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WSS/1-異界冒険譚  作者: たかしモドキ
第6話「あなたに何も期待しない」
52/80

-【6-7】-マジに最低の気分

「彼は一体何者なのですか?」


屋上での死闘が語られた同盟軍アジトの一室は、

張りつめた様な空気が漂っていた。

部屋の壁に設けられた木枠の窓、その近くに飾られた

大きな地方同盟の軍旗が少し揺れた様に感じる。


オーケンは、デウムの問いに、しばしその目を見つめ返していたが

やや冷気の逃げつつある飲料をゴクリと飲み干し

椅子の背に荷重を傾け、両腕を後ろに天井を仰いだ。


「サルホーガが部下に指示した対応行動だが‥‥

 アマテオ帝国兵団に古くから伝わる形式指令の番号の一つでな。

 一刻を争う状況や緊急時に、情報量の多い任務や、秘匿の指示に使われる」


オーケンが唐突に話始めた内容に、面くらうデウムだが

持ち前の深読み気質で話の流れに乗る。


「詳しく説明する時間の無い状況で

 複雑な指示を出す為の手段という事ですか?」


「そうだ。その番種は膨大、俺が知っているのも一部のみで

 重要な作戦の度に増えているだろうから、全てを把握するのは

 兵団の代表だとしても不可能だろう」


「なるほど‥‥しかし、その膨大な番種の中で7番となると一桁。

 当初に割り当てられた指令。なにやら特別な匂いがしますが‥‥一体どんな意味が?」


「対応行動7番が意味するのは‥生きた信書だ


『現行で遂行中の任務を全て白紙に戻し

 皇帝の直下組織とコンタクトを取り伝令を完遂せよ』


という意味がある」


わざわざ付けられた仰々しい建前に対し

予想外の内容に肩透かしを食らうデウム。


「生きた信書?用は、撤退命令の一種ですか‥‥

 そんな簡単な指示にわざわざ番号を振るのですか?」


軽率なデウムの発言に、オーケンは穏やかに言う。


「ただの撤退指令じゃ無いんだ。

 この指令の肝は、皇帝の直下組織への報告を仰いでいる部分、

 組織の指令系統を破壊する様なありえない内容だ。

 こんな指示が許される状況というのは帝国の存続を揺るがす

 大きな脅威を認める場合だけだろう‥‥そして今回託された報告内容は‥‥」


「リュンクが皇帝と同じ‥とかなんとか」


「そう。その内容から推測できるリュンクの正体

 ‥恐らく‥‥サルホーガの予想が正しければ‥あいつは紋印持ちだ」


【紋印持ち】オーケンの口から出たその言葉に、

デウムとアテテロは瞳の四方を白く剥き、

緊張で張り付いた唇をゆっくりと引き剝がして驚嘆の表情をした。


「あ‥‥あの子が紋印持ち!?あんな私達と、そう歳の変わらない子供がですか!?」


アテテロは、驚愕と恐れを感じているのか、

両肩を抱え竦んだ様子でそう言った。


「年齢は当てにならんよ。俺の知る限り紋印持ちの体は、加齢の枷から解放されている。

 あの見た目でコクラクの爺さんよりも年上なんて事も十分にあるんだ。

 ただ、まぁ‥あいつの場合は年相応だろうがな」


一方のデウムは、難し顔をして手の平で口元を覆い物思いに耽っている。


「デウム。何か思い当たる節があるのか?」


「あ、いや‥ただ、彼が紋印持ちだとすれば、あの異様な紋術も身体の復元も

 白銀騎士を打ち倒した事実すら納得できると‥‥」


オーケンは、感情の起伏や身体的消耗の影響から、

思考を切り離し冷静に物事を判断しているデウムに感心し

彼の素質を見直しつつ、話を続ける。


