でてくる。
気恥ずかしさを野次られたリュンクは、
素早くそれを手で払いのけた。
「そういうんじゃ無いよ!
ただ、なんか得意になる様な事じゃ無いって‥
そういうのだよ!!」
「ははは!あぁそうかい!
まぁ、それは置いておいて
ミアキス、あんたのトコの坊主が出てきずらそうにしてるから
そろそろ呼んでやろう!」
「え?」
オーケンの言葉を聞いて、室内を見渡すと
奥の部屋、治療室の壁から見切れる形で
こちらの様子を伺う篤丸の姿が見えた。
「あ!篤丸!!」
リュンクは篤丸の姿を見ては、
居てもたっても居られず駆け出してしまう。
「どうだった!?
篤丸も変な儀式されたの!?」
「其処元よぉ‥戦士長‥怒っとるかのぉ」
「え?戦士長‥ミアキスさん?
‥いや、怒っては居ないと思うけど」
そう良い、チラリと戦士長ミアキスの方に視線を向けると、
先程まで優しそうに微笑んでいた彼女は、
なんとも威圧の乗った強面に切り替わっていた。
何処かしらサドっ気のある表情にも見える。
「あ‥あっ!戦士長殿!勘弁してくれんか!
ワシもええ様にしようと頑張ったんじゃ!
のう!其処元!!」
「うっ‥うん!!そうなんだ!!
篤丸はよく頑張ってたんだよ!
本当だよ!!」
ワタワタと焦り散らかす二人を尻目に、
ズンズンとこちらに歩みを進めるミアキス。
まるで率いる群れを押しのけて現れる獅子の様な、
その姿にリュンクと篤丸は二人して縮み上がる。
今にも時間遅延でも起こりそうな勢いだ。
「アツ!!」
「あいッ!!」
「致命傷を負ったと聞いたぞ!
健在に見えるがどうだ!?」
「五体満足じゃ!」
「なら良し!!
身を危険に晒す未熟さは正すべきだが
オトロもお前もいい判断だ。
あの状況で、良くいち早く動けたものだ」
ミアキスは、そう言ってから篤丸の短髪をひと撫でして
肩を引き背中をポンポンと叩いて見せた。
「は‥‥はぁあ〜っ!
なんじゃぁ‥‥褒めるんかよ!
ワシは、てっきりまた尻しばかれるんか思うたわ!!」
「はははは!!そうだな!!
お前等がまた(悪さ)をしでかしたら
わからないよ?」
「ありゃ、惨めったらしいけぇ
もう勘弁してくれ!」
二人のやり取りを見て、
無駄に緊張した胸をなで下ろす。
「本当にビビったよ‥‥
それに何?
篤丸ってば、お尻叩かれたの?」
「ははっ!!
そうだよぉ?
アツだけじゃない
オトロも一緒にね」
ミアキスが言うには、
以前、質の悪い(悪さ)をした二人に対して、
戦士団の面々が集まる場で
下半身を剥いて逆さに吊るし上げた挙句、
倍に腫れ上がるほど尻を叩きあげたらしい。
「ははは‥‥。
うん‥それは‥ちょっと笑えない程キツイね」
リュンクは同じ事をされたら
相当なトラウマを抱える自信があった。
情けを掛けるような、哀れみを持って
篤丸の方を見ると、彼はミアキスの死角から
口パクで何かを伝えようとしている。
「?」
何と言っている?
う‥‥‥り‥‥
???
「んん?‥うり?」
うり‥‥瓜?
「‥‥ん‥んん?」
そういえば‥ミアキスは戦士長‥‥
戦士長と‥瓜?
脳内で、アンガフ市街で爆笑している篤丸とオトロ、
それと、それを嗜めるインベルが脳内に蘇る。
「‥‥はっ!?えっ!?えええ!?
