総集編(11話~21話)AI漫画一気読み
第11話 坂本龍馬は馬を射て将を欲す
第12話 坂本龍馬は黒船の噂を聞く
第13話 坂本龍馬は浦賀まで歩く
第14話 坂本龍馬は桂小五郎と黒船を見物する
第15話 俺と土佐藩士と品川を警備する
第16話 坂本龍馬は鬼小町と剣の稽古をする
第17話 坂本龍馬は桂小五郎と試合する
第18話 坂本龍馬は桂小五郎と親友になる
第19話 坂本龍馬は佐久間象山の塾で砲術を学ぶ
第20話 坂本龍馬は佐那と結ばれる
第21話 坂本龍馬は土佐に帰る
坂本龍馬は、小千葉道場へ入門してから毎日のように通っていた。
剣術修行には熱心だったが、師の娘、千葉佐那子に会いたい気持ちも大きかった。強くて美しい相手ほど燃えるのだから、難儀な性分である。
兄の重太郎とも親しくなり、佐那子が鬼小町と呼ばれていることを知った。褒め言葉のつもりで本人へ伝えると、「私は鬼ではありません」と怒られた。姉の乙女は仁王と呼ばれて喜ぶが、女が皆同じわけではない。兄と仲良くなる作戦は成功したのに、妹との距離は自分の口で遠ざけていた。
そんな折、浦賀へ黒船が来たという噂を聞いた。帆がなくても動く異国の軍艦。難しい政治の話より、まず実物を見たかった。
「稽古は明日もある。黒船は今日しか見られんかもしれん」
そう言って出かけた街道で、桂小五郎と知り合った。練兵館の塾頭と分かると、龍馬はたちまち愛想をよくした。桂は軍艦による威圧を案じていたが、龍馬は巨大な船を前に、仕組みや値段が気になった。国の危機を見る男と、珍しい船を見る男では、同じ海でも眺めが違う。
江戸へ戻ると品川の警備を命じられ、慌てて鎧兜を買った。だが戦は起こらず、黒船は翌年の返答を求めて去った。高い武具だけが残り、龍馬は次の来航前に安く仕入れれば商売になるのではないかと考えた。
稽古へ戻れば、佐那には相変わらず勝てなかった。それでも、相手の力を流す技や足運びを学ぶうち、剣そのものが面白くなっていた。強い者がいるなら、その強さを見たい。龍馬は練兵館へ通い、ようやく桂との立ち合いを取りつけた。
結果は完敗だった。技を出す前に打たれ、参考にする暇さえない。しかも佐那まで桂を好男子と評する。少しは遠慮してほしい男だった。
桂に政治の会合へ誘われると、龍馬は仕返しを思いついた。間抜けな発言をすれば、連れてきた桂も恥をかくだろう。
「大砲をようけ並べたらえい」
ところが藩士たちは本質を突いたと感心した。溝渕広之丞の失敗談で話をそらしても、国事には話術も必要だと褒められる。逃げるつもりが、佐久間象山の塾へ通う話になった。父への手紙に異国人の首を取ると書いた手前、勉強は嫌だとも言いにくかった。
象山の講義は難しく、龍馬の理解は途中で止まった。溝渕が帰宅後も書物で調べていると知ると、努力には感心したが、自分の本業は剣だと納得することにした。月謝も惜しい。退塾を告げに象山の屋敷を訪ねたところ、襖の向こうから桂の声が聞こえた。
「松陰先生、密航など死罪になりかねません!」
吉田松陰は、死を恐れずアメリカへ渡ると言い、象山も止めようとしなかった。聞いた者まで共謀を疑われるかもしれないという話に、龍馬は手を引っ込めた。月謝より命が惜しい。挨拶は手紙で済ませようと、足音を殺して逃げ帰った。
その後、佐那との仲はようやく深まった。
「私も、龍馬さまを好いております」
胸へ寄り添う彼女の言葉に、龍馬は一年近い苦労が報われたと思った。その夜のことは、珍しく誰にも語りたくなかった。
嘉永七年三月、日米和親条約が結ばれ、松陰の密航失敗も桂から聞いた。天下は騒がしかったが、龍馬には佐那との別れも大問題だった。重太郎から結婚や道場を任せる話まで持ち出されると、慌てて田舎で小さな道場を開ければ十分だとごまかした。
五月、出立前の最後の立ち合いでも、龍馬は佐那に負けた。全力の剣を見せた彼女は、竹刀を下ろして言った。
「再び江戸へ来て修行してください。お待ちしております」
悔しさと、別れがたい気持ちが胸に残った。定吉も再修行を後押しする手紙を用意してくれていた。龍馬は帰国後、もう一度江戸へ出る許しを願うと約束した。
六月末、懐かしい土佐へ戻った。剣も学びたい。佐那にも会いたい。だが国元でも異国と国の行く末が語られ、江戸を出る前とは違う風が吹いていた。