「だが謎が多い。あいつは、いつ、どこで誰から紋印を継承したのか‥

 アーテリスも不審がっていたが、あいつの素振りは

 まるで紋印どころか、紋術すら知らない様に見える」


デウムとアテテロは「確かに‥」といった顔で、

お互いに心当たりのあるエピソードを思い出す。


「そういえばあの子、大森林のウピポギから来たと言っていましたが

 大森林で継承したのでは無いですか?大森林には紋印に纏わる伝説もありますし

 あっ‥‥でも‥故郷の人間は紋術を使わないって言ってたけど‥」


アテテロは上目でオーケンを見つめ

リュンクとの会話で知った情報を自信の無さが伺える声色で告げる。


「俺はガイブレド出身でな。大森林のあるオカオロネ地方の人間に会ったことがある

 若い頃に大森林の翠風祭にも参加した事もあるが‥‥紋術と無縁と言うのは想像できない。

 それと、前にあいつに異なる地方名を告げたがあいつは否定しなかった。

 大森林が故郷というのは、嘘だろうな。どうだ、デウムは心辺りがあるか?」


「心当たりというか‥話は少しズレるのですが。

 彼が竜剣とか呼んでいた、あの不恰好な剣。

 あれも彼の保有する紋印と関係するのだと思います。

 恐らく紋印と同じ者から継承したのでは無いでしょうか?」


デウムは、竜剣が紋術媒体として機能していた事と

白銀の鎧を破壊するほどの硬度と堅牢性を持つ事を訝しむ旨を付け加え

鍛治職人の孫らしい視点の意見を出す。


しかし、どれだけ思案を重ねようと

3名の手元にあるカードでは、真実に行き着く事は難しい。


オーケンは、聞き取りを終わらせると共に

2人に対し、ここでの会話を強く禁じた。


今語られた内容の殆どが、オーケンの恐れる地方同盟の暴走へ繋がる

潤滑剤になり得る只ならぬ因子だったからだ。


退室するデウムとアテテロを見送るオーケンだが

その虚ろ過ぎる後ろ姿に、再び2人を呼び止める。


「今回の戦い。地方同盟を勝利に導いたのは、お前達だ。

 デウムの冷静な対処がアテテロを含めた少年兵達の被害を食い止め

 アテテロの水の紋術による処置がアーテリスの命を繋げ、落下した少年兵を救った

 そして‥アーテリスの虚空の紋術が敗走しようとするサルホーガを食い止め

 あいつが。リュンクがトドメを刺し、その結果アマテオ帝国の降伏を導いた」


そう、あの場で誰が欠けていても、

地方同盟の勝利とサルホーガの討伐を成し遂げる事は出来なかったのだ。


「でも‥‥」

「‥‥‥‥‥」


しかし、2人はその言葉を素直に受とめられない。


「得意になり誇れとは言わない。

 それで欠けた穴が埋まるとも思えない。

 だが、俺を含めた地方同盟兵の命とケトアト、アンガフの未来を救った事実

 これだけは決して忘れないでくれ」


その言葉で、心を揺らしたデウムとアテテロは目元に温かい思いを溜め

オーケンは、大きく太い腕で、強く優しく2人を抱きしめた。


「お前達が失った数々は、奪われてなどいない。

 形を変えて全て一つ残らずここにある」


「‥‥ゼオも‥ここにいますか?」


「ああ。ゼオも、アーテリスも、みんな彼らの命に宿っている」


いつのまにか、アジトで作業に没頭していたはずの同盟兵達が集まり

皆、(かしず)く様にデウムとアテテロの前に膝を付き

2人の羽織る外套を手ですくい、描かれた地方同盟の紋様に口づけし

各々の言葉で賞賛と敬意を告げた。


その中には、あの時、対立していた戦士達の姿もある。


命を助けられた彼、彼女等。

そして未来、その者達が救う命。


その膨大な命の握手を紡いだ少年兵の犠牲と行為。