マジで!?この人が!!!???」
リュンクは、改めてミアキスの顔を見つめる。
「ん?そんなに熱心に私の顔を見つめて‥何かな?」
鍛えられた健康的な体に、
整った女性らしい顔立ち。
ドキドキ。え、なにこの気持ち。
リュンクの性癖が少し歪んだ。
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篤丸の診察が終わった事で、
ジョラピオ医院の人間が説明に現れたので
リュンク達は、皆、椅子に腰掛け説明に集中する。
「と‥まぁ、怪我と呼べる外傷は見当たりませんでしたが
二人とも紋腺に関わる検査で稀有な結果が出ました」
「紋腺‥」
分断監視塔へ攻め入る夜明け前、
大岩の上でのアーテリスとの会話が蘇る。
彼女は、元が教師という事もあり
紋術に関する知識を細かに話してくれた。
その話の中にも【紋腺】という言葉が出てきた。
紋腺とは紋術を行使する為の神経の様なものだと
リュンクはそう解釈しているが、
実際の所、それが何なのかはわからない。
「ねぇオーケン。
紋腺ってなに?」
「リュンク‥‥今は変なギャグいらないよ?」
常識外れな質問だったのか
アテテロは、ジト目でリュンクに注意を促す。
「いやぁ‥へへ‥」
リュンクは、失言をはぐらかそうと
いつも通り諛う誤魔化しを繰り出したが
オーケンは、それを茶化す様子はない。
「まぁ、医学的な紋腺の知識は奥が深い
改めて聞く意味もあるだろうさ」
~以下説明~【紋腺について】
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紋腺とは、俗称、および紋術学では紋術回路と呼ばれ、
神経組織や、リンパ腺と同じく体内に張り巡らされた体内器官である。
呼吸と共に体内に取り入れた原級素を
生理活動に関与させる為の循環器としての役割と、
それを転用した紋術の行使を担う役割がある。
その作用や、紋術転用へのプロセスは、非常に難解なので
詳細は省くが、言わずもがな紋腺は異界人類にしか存在しない。
また、紋術装置とは、生体の紋術回路を擬似的に模倣したもので
内部で起こっている原級素反応は同じである。
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~以上説明終わり~
「‥‥要するに‥紋術を使う為の内臓って事?」
「内臓って‥なんか嫌な言い回しだな
まぁ、概ね合っているが、紋術の行使だけでなく
俺達が生きる上で大事な栄養の様なものを作り出しているんだ。
紋腺不全という疾患を発症すると、寿命が半分ほどになるらしいぞ?」
オーケンは両手をわきわきしながら「怖い怖い」と付け加える。
「オーケンさんの説明で間違いないです。
私たちの身体にとっての紋腺は文字通り生命線と言っても過言ではありません。
でも、彼らは紋術不全では無いので心配しないでくださいね」
オーケンは、俺達と言ったが
リュンクが思うに未界人に紋腺は無く、
件の紋術不全とやらを患った状態が、
リュンク達未界人の普通と言う事になる。
未界人達の倍ほどの寿命がある異界人からして
紋腺の機能不全から来る症状として挙げられた「寿命が半分になる」と言う部分も辻褄が合う。
しかし、不可解な事だが、
今のジョラピオ医院の説明では、
あたかもリュンクや篤丸にも紋腺がある様な物言いだ。
「それで、この子達の診断結果です。
まず篤丸君の方ですが、紋腺の発達に部分的な遅れがあります。
何と言うか‥顔の表面、右手の肘から先端と左手の指先、
それと両足には紋腺が確認できたのですが
胴体の大部分と左腕には紋腺が伸びていないのです」
「なるほど‥そう言う事だったのか」
篤丸本人を含めたその場の多くは、
告げられた内容に対してどの様に反応したものかと言葉を選んだが、
ミアキスだけは何やら納得している様子だ。
皆は彼女の言葉の続きを待ち傾注する。
「いや、以前アツに紋術装置を使わせようとした時、
こいつは紋術装置を起動できなかったのさ
嘯いてザボってるものと思っていたが‥」
「なるほど。
紋腺の発達が原因かもしれませんね」
皆と同様にミアキスの言葉を待っていた
ジョラピオ医院のスタッフも深々と頷きそれを肯定する。
篤丸は「わしの身体はおかしいんか?」と、
心配そうにしていたが、医院のスタッフが言うには、
稀にある症状で殆どの場合、大人になるにつれて
正常に発達するケースが多く、今の所問題は無いとの事だ。
一同は、その言葉で安堵したのか
緩和した緊張を口から吐き出している。
その中で、リュンクだけは
腑に落ちない様子で物思いに耽っていた。
先ほどジョラピオ医院の人が言った、
篤丸の紋腺が発達していると言った部位は、
彼が負傷し、治癒した場所と合致している。
そこでリュンクの中で次の様な仮説が浮き出た。
本来、未界人に備わっていないはずの紋腺だが、
負傷や欠損を再生する時には、
おまけの様に体内に構築されるのでは無いだろうか?
そうなると、リュンクの体にも紋腺が備わっている可能性がある。
なんせ、リュンクは紋腺の中枢があるという延髄を負傷したのだ。
あの時、全身不随になり
そこから復元されたリュンクの体は、
篤丸の様に、まだらな再生ではなく
全身隈無く生まれ変わったに等しいはずだ。
「続いて、リュンク君の診断結果ですが‥‥
こちらは少々厄介です」
「厄介とはどう言う意味か?」
オーケンが、珍しく鋭い目で口早に聞き返した。
「あ‥いえ。
厄介と言ったのは、彼の症状が‥という意味ではなく
我々の方の話でして」
ジョラピオ医院のスタッフは、
オーケンの圧にまごついているのか
篤丸の時と比べて、どうにも歯切れが悪い。
「何か問題があったの?
僕の体にも紋腺があるんでしょ?」
「ええ。紋腺自体はあるのですが‥
どうも紋腺の発達が異常なのです」
「発達が異常?」
それを聞いた瞬間に意味深に眉をひそめるオーケンと、
焦った様子でその顔を見つめるアテテロ。
「紋腺だけではありません。
原級素の保有量も異常な数値が出ています。
計測した器具の故障かと思いましたが
他の検査は正常なので‥どうにも不可解で‥」
「ぐ‥具体的には‥どう変なんだ?」
理由はわからないが、上擦りながら質問するオーケンに、
リュンクは「何焦ってんだこの脳筋は」と、怪しんだが
話の内容が気になるので無視した。
「具体的に‥ですか?
