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WSS/1-異界冒険譚  作者: たかしモドキ
第3話「本当に殺されると思った」
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-【3-8】-アマテオ兵も泣いて逃げるイチモツ

一連の出来事でガヤつくアジトだったが


そこに地方同盟指導者のオーケンが颯爽と現れた事で

室内の雰囲気がガラリと変わる。


「なんだなんだ!何をそんなにピリピリしてんだ?いつも言ってるだろうが!

 イライラしたら便所行って一発スッキリしてこいってな!!!

 俺なんか朝からスッキリしっぱなしよ!見ろこの爽やかな顔を!!」


ニカーっと白い歯を剥き出しに見せつけるオーケン。

心なしか肌に油が乗っている。


「そのせいでアマ兵を撒くタイミングを逃したのを忘れん様にの」


フンフンと鼻息を荒くするオーケンの隣に、

厚手のポンチョで全身を隠したガタイの良い老人が現れ呆れた様にツッコミを入れる。


「まぁまぁ!そう、小言を言うなよ爺さん。

 イラついたってんなら、ほら、奥の便所でも行ってスッキリしてきな?

 まだ使いもんになるんだったらの話だがなぁ!!えはははは!!!」


老人は、煽るオーケンを鋭い目で睨みつけた後、

ゆっくりとオーケンの頭に右手を乗せてわしゃわしゃと動かし始める。


その手は異常なほど傷だらけで、指の先端も何本か足りない。


手だけではない、顔や首にもおびただしい量の傷が見えるが

どれも古傷で、リュンクには、老人が歴戦を超えた老兵に写った。


「心配には及ばんよ。お前さんを待っている間に

 わしもひと休憩させてもらったんじゃ。

 しかし手が洗えんで困っていた所よ。悪いの」


「ははは‥‥‥は?」


「ちなみに、わしは右利きじゃ」


「ぉぁあああ!!!きったねぇえええ!!」


オーケンは、老人の腕を強引に弾き、両手で髪をバサバサと払う。


アジト内に笑い声が出始める。


「うぅううう」


その笑い声に混じり、何かの唸り声が聞こえる。


右腕を抱え込みうずくまるハキホーリだ。


すっかり忘れていた。


「よぉ〜ハキホーリ!遅れて悪い!息子をあやしていたら遅くなってな!」


オーケンは、心配する様子もなくジョークを言いながら

ハキホーリの顔を覗き込む様に腰を下ろした。


「うぅ‥‥嘘つくなよ‥‥あんたの所は子供いないだろ」


「おいおい。お前さん、さっきの話聞いてなかったのか?

 爺さんのナニは健在だったらしいぞ?アマテオ兵も泣いて逃げるイチモツだ

 次の作戦で使えるかもな?作戦名はジジイスティックオペレーションで決まりだ」


「オ‥‥オーケン‥それどころじゃねぇ‥んだ」


そう言いながら、プラプラと揺れる右手首を見せつけるハキホーリ

オーケンはそれを見ながら再度、無精髭を擦る。


「ふーむ。痛いのか?」


「いっ‥‥痛てぇ」


「ここが痛いのか?」


オーケンは、デウムの右手首を指差しながらそう言う。


「あぁっ‥そうだ」


「ふむ。じゃあここは?」


そう言ったオーケンは、次に

全く関係のないハキホーリの左側の肘を指差す。


「えっ?‥‥いや、そこは痛くない」


「ふーむ、ここは?」


再び、右手首を指差す。


「あぁ‥そこだ、そこ!」


「ここは?」


「っえ?‥‥いやっ‥だからそこは痛くない」


オーケンは、何がしたいのか

負傷した右手首と、左の肘を交互に指差し始める。


挿絵(By みてみん)


「ここは?」


右手首。


「痛い」


「ここは?」


左肘。


「痛くない」


「ここは?」


右手首。


「痛い」


「ここは?」


不意に右手首。


「痛くない」


「はは!!ハキホーリ!お前さん引っかかったな!

