-【4-7】-いやジャンケンでもないわ
ケンテッカの工房を後にした二人は、
帰路につく前にしばし寄り道をしていた。
先ほどの話を自分なりに咀嚼しているリュンクを慮ったオーケンが
「良い場所があるんだ」と誘ったからだ。
オーケンは、ケトアト街区間を隔てる、壁の上を歩きはじめ
その後に続いたリュンクは、そのまま海側方面限界までやってきた。
「こんなとこに居て大丈夫なの?捕まんない?」
ここまで来る途中でパトロールをするアマテオ兵の一団とすれ違った事で
リュンクは臆病風に吹かれていた。
それは正常な感性である。
性分からして、おちゃらけていて忘れてしまいそうだが
この男は重要な作戦を前にした一団の指導者なのだ。
本来ならば、例のアジトに籠っている方が望ましいだろう
だが「関係ないね」とでも言いたげにオーケンはいつものように笑い北東の方角を指差す。
「あれを見てみろ。海を跨いだ更にその先、あの霞んだ白い大地が見えるか?」
オーケンの指差した方向、その彼方に
線の様に薄く見える白い大地がある。
リュンクはそれを知っている。
あれは『大雪原』だ。
フロエが脳内で見せてくれた極寒の大地。
「太古、この世界まだ海ばかりだった頃に、
あの大雪原を支配していたと伝えられる、とある生物の伝説を知っているか?」
リュンクは首を横に振る。
伝説どころか、この世界の事など殆ど知らない。
だが、オーケンの口から出た「伝説」の類、その言葉の魅力に強い興味を持つ。
「聞かせて」
リュンクの爛々とした目から、十分な期待値を感じ取ったオーケンは
演技がかった声色で詩人役を興じる。
「吹雪荒れる大雪原の支配者、それは白銀の巨竜
破壊の神より出づる、均衡の権化にして、竜族が頂点三位その一角」
「均衡の権化?」
「そう。より学物的に言うなら文化省により制定された災害指定生物の一体だ」
ゾクゾクと体が痺れ想像力が興奮に変換され体を駆け巡る。
災害指定生物。
災害とは、自然環境から生じる最大単位の不可抗力である。
それを頭に冠する生物、その一挙一動が巻き起こす一切が
災害であると認められる程に人類の抵抗を蹂躙する理不尽な暴力の化身。
「その名前を、白銀竜アルポワンサー」
オーケンは伝説を語る。
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その生物。
数多の勇者を退け、数多の獣を喰う。
四肢にて雪原を踏み。
吹雪を孕む4枚の翼で舞い。
一角より瞬く閃光を放つ。
その体は白銀を許され。
その体は破壊を退け。
その体は紋術を弾く。
ゲゲブアーロ三位の下僕にして
大雪原を支配する氷雪の王。
白銀竜アルポワンサー。
竜が竜として生きられる最後の時代を作り
その誇り高き生物としての矜持を貫いた最後の竜。
その身、死して尚、獰猛な脅威足り得る。
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「と、まぁ、伝説の一節を掻い摘んで言うとこんな感じだ。
雪原を支配する巨竜。どうだ?これ以上ない浪漫だろう?」
リュンクは、ゴクリと生唾を飲み込む。
未界にある伝説の類は、その殆どが作り話
たとえ、その伝説を追いかけたとしても、最後に行き着くのは
超常の事実ではなく、無粋な真実だ。
「それは伝説なの?それとも本当に‥‥」
「どうした旅人。夢想の住人にしては勘が鈍いじゃないか?
お前さんは、その伝説の一端を史実として聞いているはずだ」
「史実として聞いた‥‥?」
その時、脳裏に「白銀」と言うキーワードが浮かび
オーケンが言わんとする「史実」とやらが正体を現す。
「もしかして崖崩しの特攻戦の話に出てきた白銀の騎士と
白銀竜アルポワンサーって何か関係するの?」
「うーん。いい流れだが、もうひと押しって所か。
そうだな。そこにお前さんが、今さっき得た知識を付け加えてみな?」
今さっき得た知識。
そう言われて頭に浮かぶのは竜材の知識以外に無い。
白銀の騎士と白銀竜、そこに竜材。
「もしかして‥白銀騎士の鎧は‥アルポワンサーの?」
パンパンッグッ!!
