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WSS/1-異界冒険譚  作者: たかしモドキ
第4話「コントかな?」
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-【4-1】-無駄にニヤニヤと作り笑い

なんとなく行きずりでやってきた地方同盟なる集団のアジトにて

リュンクは、只今手持ちぶさたに陥っている。


アーテリスの甘々会合が終わり、アジト内の雰囲気がお疲れ様ムードに包まれ

段々と、アジト内の人口密度が減少していくと

必然的に場に残るのは目的を持ってそこに居る者達だけになる。


ある者は、食事を取り始め

ある者は、話し足りないと言った様子で談笑混じりの会議を続け

ある者は、ポロ切れに包まれ仮眠を取る。


リュンクは、異界に放り出された時と同じ心境で

誰かに手綱を引いてもらうのを待っていたが

それを期待するあの三人組は「オーケンに話をつけてくる」と言ったまま

一向に帰ってくる気配がない。


ふと、我に帰れば、この世界において如何に自分がフラついているのかを自覚する。


その姿たるや、体育の授業で中の良い友人チームからあぶれた時の有様によく似て、

無駄にニヤニヤと作り笑いを捏ね、挙動は不審極まりない。


本当に情けない事だ。


ドンっ!とその情けない背中を叩き、

ドスンっ!っと肩に手を置く者がある。


「んぶっ!?」


心臓が大きく跳ね上がり、スロットルを解放したアメリカンバイク宜しくな力強く鼓動し始める。


リュンクが振り返ると、そこに居たのは、

見上げる程の大男オーケンと目つきの悪い老人コクラク。


「あっあの、ごめんなさい!!」


なぜかその二人を前にして、反射で謝るリュンクに、

オーケンはあご髭を擦りながら疑問の表情で喋り出す。


「なんだぁ?少年。なにを謝る事がある?」


「あ、いや。あの、剣を壊しちゃったから…かな」


そういえば、その事自体を謝っていなかった事に気付いたリュンクは、

条件反射の様に吐き出した『ごめんなさい』を、オーケンにさしあげる事にする。


それを聞いたオーケンと老人コクラクは、形容しづらい表情で見合った後、

二人して大きな声で笑い始める。


「ウハハ!!そうだな!そりゃそうだわな!」


オーケンは、自分の太ももをバンバンと叩きながら笑いの余韻を殺し、

同じく額に手を当て笑う老人コクラクに「たまんねぇーな」とこぼす。


大人がこんなにも素直に愉快な感情を表現するのをリュンクは、見たことがなかったので

なんともリアクションに困っていたが、オーケンはそんな事お構い無しだ。


「さぁ行こう少年」


「え?」


「飯はまだだろう?付き合いな」


挿絵(By みてみん)


大男は、リュンクの返事なんか知ったこっちゃ無いとでも言わんばかりに

彼の両肩をがっちりと掴み、アジトの出口まで連れて行く。


その後に続く老人コクラクは、壁に掛かった深緑の生地をオーケンに投げてよこす。


「ん?少年。お前さん外套(がいとう)は?そんな格好じゃ体に悪いぞ」


「あ、いや」


「ああ。そういやこの辺りの人間じゃないんだったか?爺さん!子供用の外套(がいとう)も取ってくれ」


老人コクラクは、リュンクを上から下までジロリと見渡し、部屋の脇に積まれた深緑の塊から、

さっきオーケンに渡したものと同じ厚手の生地をリュンクにも投げる。


「どうやって着るのか、わかるかの?」


コクラクの質問に答える為にリュンクは、生地を広げて見る。

どうやらこのカビ臭い生地は、ポンチョの様だが

彼は生まれてこの方、そんなものを着たことがない。


その様子を見たオーケンは、手早く自分のポンチョを着込み

着衣に戸惑うリュンクの面倒を見る。


「どれ、バンザイしてみな。そう、そこに頭を通すんだ…そうだ。よし!」


「キンビニーの夜は冷えるからの、昼間は暖かくても外套(がいとう)は持ち歩く方が良いぞ」


老人コクラクは、年寄り特有の徳のある事を言いつつ、出口へ続くドアを開けた

それを聞いたオーケンは「年寄くせぇなぁ」と言いながら、リュンクの背を押していく。


リュンクは「夜の山道を進んできたが、さほど寒さを感じなかったけどな」と思ったが

あえて口に出す必要はない。


外に出ると、もう辺りは真っ暗になっていた。


時計に該当するものがないので、正確な時間は分からないが

結構な時間をアジトで過ごした様だ。


オーケンと老人コクラクは、ケトアトの街路にごった返す人々に

自然に混じり、ぐんぐんと進んでいく。


それにはぐれない様に、後ろを歩きながらリュンクは物思いに耽り両親の事を思い出していた。


リュンクは両親と、特に父親と深く接する機会が少なく、

それ故かあまり良いイメージを持っていない。


彼の父親は、決して悪人ではなく歴とした親として申し分無いが

『亭主関白』と言う言葉がしっくりくる、

高圧的でよく感情のままに怒鳴り散らす人だった。


それの影響を受けてかリュンクは、大人の男と言うだけで

どういう風に接すれば良いのかよく解らなくなってしまう

詰まる所、オーケンや老人コクラクとどう接すれば良いのか分からないのだ。


ふと、人混みを掻き分け街路を進むオーケンを見つめると、

老人コクラクと会話しながら歩く(かたわら)

なぜか定期的にリュンクの方を振り返り見つめてくる。


ドキンと、胸が跳ねる。


リュンクは、何か謂れもない疑いを

掛けられているのかも知れないと思い、帽子のツバで目線を隠した。


そうしていたものだから、リュンクは、

立ち止まった二人の背中に勢い良くぶつかってしまう。


「ここで良いか…良いだろう?」


飲食店と思わしき店の前。

特筆することも無い、この街の意匠で

横長のありふれた建物の外観

どうやらここで食事をとる様だ。


「ふむ。どうせお主の払いじゃからの、儂は酒が飲めればどこでもええわい」


「っけぇ〜ケチくせぇジジイだな!えぇ!?」


口をひん曲げて悪態をついたオーケンは、店の扉を開けて入って行くが

その時に、飲食店特有な、胃袋へダイレクトに突き刺さる匂いが漂った。


これには、空腹を感じ辛くなっていたリュンクの胃袋も穏やかでは無い。


「何しとる。お主も早く入らんか」


「うん!!」


コクラクの催促に従い、店内に足を踏み入れた。

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