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WSS/1-異界冒険譚  作者: たかしモドキ
第7話「実にエッチである」
62/80

-【7-9】-僕なら悲鳴あげちゃうね

目端と股間が熱くなるやり取りで

男の友情を確かめ合ったリュンクと篤丸は、

互いの状況について確認しあっていた。


「体調はどう?目眩とか吐き気とかない?」


篤丸の安否を気にかけるリュンク。


兎にも角にも、意識を取り戻したのだから

俗に言うヤマの様なものを超えたと考えられるが、

その体の調子と言うのは、本人しか分からない。


テレビや本で得た知識から言うと、

普通に動け会話できていたとしても、

その体の水面下では負傷による被害が着実に進行していて

突然ポックリと逝ってしまうなんて事もあるらしい。


こういった場合、本人にしか分かり得ない体調の違和感は、

不調の愚痴だけでは済まされない重要な情報になる。


ただし。


ここで、それが分かったところで

医療知識のない小学生にどうこう出来るものではない。


「おお。目もよう見えとるし、頭もしっかりしとるわ」


「そっか‥とりあえずは無事そうで良かったよ」


「おう!健在じゃ」


元気にそう言う篤丸だが、

健在というには、余りにも外傷が多い。


先程まで潰れていた左腕は、すでに治りかけていて

上半身はおおよそ健全とも言えるが問題は下半身だ。


関節の増えた足は、未だ直視できない状態であり、

へし折れた骨が皮膚を突き上げて、今にも飛び出てきそうだ。


何分にも骨折、挫傷、裂創などの外傷が、

どれが一番重症かを競いあっている様な状態だ。


差し詰めキズリンピック開催真っ只中とでも言おうか?

いや、やっぱり言わまいか?

ねぇ?どうする?


「とまぁ‥強がっては見るが‥こりゃまともに動けそうにない」


「そりゃそうだ」


意識が戻ったところで、自力で歩けないのだから

リュンクが篤丸を背負って歩くのは避けられない。


篤丸は、自分をここに置いてリュンクだけ先に戻り、

救助を連れて戻ってくる様、提案をしたが、

アンガフまでの距離や、陽の傾き、この場所を覚えられない事などを考慮し

二人で話し合った結果、このままリュンクが背負って下山する運びとなった。


「すまんな其処元。迷惑をかける」


「謝らないでよ。お互い面倒な事に巻き込まれているみたいだしね。

 仕方がないさ」


「そうじゃな‥それにしてもくたばったものと腹を括ったのだが、

 治る怪我ばかりで助かったわ」


「‥うん‥そうだね」


「いやいや。わしも兵法者じゃ。いざと言う時の覚悟はしとるぞ。

 じゃが腕の一つでもあるに越したことはないじゃろ?」


この話を聞く限り、篤丸は自分が人間離れした

死にづらい体になっている事に自覚がない様だ。


もしも、元からそんな体をしているのなら、

体が欠損していない事に安堵したりはしないだろう。


その事実に、リュンクは少し消沈する。


わずかな希望ではあったが、篤丸の口から

この不可解な体の秘密を聞き出せるかもと思っていたからだ。


同じ様な異常性を備えた人間が二人も居ながら、

その仕組みについての理解度は、二人合わせても10%にも満たない。


リュンクは、分団監視塔での戦いの前から、

ずっと考えていた事を再び思案する。


それは、一切合切の事情をこの世界の大人に相談してみる事だ。


普通に考えれば、子供のリュンクが身近の大人に頼るのは当然の事で、

本来ならばすぐ、その場で告白していてもおかしくない。


現状、それを拒んでいる格好になっているのは、

フロエとの会話が抑止力になっている。


『我々も一枚岩ではない、既に悪神に降ったものも多い、

 尊主が存命だと知れればどうなるかわからない』


フロエの言った事を、噛み砕いて味わえばそれも仕方がなく、

迂闊に自分の内情を話せば、それを発信源にして

悪神の仲間の耳に入り、きっと面白くない事になる。


子供でもわかる事、

それは命に関わる脅威に繋がる。


だが、リュンクは思う。


オーケンなら。


あの大らかで優しく、心強いオーケンになら、

全て話してしまっても大丈夫ではないだろうか。


リュンクは、オーケンと出会ってから、まだ日も浅く

十分な信頼関係が築けているとは言えないが、

何年も一緒に生活してきた家族よりも、親密な信用を抱いている。


あの人なら、きっとどんな事実も受け止めてくれる。


「大丈夫か其処元?しんどいんか?」


頭を回す余り、沈黙するリュンクを気遣う篤丸。


そういえば、篤丸の場合はどうなのだろう。


もし篤丸が包み隠さず全て話してしまっているのなら

いくら黙秘していても、意味はなく、

リュンクの抱く葛藤はもはや意味の無いものとなる。


「篤丸はさ、アンガフの皆にどれくらい話しているの?