オーケンは、「ご名答ッ!」と手を叩いた後、高速で見たこともない踊りを舞い
独特な表現で賞賛を送る。
「風呂場で話した白銀騎士の強さ。おかしいとは思わないか?」
「そりゃおかしいよ。一人の人間が何百人もの人間を一瞬で弾き飛ばすなんて、まっ‥‥うん」
リュンクは、うっかり「漫画じゃないんだから」と付け加えそうになって口をつぐむ。
「俺も、自分の目で見なけりゃ信じはしなかった。
だが、どんな突拍子のない事柄にもカラクリがあるものさ。
伝説と謳われるカテゴリにおいてもそれは変わらない」
「カラクリ?」
「まぁ、有名な話で、普通ならこんなに遠回しに語る様な事じゃないんだが。
白銀騎士隊が白銀を冠する由縁。それは白銀騎士隊の着用する鎧が
伝説の白銀竜アルポワンサーの竜材を使って作られた物だからだ」
「え‥白銀騎士全員!?全員が伝説の鎧を着てるの!?」
「そうだ。まぁ全員と言っても、殆どの騎士は鎧の一部に竜材が使われている程度。
だが奴等は違う。あの時、俺と対峙した貫通騎士サルホーガを含めた
アイーロン直属の六騎士は、白銀の鎧を全身に纏っている」
「でもさ、鎧は鎧でしょ?それを全身に着た所で何か変わるの?」
「普通の鉄製甲冑なら、生存率が上がる以外の機能は無いさ。
だが忘れてはいけない。奴らが身に着けているのは、
大雪原の支配者アルポワンサーの竜材で作られた甲冑だ」
壁上の端に座るオーケンは、少し口を閉じ、思案し
海の方へ小石を放り投げ捨ててから竜剣を見つめた。
「詳しい事は俺にも分からんが、竜材には竜族の紋腺が通っている。
竜族の紋腺は、人のソレとは比べ物にならない、正に天然の紋術回路だ。
つまり、竜材で作られた鎧を着用すると言う事は
生物としての性能を拡張する事に他ならない、言うなれば擬似竜族。
そんな鎧を、全身を覆う形で、材料には伝説級の竜材
更に着用するのが大陸で最強だと言われる連中だとするなら‥‥」
「元々強い連中に、更に人間離れさせる鎧を着せれば、一人の力で何百人も吹き飛ばせる?」
「擬似竜族‥‥そこに居るのが一匹の竜だと考えれば、容易い事なのかも知れん。
これがカラクリ。奴らを伝説足らしめている大きな因子はアルポワンサーから得た竜材だ」
ふとここで、リュンクは、とある事が気になる。
「そう言えばアルポワンサーはどうして死んだの?
伝説になるくらい強くて、しかも竜族は不老なんでしょ?」
「覚えているかどうか分からんが‥‥竜材の説明をしている時、
人が狩った竜族は弱い個体ばかりだと言ったが
俺は【とある一匹】を除くと言った」
「‥‥?」
「人が狩った数十匹の竜の中で、一匹だけ弱くない個体が居たんだ」
「‥え‥‥もしかして」
「白銀竜アルポワンサーは、人が狩り殺した。」
「‥‥は?」
「これも伝説の一つだが、最古の英雄がアルポワンサーを仕留めたとある。
しかも、通常の竜狩りを数千の兵団でやる所、数十人の義勇軍で竜狩りを成したらしい」
いや。もう、強さベクトルがめちゃくちゃだ。
白銀竜アルポワンサーから作られた白銀の鎧で強化すれば数百の人間を相手にできる。
体の一部を使うだけでそんなに強いのなら、単純に考えて
アルポワンサー本人は、一体で数万の人間を相手にできる強さを持っていると言える。
それにも関わらず、数十人の人間に負けたと言うのか?