そうですね。
例え話になりますが、測量結果とジョラピオの統計資料を照らし合わせると
リュンク君の紋術適正は【神関省】の賢者衆に匹敵し、
生物的強度は、ナキギキ科目の生物と同等か、それ以上となります」
‥‥‥‥‥‥‥‥。
一呼吸、場に静寂が訪れた。
一番最初に口を開いたのは
先ほどと同じく戦士長のミアキスだった。
「神関省の賢者衆だって!?」
ミアキスは驚嘆の声をあげて椅子から立ち上がる。
「この歳で賢者たちと同等の紋術適正があるなんて
聞いたことがないぞ!?」
オーケンは「まぁまぁ」と、ミアキスの肩を抑え
何とか椅子へと押し戻す。
未界人であるリュンクには、分かりにくい例えだったが、
賢者という言葉のニュアンスで、何となくその内容が知れ
ミアキスのリアクションに焦りを覚えた。
なにせ、リュンクは色々と隠し事がある。
これに端を発し、芋づる式に秘密がバレては困る。
「ああ!リュンク!!
そう言えばあなたウピポギの民って言ってたよね!?」
突然大きな声でそう言うアテテロ。
「おお!そうだ!!ウピポギの原住民は少し紋腺が特殊とか‥
何とか聞いた事がある気がするぞ!?」
さらに、オーケンもバカに大きな声でそう言う。
「ウピポギの民ですか…翠風祭で有名な場所ですよね?
そう言えば、オカオロネ地方の大森林には【成長の紋印】に関する伝承があります。
そこの原住民となると紋印の影響を色濃く受けているのやも
……そうか、通常のオグニス人とは紋腺構造が違う可能性もありますね」
ジョラピオ医院のスタッフは続けて「紋腺学はまだまだ発展途上ですからね」と付け加え
今回の結果は、測量方法に問題があったとして正規の情報としない旨を告げた。
「それにしてもよく大森林からキンビニー地方まで来られましたね?
ウピギア大陸の人間とは、私、初めて会いました」
「はは…ははは!このご時世だからな!
いろんな場所に人が動いてんだな!!」
ジョラピオ医院のスタッフは、
その他の診察結果を伝えてくれたが
特に別状無い結果だったので家に帰ってかまわないと言った。
リュンクと篤丸は、お互いが健在な事に改めて喜び合い
アテテロも、同じ様に二人の無事に安堵する。
篤丸とアテテロは初対面だが、二人とも人当たりの良い性格なので
直ぐにでも良い友達になれそうだ。
一方、オーケンは、さっき程の診断結果に、
やや興奮気味のミアキスを宥めるのに手を焼いている。
その様子を見たリュンクは、なぜオーケンが
サルホーガの件を黙っておく様に言ったのか何となく理解する。
たった少しの有望な情報だけであれだけ興奮する人がいるのだ。
もし自分がサルホーガを打ち倒した事を告げれば
一体どの様な騒ぎになるのか。
「オーケン殿!!今一度、精密な検査をお願いしましょう!
もし!リュンクには天賦の才が眠っておるのやもしれませんよ!」
「ちっと!落ち着くんだミアキス!
ジョラピオの人も間違いだって言ってただろう?」
リュンクには、もう一つ気づいた事があった。
それはオーケンとアテテロの反応だ。
あの二人は明らかにリュンクの内心を悟るかの様に、
強引に話の流れを変えようとしていた。
少し前までのリュンクなら
気づかなかったかもしれないが
最近、物事の感受性が上がってきている彼は、
それを疑問に思わずには居られなかった。
リュンクは、ふと「今ならあの日の女子達が怒っていた理由がわかるかも」と考えたが
そればっかりは、今でもわからない。
しかし、もうオーケン達の振る舞いに対してあれこれと考える必要は無い。
アンガフ渓谷の下でリュンクは腹づもりは決めたのだ。
リュンクはオーケンに全てを打ち明ける。
「そうじゃ…戦士長。
オトロのやつはどこに居るんじゃ?」
密かに決意を固めるリュンクの隣で
篤丸がミアキスに質問を投げた。
そう言えば、オトロの性格なら一番に見舞いに来そうなものだが
一向に彼が現れる気配は見えない。
「ああ‥オトロは‥大通りに居る。
例のアマテオ兵の生き残りの処理だ
そう言えばお前の無事を伝えたのに来なかったな‥
まぁ、早く無事な顔を見せてやれ」
「アマ兵の生き残り?‥そうか、わしは全員死んだもんかと思っておったが」
「一人だけ生き残った奴が居た。
例の道具屋のドダウ老人に匿われていたケサブロとかいうアマテオ兵だ」
「おお!あいつ生きとったんかよ!!
これで爺さんとの約束を果たせるのぉ!」
「約束?何の事かわからんが、
ケサブロに用事があるのなら早い所大通りに行った方が良い」
「‥何でじゃ?」
「ケサブロはもうすぐ見せしめに殺されるからだ」