 日本から来た事とか話した?」


「お?そうじゃ。全部話したぞ」


「あ‥‥そうなんだ」


「おう。話しはしたが‥全く通じなんだ」


「はは!そんな気がしたよ」


これは予想していた事で、

どう考えても篤丸がこの複雑な内容を

上手に説明できるとは思えない。


話を聞かされた人達は、さぞかし頭を抱えた事だろう。


篤丸が言うには、頑張って説明しようとは試みたが、

どう頑張っても一向に伝わらず、

結局、武術家の子で、今は身寄りがないと言う立ち位置に収まったので

それ以上擦り合わせなどを行わず説明を諦めたそうだ。


それが良い事なのか悪い事なのかはさて置き、

結果的に誰も篤丸が異世界人だと言う事をわかっていない。


そうなれば、一層リュンクの行動は重要性が増してくる。


「‥‥よし決めたぞ」


「なんじゃ?気合いか?」


「篤丸。僕の話を聞いてくれる?」


リュンクは、長らく考えてきた葛藤に答えを出した。


オーケンに全てを話し、自分が何に巻き込まれているのか助言をもらう。


その手始めに、篤丸に自分の事を話してみる、

予行練習にはもってこいだ。


「おお!愚痴でも悪態でも聞かしてみぃ」



-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


リュンクは、できるだけ分かりやすい言葉で以下の事を篤丸に告げる。


自分と篤丸は、同じ日本出身でも時代が異なる事。

ウンコの女神マティテと、その巫女フロエの事、

託された使命と悪神の事。

自分に起きている人間離れした能力の事、

その異能を使い、この世界の脅威を退けようとしたが

戦いの中で、約束を果たせず大切な仲間を失い、

悍ましい衝動に突き動かされ人を殺した事。


更に、篤丸をこの世界に招いたアエウオと言う女性と、

自分をこの世界に招いたマティテの関係性が解らない事などの

抱いている疑問や不安を全て吐き出した。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


「う〜む」


リュンクに背負われた状態の篤丸は、

喉の奥を低く震わせ難解であろうリュンクの説明を咀嚼(そしゃく)している。


「ようわからん!!!」


「まぁ‥そうだろうと思ったさ」


「しかし、其処元が望まぬして厄介ごとに巻き込まれとるのだけは、

 重々承知したぞ」


「いや‥境遇的には、篤丸もそう変わらないけどね」


「いや。其処元に比べれば、ワシなんぞ恵まれとる

 ‥‥しかし、ワシは、ここは日本の外の国じゃと思うとったが、

 まさか世界そのものが違ごうとるとは‥」


「ああ‥そこからなのね」


確かに、刀剣を振り回していた時代の日本が、

グローバルな情報に精通している訳が無い。


世界の国々に対して殆ど無知な篤丸からすれば、

異世界も外国も、印象としては余り変わりないのかもしれない。


そこから二人は様々な話をした。


過去からやってきた人間が未来の人間に聞きたい事、

未来に住む人間が、過去の人間に聞きたい事、

お互いの好奇心から湧き出る質問合戦は止まらず

そうこうしているうちに今日会ったばかりだと言うのに、

二人は、まるで気の知れた友人の様な距離感でものを話すようになった。


「え!?じゃあ、髪の毛ってちんちんみたいなものなの!?」


「そうじゃ。ワシんとこじゃ、元服した男は皆、冠で頭髪を隠しとる。

 じゃけぇ、決起隊に拾われた時、ど変態の集まりじゃと恐れたわ」


「ははは!!下半身丸出しの大人達に助けられたよなもんかな?

 僕なら悲鳴あげちゃうね」


「おうよ!しかし、ひと月も住んどると慣れてきたわ」


「僕の時代とも随分と違うなぁ、しかし、トイレが無いなんて信じられないよ」


「そりゃ、ワシらもそこかしこに撒き散らしょったわけじゃ無いぞ?