 そっちは右手首だ!!おあ!!痛てぇ!!」


見るに見かねた老人が「馬鹿者」と言って、オーケンの頭を殴る。


「こりゃ痛そうじゃのう、大丈夫かハキホーリ」


「あぁ‥‥コクラク様ぁっ‥‥こんなに痛てぇのに、オーケンが虐めるんだぁ」


「おーおー可哀想にのう。そこが痛いんじゃのぉ」


「‥‥っああ、痛いなんてもんじゃねぇでずよ!!」


「ほうほう。痛いのかの、それじゃここは、なんと言う?」


コクラクと呼ばれた老人は、なぜか自分の頭をトントンと指で叩く。


「っえ?‥おっ‥おでこ?」


「馬鹿もんがッ!!そこは「ひたいです」じゃろうがッ!!!」


何とも理不尽なキレ方をした老人コクラクは、バコーンと、結構な強さで

ハキホーリの頭を殴ったが、その衝撃で痛覚の限界を迎えたのか

そのまま白目をむいて気絶した。


どうやらオーケンとこの老人は、ふざけさせたら最悪の組みあわせの様だ。


「あーあ。ひでぇ爺さんだな。おーい!ジョラピオ隊の奴!こいつを介抱してやれ」


オーケンがそう叫ぶと、灰色服の人間が集まり

ハキホーリを抱えて、奥の部屋へと消えたが、その中にはアテテロの姿もある。


リュンクは、始終を傍観していたが二人のやりとりに思わず笑ってしまい

はっと、口元を隠した。


ひとしきりふざけて満足したのか

オーケンは、先ほどハキホーリと一緒にいた剣士達を集め

何かを話した後、リュンク達の目前に、彼等を並ばせた。


リュンクは、気まづくて、帽子のツバで視線を(さえぎ)ったが

オーケンの大きな手で背中をトントンとされて上を向く。


「さぁ。仲直りをしよう」


オーケンは、リュンクの目を見て諭すように優しくそう言った。


「ぁ‥うん。わかったよ」


リュンクは、いつも学校でするように謝ろうと

帽子を脱いでから頭を下げる。


「ごめんなさ」


と、言いかけたところで、オーケンがその言葉を手で塞ぐ。


「違うぞ少年。俺は仲直りをしようと言ったんだ。

 謝れなんて言っていないぞ?」


「?」


何か、リュンクの感情の中に、ゾワゾワとした感覚が広がったが

それの正体は、今のリュンクには解らない。


「知らないのか少年?仲直りはこうやるんだ」


そう言って、オーケンはリュンクを正面から抱きしめ、背中をバンバンと二回叩いた。


「こいつで完璧よ。な?ほら、やってみな」


ポカンと口を開けるリュンク。

何やら背中が暖かい。


しかし、オーケンはそう言うが、リュンクは心配だ。


向こうは自分の抱擁(ほうよう)を受け入れてくれるのか、

大の大人が、子供に対してそんな(へりくだ)った事をしてくれるのだろうか?


そう思い、まごついていると、剣士達の方からリュンクに近づき

全員がオーケンがした様に、抱擁と背中バンバンをワンセットでしてくれた。


それに応えるように、リュンクも、相手の背中をバンバンと叩く。


オーケンはそれを見て、変な顔をしながら手のひらを上に向けたポーズをとっている。

それは、アメリカのコメディアンがイカしたジョークをかました時のスタイルに似ていた。


デウムと、ゼオにも同様に「仲直り」を要求したオーケンは、

最後の最後に、大人たちに対して言う。


「さて!俺とも仲直りをしてもらおうか!!えぇ?

 ぶっ壊れた俺の剣の修理代はお前さん達からせびるからな!!

 ケンテッカに良い材料で作り直してもらおーっと!!」


心底嬉しそうにそう叫んだ後に

「オラオラ!とっとと金をよこせ!」と

集金に勤しむオーケンを見て


リュンクは、色々と台無しな気がした。

挿絵(By みてみん)


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