なんだそれ?
ジャンケンか?
いやジャンケンでもないわ。
「少し話がズレたな。要するにお前さんの持つ武器は
そういう伝説に届く可能性を秘めているわけだ」
ならば、竜剣と白銀の鎧をぶつけ合わせたらどうなるのだろう?
単純な矛楯を解消したいと思うのは、当然の発想だ。
「もし。この竜剣で白銀の鎧を切ったらどうなるのかな?」
「間違いなく欠けるだろう」
「え?どうして?同じ竜材なんだから向こうが負ける可能性もあるんじゃない?」
「残念だが。その剣が竜材だと仮定しても、白銀竜の竜材には敵わんさ
ケンテッカが言っていただろう?竜材武器の成形には上位種の鱗を使用して削るんだ。
竜族の種族位とその堅牢性が比例するなら、アルポワンサーの竜材は全竜族の中で2番目に強い。
アルポワンサーは、竜族上位三体の一体だからな」
「全竜族中で二位‥‥なら、竜剣が一位の竜材の可能性はないの?」
「それも無いだろうな。竜族最高位は黄金竜スリック・ヴェント。文字通り黄金の竜だ。
彼の竜材は金色をしている。竜剣の刀身はくすんだ灰色だろ?」
「そっか‥‥なんか悔しいな」
「まぁ、上には上がいる。見上げる事は意欲のある良い事だが
上ばかり見ていては、疲れるし視野が狭まる。
時には下を見て自分の立ち位置を見定める事も必要だ」
「僕には竜剣で十分だって事?」
「いや‥それは分からんが‥少なくとも、
自分の武器の価値を重荷に感じる事は無くなったと見えるが?」
「あっ」
確かに!!
いつの間にかケンテッカから諭された時に感じた
モヤモヤとした緊張感から解放されていた。
もしも、竜剣の扱いに思い悩むリュンクの心中を察し
わざわざ大袈裟な伝説まで持ち出して上の位を見せ
心の中の竜剣の価値を下げて見せたのだとしたら
この大男‥‥できる!!
と言うか、単純に、この「してやられた」感じは、腹が立つ。
「まぁ。別にお前さんを諭して後押しした訳じゃないんだ。
俺は俺で、別に聞きたい事があるから場を整えただけだよ」
「別に聞きたい事?」
「そうだ。リュンクは、これからどうするんだ?」
「え?もう家に帰ってポルシィの作ったご飯が食べたいよ」
「あ‥いや。それは俺もそうだが。そうじゃなくて、これからの人生の話さ」
「人生?」
「少し踏み込んで言うが。お前さん、何か普通ではない道を歩もうとしてるだろ?