地方同盟にとって死した少年兵とデウム達は、脆弱な子供では無い。

崇敬に値する掛け替えのない仲間であった。


-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-


2人が帰宅するまでを部下に託したオーケンは、

1人部屋に戻り窓に近い椅子に腰掛けた。


「さて‥爺さんはどう思う?リュンクは本当に紋印持ちだと思うか?」


そう、告げられて直ぐ、大きな軍旗の裏から老人コクラクが姿を現す。


「うーむ。もしそうだと考えれば、色々と辻褄が合ってしまうからの

 短絡的に考えるのも分かるが‥‥それはそれでおかしな話じゃろ?」


「あんたがそう言うなら‥そうなんだろう。

 俺は爺さんほど紋印の事情に詳しくなくてな

 正直‥‥ありえない話じゃ無いと思っている」


「ワシとて、そう詳しいと言うわけじゃ無いが‥

 異界史上で存在が確認されている紋印の殆どは、

 神族か属性の獣もしくは紋術省が所有しておる。

 その他の紋印も所在と行方も、だいたい長耳のやつが把握しておるはずじゃ

 今更、未知の紋印が発見されると言うのも考えられん」


紋術に高依存した生活体制を持つ異界民にとって、

そのエネルギー源泉である紋印とは正に世界を構成する核に他ならない。


その紋印が、個と言う存在形式を持つ以上、その所在を把握する動きは必然、

この役割を古来から司るのが、異界管理局に属する紋術省という組織であり

大気中に放出された紋印から生成される原級素(アブニア)の種類を検知できる技術を持ち

紋術学視点で異界環境の観察を行っている。


「うーん。よく分からんな」


「‥お前さんは、決断をせねばならんぞ。

 リュンクの坊主を勢力の一部として扱うにしろ、

 手に余る因子として追放するにしろ、

 ‥‥‥他の形を望んでいるにしてもな」


「‥‥ん」


自分の心情を見透かした様な言葉に、たじろぐオーケン。


「どちらにしてもじゃ。一度、長耳と(おきな)に会わせる必要があるじゃろう」


「‥‥‥少し、時間をくれるか?」


オーケンは眉間にしわを寄せ、思い悩む様に額に手を当てた。

それを尻目に、老人コクラクは、窓越しからケトアトの風景を見つめた。


煤けた工房街の一角で、老女が年季の入った大鍋を手にヨロヨロと歩いている。

その先で酒瓶を片手に騒ぐ若者の集団は、皆で老婆の登場に歓声を上げ

皆で大鍋を囲い、美味そうに料理を食べ始めた。


老婆は心底嬉しそうだ。


「この件は待つ事ができる。だがな、地方同盟に停滞は許されんぞ。

 ケトアトとアンガフの解放を成した今、アマテオの本国に勘付かれ

 討伐軍を編成されるのは時間の問題じゃ」


老人コクラクは、壁面に糊付けされた

キンビニー地方の全体地図に向かい両腕を組んだ。


「討伐隊が到着する前に、キンビニー地方を奪還できるだけの勢力を練り上げるには、

 アンガフに続き、学園都市ビッショウ、旧王国街ウニウラを奪還し、戦力を拡大。

 プディウム3世を打ち倒し、ヘテルダ城に囚われているミフティア姫を救出しなければならん。

 そこまで来てようやくアマテオ帝国の侵略を防衛できるだけの戦力となるのじゃ」


「ミフティア姫を救出‥‥そう言えば聞こえはいい。

 だがこの計画、本質は最短距離でミフティア姫を手に入れる為のもの。

 それにより失う犠牲はど返しのな。

 いや、ミフティア姫ではなく【虚空の紋印】を手に入れる為か‥」


「言葉遊びに過ぎんの。王族が自国を救う役割を担えるのなら本望のはず。

 お前さんもわかっているじゃろう?