 おきまりの場所みたいなのはあったわ」


「そりゃそうだろうね。でもさ、この世界のトイレも変だよ。

 植物を便所代わりにしてるなんて、今でも考えられない」


「おお!ワシもあれには慣れんわ。しかし溢れんし臭わんし優れもんよ」


「確かに」


それが常だと言わんばかりに、質問合戦は下賤な話に収束し、

恐らくここからは下ネタ一揆に発展する。


その前にリュンクは、(いささ)か真面目な質問を投げかける。


「篤丸はさ、これからどうするの?

 アンガフに戻った後もそうだけど、もっとほら‥これから先の話」


リュンク達には、元の世界に帰る手段が無い。


かてて加えて、お互い違う時代から来たのだとすれば

よしんば帰還の方法があったとしても、元の鞘に収まれるとも考えづらく

今後一生この世界で生きていく事も視野に入れなければならない。


それは、悪神の復活や、アマテオ帝国の侵略を超えた先にあるリアルな問題だ。


リュンクは、同じ境遇の篤丸だからこそ、

当初からあり、それでも目をそらし続けてきた事実に焦点をあてられた。


「これからか‥そうじゃな‥とりあえずは、アンガフ決起隊‥‥

 あいや、其処元の話じゃと、地方同盟になるんか?

 どちらにしても、一命の恩を返すにはこの戦をば収めんといかん

 其処元も、そこにおるんなら、ワシらは同郷の兄弟分としてやっていく事になる」


「兄弟分かぁ‥悪く無いね!」


「おうよ!(たぎ)るわ!‥‥で、其処元はその後の事を聞いとるんじゃろ?」


「あ、うん。そうだね」


「先の事は、よう分からん‥けんど、出世じゃな!!」


「出世?」


「そうじゃ。男たるもの、一国を持つ魂胆は捨てれん。

 国が変わろうが、世界が変わろうがこれだけは変えられん」


「一国を持つって‥王様になるって事!?」


「肩書きはなんでもええんじゃ。国を動かせる程、大きな人間になりたいのう」


「本気で?」


「おう!じゃから、兵法者として腕試しの旅に出て

 出世の糸口を探す事になるじゃろうな。

 もしくは、戦場で得た(えにし)を頼りに何処で指南役にでも成れれば嬉しいんじゃが

 う〜む!夢が広がるわ!!」


リュンクは、現状をややネガティブに捉えがちな自分と対して

「底抜けに明るいなこのどエロ武士」と、感心した。


それと同時に、白銀騎士隊の武勇を聞いて目を輝かせる篤丸に感じた、

自分に無い倫理観に対して魅力のような感覚を再び得るリュンク。


死という現象を受容する時、

リュンクに生じた如何(いかん)ともしがたい摩擦、

それを紐解く手がかりを探る。


「篤丸はさ‥人を殺した事あるの?」


あの日のゼオと同じ質問、あの小生意気な目線が記憶の感慨を(くすぐ)る。


「いや‥まだ無いのう」


「僕は‥人を殺したんだ」


「確か‥かの豪傑、白銀騎士隊じゃったか?」


「そう。二人も殺したんだ。

 さっきのアマテオ兵達も僕が殺したようなもんだから

 もっと多いかも」


「ふむ。それがどうした?」


「篤丸はさ。怖く無いの?僕は人殺しなんだよ?