もしくは、すでにその道を歩いているか‥」
その言葉に、リュンクの心臓がドドド!ドン!と跳ねて回る。
このまま跳ねた心臓が何かの拍子にポロリと落っこちて壁上から工房街にでも落っこちたら事だ
煤で真っ黒になった心臓なんか胸に納めたら、きっと憎しみだけがパワーアップしてしまう。
「ん、いや。別に根掘り葉掘り聞こうってんじゃないんだ。
俺だって男の端くれ。人に言うのが憚れる物事の一つや二つあるのが当然だと思っている」
「えっと‥‥まぁ、うん。ごめん」
「良いさ。だが、だからこそ、お前さんがケトアトにやってきたのも
同盟アジトで作戦会議に参加したのも物事の流れで致し方なくそうなったと想像に容易い。」
見透かされている。
やんわりと誤魔化してきた事を暴く様に
急に始まったオーケンの尋問のような行為に
リュンクのメンタルは全く防御する術がない。
それを見越してこのタイミングで質問を始めたのだとしたら
人間としての格が違う。
きっとどんな隠し事もすぐにバレてしまうだろう。
「まぁ、それは良いんだ。俺が聞きたいのは、どうしてやって来たのかではなく
ここからどこに行くかだよ」
「ここから?」
質問の意図が見えない。
どうにもオーケンはリュンクの正体を暴こうとしているわけでは無いようだ。
「そうだ。お前さんの腹づもりが気になっている。
その背中に背負った剣がある以上、お前が戦場に携わる生き方をしようとしているのは分かる‥‥
でも、違ったら失礼な事だが、どうにも実戦経験がある様には見えない。どうだ?間違っているか?」
「‥‥いや。その通りだよ」
「そうか。なら、ここからは提案だ」
「提案?」
「非道な事を言うが、お前さんがこのままの状態で、その道を進んで行けば
きっと一年も経たずに命を落とすだろう」
「ッ!?」
「色々と思うことがあるとは思うが。数多の実戦を超えて来た先輩戦士として断言できる。
少し、人よりも優れた能力を持っているのかもしれないが、
それだけで生き残れる程この世界は単純じゃ無い」
薄々。
それはリュンクにもわかっていた。
ハキホーリに剣を突きつけられた時に感じた
どうしようもなく単純で何処までも無慈悲な死の恐怖。
あれが日常のそこらに転がっているなど
考えただけで身震いがする。
「俺も小さい頃は同じだったよ。世界の怖さは十分に理解していると思っていた。
多分、きっと、それは間違ってはいなかったが。
世界が牙を剝くとき、それはいつだって予想の斜め上を行くんだ。
対処できない物事が、対処できないタイミングで複雑に降りかかってくる。
それはきっと、いつの時代、どの世界でも同じ事なんだと思うが。
‥‥なぁリュンク、地方同盟の少年兵達を見ただろ?」
リュンクは、帽子のつばで視線を隠していたが
ここで、ようやくオーケンの顔を見てうなづいた。
「地方同盟の少年兵の9割は、引き取り手のない孤児だ。
先の崖崩しの特攻戦やキンビニー地方侵略戦で親家族を失った奴ばかり。
彼、彼女等がこの時代で生きるには、多くの場合戦場を置いて他には無い。
それは、アマテオに降伏して奴隷兵になるとしても、
俺たちみたいなレジスタンスに加わるとしても同じ事だ。
そうしなければ食う飯にも困る孤独な生活を強いられるからな。
ならば、せめて斜め上の脅威が降りかかったとしても、命を落とす確率を減らし、戦士として他でやっていける様に育てる
それが俺たち大人が、少年兵に頼る上で達成しなければならない義務だと思っている」
「僕も‥それに参加しなければいけないの?」
「リュンク。それはお前が決めるんだ」
「僕が?」
「そう。ここからが提案だ。俺たちは見て分かる様に万年人手不足よ。
正直、マウテラの手も借りたい程にな。だからリュンク。
しばらくの間、そう。実戦を経験して戦士として成長するまででも良い
地方同盟に参加してみないか?」
ここまで迷う事なく異界を進んできた。
それは、自分に課せられた目的に準じる為だったが
こうやって地方同盟に関わったのは只の偶然だ。
だがリュンクは、その偶然に対して必然かの様に振舞ってしまった。
きっかけは、あの3人の勘違いだったが
【悪者を倒してお姫様を助ける】と言うイベントじみたシュチュエーションに
インスタントな能動的感情を突き動かされた事も大きい。
ここでオーケンに問われて思う。