 綺麗事を並べても、支持は集められても体現には至らん

 何よりも、紋印の力に頼らねばアマテオ帝国を退けるなど叶うはずも無い」


「それはわかっているさ。あのクソアマ公どもに一矢報いる為に

 何年もの間、皆、故郷を蹂躙される耐え難い屈辱に耐え

 この地で暗躍してきたのだからな」


「そうじゃ。それを背負う決断をしたお前さんに停滞など許されん」


決断とは、単なる行動の選択では無い。


ふりかかる障害と犠牲を理解した上で、

それでも、その先にある変化を求めて

自ら受難に飛び込む決意を意味する。


「爺さん。海呑の(おきな)に選ばれなかった俺を支えてくれる事には大いに感謝している。

 だがな、俺はあんた周りの連中みたいに、人の心を捨ててまで目的を達成したいとは思わない」


オーケンの言葉に乗せられた強い意志に対し

老人コクラクは、少し嬉しそうに笑った。


「わかっておるよ。じゃからこそ(おきな)は、お前さんを選ばなんだ。

 この計画は儂が考案したが、お前さんが指揮すれば

 ただの奪い合いとは違う形になるじゃろう。

 お前さんは、らしくやれば良い。

 安心しろ。お主に手を貸すのは儂の趣味じゃ」


その時、部屋の戸を叩く音が聞こえる。


「オーケン、俺だ。ハキホーリだ。入るぞ」


「ああ。入れ」


室内に入ってきたハキホーリは、服装が大きく乱れやつれた様子だ。

勝利に歓喜したケトアトの民から手荒い歓迎を受けたのだろう。


「‥あんな所に置き去りにしやがるから俺こんなだぞ?」


「俺にも色々あってな。すまんすまん」


ハキホーリは、瞼を痙攣させながら

酷い有様を見せ付けるように両腕を広げた。


身に着けるそのポンチョには、食べカスや謎の液体が塗りたくられている。


「悪ガキどもにやられた」


「酷い有様じゃが‥お主らしいのう」


老人コクラクは呆れたように、ハキホーリを詰った。


「で?わざわざ来たって事は、何か報告があるんだろ?」


「‥ああ‥‥二つ程ある。

 まず最初に、分断監視塔から回収した物品を調べると興味深い事がわかった。

 どうもアマテオ帝国は【属性の獣】を討伐(とうばつ)するつもりらしい」


「属性の獣を討伐(とうばつ)?一体どういう事だ」


「回収した物品の多くは、監視塔の運用に関係するものばかりだったが

 上層で回収した物の中に、属性の獣に纏わる資料を見つけた。

 調査班の話では、アマテオは既に3体の属性の獣を発見しているらしい‥

 あいつら‥属性の獣が持つ紋印を奪う気じゃ無いのか!?」


「まぁ、ハキホーリよ、そう急ぐでない。

 相手はあの属性の獣じゃぞ。いかに強大なアマテオと言えど

 神族に次ぐ影響力を持つアレ等をそう簡単に討伐(とうばつ)できるはずもなかろう?

