-【2-8】-今時分芸人でもしないくらいのオーバーリアクション
残酷な表現があります。
注意してください。
話が逸れたが離島の事だ。と
フロエは、再び例の両手をポンと合掌させる
ジェスチャーを繰り出し会話を整える。
「キマセ離島には地底湖があり、そこに尊主の神殿がある」
「神殿?」
「そうだ。小さく侘しい神殿だが、今は尊主を祀る最後の神殿になる」
「そこに行くと何が起こるの?」
「うん……これも何がどうとは言えないのだが、この竜剣を持ち神殿に赴けば
悪神を打ち倒す方法の手がかりが見つかる…らしい」
先ほどからフロエは、竜剣の事にしても、この離島の話にしても
「何がどうとは〜」やら「〜らしい」など
何か、どうにも引っかかる言い草で
本人の自身のなさが言葉に見え隠れしているのは明らかだった。
そういう疑いの目が、リュンクの顔に出ていたのだろうか
フロエは、視線を逸らし、彼が何かいう前に自分から喋り始める。
「まぁ…その、実はだな…私は尊主から直々の使命を与えられた訳ではないのだ」
「えー」
「…し…仕方がないだろう!!尊主からその伝えを聞いているスリックはくだらない部族にうつつを抜かし!
アルは死んだ!ケィクホッグに関しては何処にいるかも知らんのだ!!」
そんな、誰かも知らない人達にキレながら言い訳されても困るのだが
リュンクは「この娘、真面目だけど頭悪いタイプだ」と思った。
「とにかく!そのキマセ?とかいう島に向かうんだね?」
「うむ!悪神といえど、曲がりなりにも神族だ。普通の方法で打ち倒す事など叶わないだろう
武器か兵器か…全容は分からないが、それが必要になる事だけは確かだ」
確かに最終兵器的なニュアンスなのはすごく興味がそそられるが
それがどのような代物かわからなくてはうかつに期待を持てない
竜剣の意匠で、女神のセンスに疑いがあるからだ。
「行き先はわかったけど。他の仲間とはどこで合流するの?フロエ頼りなさそうだから
できれば強そうな人と一緒に行動したいんだけど」
「それはできない」
「え?どうしてさ」
「尊主が存命だと知れば、どの様な事態になるかわからない。我々も、一枚岩では無いのだ
既に、悪神に降った者も多い」
そういえば例のウンコ女神も、自分で家族を置いて逃げたと言っていた。
自業自得といえばそこまでか。
「しかし望みが無い訳では無い。さっきも言ったが、スリックとケィクホッグはおそらくは存命
奴らに事情を話せば尊主の為に必ず動くだろう」
「そんなに強いの?そのスリックさんと、なんたらホッグさんって」
「ああ。この異界において最強に近い実力の持ち主達だ。安心して良い!」
「そ…そうか」
丸目に頬を赤め、得意そうに豪語するフロエだが
その実力者を持ってしても、違う世界に敗走するほどに女神は追い詰められたのだ
その二人と合流したとして決して安心できる状況とは言えないだろう。
「それなら、先にその2人に会いに行こうよ。そっちのほうが安心じゃない?」
悪神の討伐以前に、この異界にどの様な危険が待ち受けているか分からない。
暴漢達や野生動物などにあっけなくやられてしまう可能性だって大いにある。
特別な力やら、聖剣やらがあったとしても、
いきなり後ろから刺されたりすれば、いちころである事に変わりはない。
「いや、奴らの捜索と説得は私が承る。警戒心の高い奴らだ見知った顔だけの方が都合がいいだろう」
「…え?なに?どうゆう事?」
「ん?だから説得は、私に任せて欲しいと言ったんだ」
「いやいや、そう言う事じゃ無い」
「?」
「フロエは、一人で二人の説得に行くと?」
「うん」
「僕は?ここで待ってれば良いの?」
「いや、だから君はキマセ離島に…」
「嘘だろ!!もしかして僕一人で島に行かせるつもりなの!?」
マジか!!マジかこいつ!!マジか!!!
リュンクは、今時分芸人でもしないくらいの
オーバーリアクションでズリズリと砂浜に転げ落ちて見せ
そして半ば吠える様に、怒涛の言葉を畳み掛ける。
「どうやって!?道わかんないよ!?」
「ぁ…いや、北に山を越えれば町があるから、そこで…」
「ふんふん!!で?離島でしょ!?船乗らないといけないよ!?」
「そ…それも、北に行けば港町があって…」
「港町?へぇ〜良いねぇ?船に乗れるんだ?で?タダで乗れるの?この世界にはお金ないの?」
「ぃ…いや…お金は…いると思うけど…」
「で!?僕お金なんてないけど!?フロエはお金持ってるの!?」
「……ない」
「え!?ないの?じゃあどうするの?え?知らない世界で子供の僕にお金稼げって事?」
「いや…子供って……そういうのでは……ぁ!いや!今は無いが、現行の通貨を一度でも見られれば作り出せるぞ!」
「え?作るの?お金を?見たまんま同じものを?」
「…そう!そうだ!私は作れるんだぞ!…フフン!ほうら!解決じゃないか?」
「ダメだろ!!それ!!!偽金じゃないか!!そんな事したら捕まるでしょ!!」
「…ご…ごめんなさい」
「きぃ〜!!!」
リュンクは、ふと冷静に「僕ってこんなに頭の回転早く、相手を罵れるんだな」と、
自分の新しい引き出しに気づいた。
あんなに堂々としていたフロエをここまで捲し立てたのだから、彼のべしゃりも捨てたものではない。
「だから一緒に行こうよ!二人で協力すればお金とか、船とか色々解決できるって!」
そもそも、完全に無知な異世界を
子供一人で旅させるなんてどう考えてもおかしい。
メリットが一切感じられない。
リュンクは二日足らずで音を上げる自信があった。
「それは、できないんだ…すまない」
「まだそんな事!!」
また畳み掛けようとしかけたリュンクは、
フロエの行動を見て喋るのをやめる。
砂浜から船の上に居る彼女を見上げる形になる。
どういう訳か、いきなり下半身部分の衣装をたくし上げ始めた彼女は
目を伏せながら、その中身を見せつけた。
「こういうわけだ。日中は人目に着くのだ」
フロエが見せつけたそこには。
本来あるはずの両足が、胴体を大きく巻き込む形で欠損していた。
何か鋭く薄いもので半分まで切断され、
断ち損ねた残りは強引に引きちぎられた。
そういったストーリーが連想できる、歪な断面。
こぼれ落ちそうな中身は、水の様な透明な液体に包まれている
それは「無理やりに生きている」そう表現するのが一番しっくりきた。