 僕はね、怒りだとか憎しみだとかのおぞましい感情に突き動かされて

 人間を殺したんだ。あの時の僕は悪者に違いない、

 ‥‥あの時の自分が‥本当の僕の正体だったらと思うと

 僕は恐ろしい」


「じゃが其処元、戦さ場での話じゃろ?戦いに出て命を賭け合うんじゃから

 お互い様じゃとは思えんか?」


「‥でも‥人殺しは人殺しだ」


「‥‥‥」


リュンクの言葉に押し黙る篤丸、

この問答に答えが出るとは思えない。


「きちんとした返答ではないかもしれんが‥」


長考を解いた篤丸が喋り始める。

リュンクは、背後から聞こえる彼の言葉に集中した。


「ワシは親父殿を心から尊敬しておる。

 先にも言うたがワシの親父殿は、道場の看板を背負う兵法者じゃ。

 其処元の言う人殺しと言う見方をすれば、既に10人以上人を殺めておる。

 その内三回はワシの目の前で切り捨てなさった」


普段から帯刀して街を歩く時代の人間だ、

そう言う事が日常的にあってもおかしくは無い。


「ワシだけじゃ無い。兄上達も、道場の門下生も、町内の皆も

 親父殿の事を敬い敬意を払っておる。でも、それは親父殿が多く人を殺した事で

 恐れているわけじゃ無い。もしくは、人殺しなのに慕われておるとも言えるが‥何故だかわかるか?」


「‥‥わかんない」


「それは、理解できるからじゃないんかの?」


「理解?」


「そうじゃ。親父殿が人を殺したのは、戦さ場、もしくは果たし合い、

 仇討ちの代行。どれも理由が明らかで理解できる。

 理由があり理解できるから誰も恐れず、逆にその勇敢さに敬意を抱く。

 もしもワシの親父殿が、やたらめったら刀で人を斬り回る狂人ならば

 誰も敬いはせんじゃろう。しかし、その狂人と結果だけ見れば同じ事をしとる」


「あ‥‥」


「じゃからワシは其処元が人を殺めたと聞いても、軽蔑も恐怖も得んぞ?

 戦さ場で斬り合って、勝負に勝った。それだけの話じゃ、よく理解できる。

 その武勇を讃えこそ、悪者などと卑下にはせん」


「違うんだ‥勝負だなんて綺麗なもんじゃないよ

 僕はただ相手が、サルホーガが憎くて仕方がなかった。

 惨たらしく殺してやりたいとしか考えてなかった」


「どうしてそう思ったんじゃ?」


「あいつは、彼女を‥アーテリスを残酷に痛めつけて、仲間を(もてあそ)ぶように殺したから」


篤丸は、リュンクの言葉を聞いて目を丸くする。


「其処元は自分の事となると、急に視野が狭くなるんじゃな?」


「え?どう言う事?」


「仲間を嬲り殺されて逆上せん奴が居るか?

 戦さ場でもどこでも関係ない。

 そんな状況で「人殺しはダメだから許そう」なんて言う奴の方が

 ワシは気持ちが悪いわ。やられた以上に酷い目に合わせてやろうと息巻く

 それが普通じゃと思うぞ」


「篤丸も同じなの?」


「当たり前じゃ!ワシが其処元なら金玉引っこ抜いて目玉と交換してやるわ!

 そいで手足ちょん切って火あぶりにして、生首晒して次に小便じゃな!!

 最後は肥溜めに沈めて‥‥それでも怒りが収まらん!!」


篤丸は身につまされる思いなのか、フンフンと鼻息を荒立てた。


「はは!僕より手酷いね」


「そうじゃな。‥‥其処元よ。もしワシが奴にそれをしたら

 其処元はワシを悪じゃと罵るか?」


少し、空想に耽る。


普通に考えれば、そんな事をする奴は外道の悪人、

いくら敵であれ、情けと容赦を持たなければならない。


だが、当事者であるリュンクだからこそ言える。


あの場において練り上げられた憎悪は、

綺麗事で抑えつけれる類のものじゃ無い。


そして何よりも、情け容赦など抱いたまま勝てる相手ではなかった。


「‥いいや。それくらいの事、されて当然、僕はそう思うよ」


「そうか‥それが理解じゃな」


リュンクの心の中で、僅かに何かが変質する。


篤丸の倫理観は確かに何かを変えるきっかけとなった、

何かが解決したわけでも、死という現象を受け入れる体制が整った訳でもないが、

リュンクを痛めつけていた道徳の棘が少し減った気がする。


「まぁ‥それでも、もし、其処元の正体が悪なのだとしたら

 ワシが斬ってやるから安心せぇよ」


「うわ〜怖い‥‥でも、ありがとう篤丸」


「しゃらくせぇの兄弟分!!」


再びおちゃらけた出した二人の話題は、

それから程なくして「下ネタ一揆」へと突入した。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


日が暮れて、あたりは暗闇に満ちた。


リュンク達は、今日中にアンガフに戻る事を諦め

今日はここで野宿する事にする。


大きな岩の間を寝床に選び背負った篤丸を下ろしたが、

なんと篤丸は歩けるくらいに回復していた。


ひん曲がった足は矯正され元の形に、

挫傷や裂傷も塞がりつつあり

どうやらキズリンピックは閉会間近のようだ。


「おー、これなら明日は自分で歩けそうじゃわ」


「篤丸さ‥図太いとは思ってたけど

 流石に驚こうよ。骨折が半日で治るんだよ?おかしくない?」


「いやぁ‥物の怪も妖怪も居るような不思議の世界じゃからの。

 こんなもんじゃないんか?」


「想像力が圧倒的に足りてねぇ!!」


リュンクは、確信を得る。


やはり、篤丸にもリュンクと同じような異変が起きている。


治癒の速さだけでなく、空腹や眠気の鈍化、体力の異常な向上など、

全体的にリュンクよりも鈍くはあるが同系統の現象なのは間違いがない。


リュンクは、この現象の数々は女神が授けた紋印の恩恵だとばかり思っていたが、

それは誤りなのだろうか?