 それも、侵略戦争の片手間にとなると尚更ありえん」


「うむ‥しかし、気になるな。サルホーガ・イデラケウスがこの地に現れた理由‥

 もしも、この地のどこかに属性の獣が潜伏しているとすれば‥‥あるいは」


ハキホーリの杞憂に対し、否定的な老人コクラクに対し

辻褄があう事で信憑性を得るオーケン。


「‥そうじゃの‥‥もしも、本当にアマテオが属性の獣を討伐する手段を持つのならば

 地方同盟の抵抗は全て無に帰すじゃろう。いや‥それだけじゃない済まん。

 属性の獣が保有する紋印は、どれも強力じゃ、それか一つでもアマテオに渡れば

 もう帝国に逆らえる勢力は、異界の何処にも居らんじゃろう

 異界管理局ですら、もう手に負えん」


「オ‥ォ!‥オーケン!!大変じゃねぇか!どうするんだ!」


「そうなったらもうお手上げだな。みんなで北限大陸にでも移住するか」


「馬鹿なことを言うでない‥‥しかし、調べる必要はあるのう。

 オーケンよ、儂は(おきな)の所へ報告に戻る。しばらく戻らんかもしれんが

 明日のアンガフ代表との会議忘れるんじゃないぞ」


そう言うや否や、窓からを開け姿を消すコクラク。


「わかった。任せておけ‥‥って、返事くらい聞いてから行けよ爺さん。

 ああ見えて結構焦ってんな。

 まぁ、こればっかしは、俺達にどうこうできる領分じゃない。

 爺さんに任せよう」


「俺は‥気が気じゃねぇよ」


「それよりもハキホーリ。他にも報告があるんだろう?」


「あっ‥‥ああ。そうなんだ‥」


先ほどとは異なる具合で顔色を悪くするハキホーリは、

酷く言いづらそうに言葉を詰まらせる。


「ハキホーリ?」


「俺の‥せいかもしれないんだ‥‥少年兵達の‥事」


「どう言う事だ?」


「実は俺‥作戦前にデウムから聞いていたんだ

 宰相のアイーロンと共に白銀騎士隊隊長のヤンク・カルシャンが来ていた事

 それを‥俺、見間違いのデタラメだと思って‥」


「突っぱねたのか?」


「‥ああ。まさか、こんな事になるなんて

 思いもしなかったんだ‥あの時‥もしも‥」


オーケンは、ハキホーリに近づき肩を叩く。


「お前はミスをやらかした。結果的にそれで少年兵が沢山死んだ。

 ‥‥そうだな?」


「‥‥ああ。覚悟はしている」


「ハキホーリ、その重責、耐えてみせろよ」


「ああ‥‥‥」


「‥‥‥」


「は‥え?‥いや!まさかそれで終わりか!?」


「他に何か言って欲しいのか?」


「いや‥俺はてっきり半殺しにされて追放されるのかと‥

 それか‥打ち首とか‥‥」


「俺にそんな権利があると思うか?

 それによく考えてみろ、結果論だがお前の判断は正しかった。

 あの時、その話を鵜呑みに慌てふためいてみろ

 今日の作戦、もっと悲惨な事になったかも知れない。

 そもそも、俺達にはこの時を除いでチャンスは無かったんだ。

 だが、お前に失望したのも事実だ。

 お前が、ここまで考えて判断した事なら良かったが

 思慮深さを欠いて、子供の言う事だと聞く耳を持たなかったのはお前のミスだ」


「‥‥ああ、でも‥‥罰でもないと‥」


「残念だが、そう都合よく罰は用意されない。

 強いて言うなら、そのやるせ無さが罰なのだろう

 無論、お前に全ての罪を押し付けて

 糾弾し立つ瀬がなくなるほど追い詰める事もできる。

 だがな‥‥俺にも似たような経験がいくつもある。

 取り返し用の無い失敗を何度もしてきた‥‥

 自分じゃどうにもできないような失敗から

 くだらないミスの連発まで数多くな」


「‥‥畜生‥マジに最低の気分だ‥」


「もう同じ失敗をするなとも

 次からミスするなとも‥俺は言わない。

 だが、同時にお前は一生許されないだろう」


「‥っ‥‥ああ‥俺は人殺しだ‥しかも、子供を‥」


「その背徳心は、一生消えない。

 今後どのような栄光がお前にあったとしてもだ。

 これからお前は沢山の侮辱を受けるだろう。

 実際に言葉として否定される事や

 自己嫌悪として自身に否定される事もある。

 それでも救いは必要だろう。

 だから、俺はお前を許す‥‥俺は甘いか?」


オーケンの慈悲に、ハキホーリはどんな言葉を返したのだろうか。


過失により罪を背負った人間とっては

肯定も否定も苦痛でしかない。


だが悪意の有無に関わらず多くの場合、被害を受けた側が無条件に善性を持つ。


オーケンにはこの不条理を正しい真理で見つめる事できた。


それはどちらの立場も理解できる生き方をしてきた彼だからこそ

会得できた心の姿勢があったからだ。


オーケンが指導者として、選ばれ、ここに居るのは

一重に道徳傾向に流されないこの人間性によるものだった。

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