何処か、何か勘違いをしていた。
ここはゲームの世界でも、漫画の世界でも、アニメの世界でもない。
自分を導いてくれるイベントもシチュエーションなんてものも存在しない。
ご都合主義も、おきまりの展開も無い。
と言う事は。
つまり。
リュンクは、あらゆる致死を当然に覆す様な
主人公では無いと言う事だ。
つまらない失敗で簡単に命を落とす
儚い生物の一人に過ぎないと自覚しなければならない。
自分が、只の小学五年生の子供だと。
「参加すると‥僕は、この次の分断監視塔の攻略にも行くの?」
「そうだな‥‥今回の攻略は、次の一手に通じる重要な作戦だ。
だからこそ、入念な準備がしてある。
加えて少年兵は乱戦になる事も無く、揺動がメイン。
実戦を経験すると言う見方をすれば、これ以上に適した状況も無いだろう」
オーケンは、そう言い胸を張ってからいつもの笑みを見せたが、
すぐに真剣な顔に戻り「それでも命を落とす可能性は十分にあるがな」と付け加えた。
どうしよう。
決められない。
リュンクの中で、葛藤が渦巻く。
この葛藤は「やりたい」「やりたくない」の葛藤では無く。
もっと稚拙なもの。
「やった方がいいのか?」と「何もしたく無い」の葛藤だった。
だが、リュンクにはこれが卑怯で幼稚な感情だと理解していた。
今まで子供だからと許されていた「わがまま」が、自分の精神に甘い蜜を垂らし
楽な方法を見せつけてきているのだとわかっていた。
ずっとわかっていた。
自分の周りの大人は怒り叱りつけても最後には許してくれるからと
それがきちんと理解できている事柄だったとしても、甘えた「わがまま」でおざなりにしていた。
きっと、この大人もそれを許してくれる。
オーケンも、ポルシィもきっと「わがまま」を許してくれる。
昨晩からの扱いが、今この状況が、それを証明している。
でも。
だからこそ。
目の前の、この大人に甘えてはいけない。
きっとそれは、この人達の優しさを侮辱する事になるからだ。
リュンクは、俗に言う「良い子」では無い。
すぐ人に変なあだ名をつけて侮辱するし
陰口も文句も特に制限していない。
稚拙でわがままな部分も多い。
だが、そんな彼でも「親切にしてれた相手を侮辱する行為」に対し、
分からないふりをして、おざなりに捨て置き
都合のいい言葉に変換して納得できる程「悪い子」でもない。
「僕も参加するよ」
言ってしまってから
心臓が更にドドンがドン!!と脈打つ。
リュンクが、人生で初めて自分の歩く道を自分で決めた瞬間であった。
リュンクは少し、大人になった。
「覚悟のいる問答だったろう?
それに臆さない返事。
元少年の一人として感心するよ」
そう言い笑うオーケンだが、その笑い方は
今までの安心させる為のあやす様なニカっとした笑い方では無く、
もっと対等な、オーケンという人物、本来の笑顔だった。
「ほれ、リュンク。覚えているか?命交だ!命交をするぞ!」
そう言い右肘を突き出すオーケンに対して
リュンクは少し考えてから、同じ右肘をぶつけた。
「ははは!!こいつめ!生意気な奴だ!!」
そう言いながらもオーケンは心底嬉しそうだった。
-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-
家に帰り、玄関を開けると美味しそうな匂いがしている。
「二人ともお帰りなさい。ご飯にしましょう?」
「おう!帰ったぞポルシィ!」
「ポルシィただいま!!」
そのまま「お腹すいたー」とリビングへ走るリュンクを目で追ったポルシィは、
意地の悪い顔でオーケンの脇腹を突く。
「おふッ!?‥‥なに?」
「時間をかけるって言ってたのに、抜け駆けしたでしょう?」
「‥‥分かる?」
「分かるよ。朝よりもずっと子供っぽくなってる」
「子供っぽく?」
「ええ」
「いや。あいつはアレで大事な決断をだな」
「違うよ」
「?」
「子供っぽくなってるのは、あなたよ」
「‥‥‥‥」
「ふふ。仲良くなれてよかったわね」
「‥まぁな」
「ねぇ!!二人ともまだぁ?ご飯食べようよ!!」
リュンクの催促に「ごめんごめん」と言いながらリビングに向かったポルシィの背中を見て
オーケンはあご髭を撫でながら言う。
「全く‥‥敵わないねぇ。」
そう、オーケンはニヒルに笑い
今晩、絶対に嫁を抱こうと決めたのだった。