もしかすると、紋印だの異能だのと関係無く、

未界人ならば、皆、このような効能が現れるのかも知れない。


そこで抱くのは、当然、時間遅延の有無だ。


もしも、篤丸にも時間遅延が備わっているのならば、

特別感は薄れるものの、とてつもない戦力となる。


「其処元よぉ‥腹の減りはいまいちじゃが

 なんか食うもん探さんか?ワシは焼けば虫でも何でも食うぞ」


呑気に晩飯の心配をしている篤丸を尻目に、

リュンクは竜剣を引き抜き、その背中に不意打ちを仕掛けようとしたが、

篤丸がそれに気づく事は無く、時間遅延が発動した様子は無い。


それから後、暗がりにて数回、不意打ちを仕掛けようと試みたが

何回やっても結果は同じだった。


しかし、どの不意打ちも実際に攻撃しているわけでは無いので、

時間遅延の危険センサーに反応していない可能性もある。


だが、よくよく考えれば、橋上の戦闘であれだけ攻撃を直撃していた篤丸に、

時間遅延が備わっているはずがなかった。


「あっ」


その時、ふと暗闇の彼方に揺れる光が見える。


「篤丸!!なんか居る!?」


「妖怪じゃねぇんか?

 ワシは獲物が無い、無手でどこまでやれるか知らんぞ

 逃げるか?」


「篤丸は後ろを見てて!何とかしてみる!」


「おうよ!任せろ!」


突然の事に二人は身構え、戦闘態勢に入る。


リュンクは、竜剣を右手に持ち

段々と近づいてくる揺れる光を睨め付けていたが、

その方向から大勢の人間の声が聞こえてきて表情を変えた。


「あれ‥もしかして‥」


「おう!其処元!!ありゃアンガフの連中じゃ!!」


その声に聞き覚えのある篤丸が声を上げ、

ようやくそれが松明の明かりだと気付き、

こちらも大きく返事を返してみる。


リュンク達の応答を聞きつけたアンガフの男達は、

足早に二人の前へ現れた。


「生きてやがったが!!!ガキどもぉ!!!

 全く大した奴らだな!!」


男達は、豪快に笑いながらも

リュンクと篤丸が健在である事に安堵している様子だった。


「おう!地方同盟の坊主!親父さんも来てるぜ?」


「坊主‥僕の事?いや、それよりも‥親父さんって‥‥」


その時、川の水を激しく撒き散らしながら

熊のように巨大な何かが接近してくるのを感じたリュンクは、

思わず身構えてしまうが、時間遅延はいくら待っても発動せず

リュンクはそのまま、何者かにがっしりと掴まれ持ち上げられてしまう。


「ぉおああ!?」


「うぉおおおおおおお!!!」


何かしらの獣が放つ野太い叫び声。


その主は、オーケンだった。


「オーケン!?」


「おま!おまおま!!心配したんだぞぉ!!!馬鹿野郎!!!」


暗がりでよく見えないが、オーケンは大層取り乱し

まるで赤ん坊を抱き上げるようにリュンクを掴んで離さない。


「ちょっ!!オーケン!!大丈夫!!僕は大丈夫だから!!

 いててて!!!潰れちゃうよ!!」


「うるせぇ!!いっそ潰れろぉ!!うぉおお!!!!

 絶対に離さないからなぁあああ!!!」


周囲にドッと笑い声が響く。


リュンクは、酷く小っ恥ずかしい思いだったが、

異世界で、死にづらい体でもある自分の事を、

こんなになるまで心配してくれる人がいる事を嬉しく思うのだった。

再びプラモデルの森に迷い込んでいましたが、帰還しました。

去年の暮れは再販品と新入荷のお祭りで、不某駆け巡り模型の尻を追いかけ回していました。


未だ制作途中のものもあり片足を突っ込んだままですが、また週一のペースでやって行きたいと思います。


いつもありがとうございます。



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