助産師に転生
カクヨムでも投稿をしています。
目を開けると、相変わらずの青い空の下、ルーズが、どこかで見てあるようなダンスを融合したようなものを踊っている。
その一挙手一投足は、乱れがなく、とても美しかった。
踊り終えると、自分から出てきた火の玉に、ついて訊いた。
「ルーズ、ゲームが終わった直後、体から、火の玉が出たんだけど、何かわかる?」
「それは、ランクが上がった証拠よ。ランクが上がるごとに、魂の色が変わっていくの。最後のGODは秘密ね」
ぷるんとした唇に自らの人差し指を当てて、微笑んだ。
また同じような不快感がしばらくすると、訪れ、目を開けると、赤ん坊の泣く、オギャー、オギャーという音が、そこら中に響き渡っているのがわかった。
自分は、白衣姿になり、妊婦が、赤ちゃんを産むのを手伝っていたようだ。
ズキリという痛みが頭を走り、今までの記憶を思い出した。次は、女に転生して、医療系の学校に行き、この国を代表するとする、ここの病院に勤務することになったのだ。
他の場所でも、たくさんの赤ん坊が今、この瞬間にも産まれている。
妊婦の夫と思われる男が、こちら側を向いて、「ありがとうございます」と感謝して感動したように目に涙をわずかに滲ませた。
妊婦も同じように感謝してきた。なんだか、少し私の心が動いたような気がした。
胎動した赤ん坊のように。
昼休憩になって、記憶にあるサンドイッチ屋に行き、おすすめのものを三個ほど買った。
口に含むと、野菜の新鮮な感じと、肉のジューシーさが合わさってとても美味だった。
記憶には、確かに食べたことがあるような気がするが、それでも初めて食べたようなそんな感慨を覚えた。
次の日もその次の日も、出産に立ち会った。生憎と、赤ん坊の頭をしっかり、支えることなど、学校で学んだことは覚えているので、最初こそ戸惑いがあったが、次第に体に染み付き、考える前に体が動いていった。
一人として、同じ赤ん坊がいなくて、男女の別を抜きにしても、産声の大きさや、体重の違いを観察するのが一つの楽しみになりつつあった。
産まれる瞬間は、普段感情が動かない私でもその赤ん坊に、神に、感謝を感じた。生まれてきてくれてありがとう。生まれさせてくれてありがとうと。
生を受けるその瞬間は、その赤ん坊にとって、親にとって、周りの人達にとって、何事にも代えがたい、めでたい時間なのだ。
だから、流産をする女性の悲しみを本当の意味で理解したのは、おそらくこの瞬間だろう。
そして、赤子を捨てる、奪胎をする。そういった行為は、生への冒涜であり、この世で最も重い罪だとも思った。
記憶を取り戻してから、一ヶ月後、一人の妊婦が運ばれてきた。帝王切開が必要な状態なんだとか。
帝王切開とは、麻酔を打ち、お腹を裂いて、赤ん坊を直接取り出すという方法だ。
でも、麻酔を打っても耐え難い痛みを感じることには変わりない。その痛みは、よく鼻からスイカが出るくらいの痛みと例えられる。
妊婦が苦悶の表情を浮かべながら、私たち助産師に助けを求めるような視線を送ってくる。
だが、出産時の痛みを他人が肩代わりできるような、そんな方法は、未だに生み出されていない。だから、妊婦の夫は、出産時、ただ、隣で応援することしかできず、とても歯がゆい思いをしているのをこの一ヶ月間で何度も見た。
帝王切開の準備に取り掛かる。必要な機材は、すべて揃っているので、あとは、無事にお腹を裂いて、赤ん坊を取り出すだけだ。
私たち助産師は、妊婦を励ましながら、10から15cm程度に切り裂いた。
しばらくすると、赤ん坊の頭が出ているのが見えた。一時間ほど、妊婦は、苦痛を耐えて、ようやく産まれた。通常の出産のときよりも心が胎動するように動いた。
その赤ん坊が無事に産まれたことを見届けたら、今日の仕事が終わった。
家に帰っている途中、クロノの声が響いた。
――それでは、ゲームを開始します―。
これまでの人生で抱いてこなかったような気持ちを抱いたまま、私は目を閉じた。




