↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の名は坂本龍馬(AI漫画)  作者: MOKOTA
第一章 青春を謳歌する龍馬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/50

第15話 俺と土佐藩士と品川を警備する

冒頭にAI漫画があります。ページ右上の表示調整/挿絵を表示で表示されます。苦手な方はOFFにしてください。

挿絵(By みてみん)


 浦賀(うらが)から江戸へ戻ると、龍馬は真っ先に小千葉道場(こちばどうじょう)へ向かった。

 四日ほど稽古を休んでいたのだ。それに、佐那子(さなこ)の顔も見たい。どちらが主目的かは、あえて考えない。


「佐那子さん、戻ったぜよ」

「坂本さまは、まず御旅行の垢を落としてから来たらいかがでしょうか」


 佐那子は一歩下がり、そのまま逃げるように去った。

 龍馬は自分の袖を嗅いだ。旅帰りである。汗。埃。海風。かなり混ざっている。

 臭い。これは逃げられる。


 せっかく会いに来たのに、第一声で退却された。どうしてこう裏目に出るのか。

 代わりに寄ってきたのが千葉重太郎(ちばじゅうたろう)だった。


「坂本君、黒船はどうでした?」

「大きゅうて、まっこと凄かったぜよ。そうじゃ、土産もある」


 龍馬は懐から包みを出した。


「黒船饅頭ぜよ」

「そんな物まで売っちゅうがか」

「昨日まで普通の饅頭じゃったらしい」

「それで売れるんですか」

「売れゆう。まあ、商売いうもんはそういうもんぜよ」


 浦賀は黒船騒ぎで大勢の見物人が押しかけ、半ば祭りのような騒ぎになっていた。

 黒船の名をつけた品まで売られている。幕府は頭を抱えているだろうが、商人には商機である。

 毎年黒船が来れば景気が良くなるかもしれない。いや、国としては困る。かなり困る。


「しかし、まだ帰っていないようですね」


 重太郎の顔が少し曇った。

 黒船は浦賀沖に現れてから何日も留まり、幕府は対応に追われていた。

 江戸城と浦賀の間を早馬が何度も往復し、沿岸の各藩にも警戒が命じられている。

 町では、異国と戦になるのではないかという噂まで広がり始めていた。


 龍馬が土佐藩中屋敷(とさはんなかやしき)へ戻ると、溝渕広之丞(みぞぶちひろのじょう)が血相を変えて駆け寄ってきた。


「おい龍馬! どこへ行っちょったんじゃ。藩命じゃ、藩命!」

「なんですかの、溝渕さん」

「品川の海岸を警備するんじゃ。黒船と戦になるかもしれん!」


 戦。その一言で、龍馬の背筋が伸びた。


 桂小五郎(かつらこごろう)の言っていたことは本当だったのか。

 てっきり少し心配性な男だと思っていた。

 すまない、桂。心の中で勝手に妄想癖扱いしていた。


 だが、すぐに別の問題が浮かんだ。

 戦支度をしろと言われても、何を持っていけばいい。


 龍馬だけではなかった。

 江戸詰めの土佐藩士たちの多くも、本格的な武具など常に持ち歩いてはいない。

 慌てて質屋や古道具屋へ駆け込み、鎧や兜を買い集める者が続出した。


 江戸中で同じことが起こっていた。

 黒船一つで、眠っていた鎧兜が一斉に売れ始めたのである。

 商人だけは動きが早い。戦より先に値段が上がった。

 龍馬もどうにか装備を整え、土佐藩士たちと品川へ向かった。


 品川へ着いた龍馬は、最初こそ興奮していた。

 いよいよ黒船が来る。大砲を撃ち込まれるかもしれない。ここで自分が戦うことになるかもしれない。


 ところが、一日経った。来ない。二日経った。やっぱり来ない。


 浦賀方面を睨んでも、黒船など見えない。そもそも遠すぎる。龍馬はだんだん飽きてきた。


「龍馬、欠伸するなや」

「いや、退屈じゃき」

「警備中じゃぞ」

「黒船は四隻ばあじゃったぜよ。戦になっても浦賀で何とかするろう」


 品川まで攻め込んでくるとは思えない。少なくとも龍馬にはそう見えた。

 実際には、龍馬が浦賀から江戸へ戻る途中、黒船はさらに江戸湾内へ進み、測量まで始めていた。

 それにより江戸中が緊張し、沿岸警備は一気に厳しくなっていた。


 だが龍馬本人は、その一番騒がしいところを見ていない。

 何とも間が悪い。珍しい黒船は見られた。だが江戸がひっくり返るような混乱は、ちょうど見逃した。

 結局、品川でひたすら海を睨むだけの警備は数日で終わった。黒船の艦隊は去っていったらしい。


「なんや、取り越し苦労じゃったかの」


 溝渕が肩を落とした。

 幕府は久里浜(くりはま)でアメリカ側の国書を受け取り、ペリーは翌年に返答を求めると告げ、日本を離れたという。戦にはならなかった。


 龍馬は少し拍子抜けした。あれだけ大騒ぎして、結局帰ったのか。

 黒船は確かに大きく、強そうだった。だが日本中を相手に四隻で戦うというのも無茶に思える。

 もっとも、幕府のやり方を大声で批判する気はない。

 幕政を大声で批判すれば、下手をすると身を滅ぼす。その程度の分別は龍馬にもあった。


「この鎧兜も高かったのにのぉ」

「質屋とか大儲けしてたようじゃの」


 溝渕の言葉に、龍馬は妙に納得した。

 必要な時に必要な物は高く売れる。実に分かりやすい商売の道理である。

 黒船が来ている間に鎧兜は値上がりし、黒船が去れば値も落ちる。

 そこで龍馬の頭に、別の考えが浮かんだ。


 桂は言っていた。これから異国との争いが始まるかもしれない、と。

 もし本当にまた黒船が来るなら、今のうちに鎧兜を安く仕入れておけばいいのではないか。

 権平(ごんぺい)兄貴に話してみようか。

 坂本家は商家の血を引く。こういう時こそ腕の見せどころではないか。


 国難の話を聞いて商売を考えるあたり、龍馬はやはりどこか武士らしくない。


 そしてしばらく後、ペリーが翌年再び来航すると告げていたことが、土佐藩士たちにも伝わった。

 どうやら今回の騒ぎは、終わりではなかった。

 始まりだったのである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。