転換馬乗り
カクヨムでも投稿をしています。
早速勝利したが、まだ序の口に過ぎない。とっとと次のゲームをしなくては。気持ちだけが先行して、行動が伴わないなんてことには、ならなければいいがと少し不安に思った。
カシンのいつもいる施設に合言葉を使って入る。そして、契約通り、苦しんでいる人を救った。なんだか心地よかった。
クロノの声が響く。
——これよりゲームを始めますと。
いつも通り変わらない景色。一体ここは、どこなのだろう。次元空間とは、引き離された場所だと言われても、正直信じてしまいそうだ。
「今回やってもらうゲームは、転換馬乗り。いかに、して馬から乗り移るかが勝負の要になります」
乗馬体験は、したことがなかったので、どういうものか想像もつかなかった。
ルールが提示された。
一、馬が、並走しています。プレイヤーは、その中の一匹に乗っています。
二、乗っている馬の前からは、障害物がやってきます。
三、障害物が来る瞬間、馬に乗り移ってください。
四、馬に乗り移ることができなかった場合、失格とします。
五、このゲームは、どれだけ長く馬に乗っていられるかを競います。
六、ゲームは、ピストル音とともにスタートする。
七、ゲーム途中に落馬した場合は、脱落とする。
八、障害物が来る直前に、馬を乗り換えなかったら失格とする。
九、ゲームの途中棄権は、認めないものとする。
つまり、いかに早く馬に乗り移れるかの瞬間的な判断力が問われると言うわけだ。
どこから出したものか、馬が一直線上に並んでいる。
プレイヤー同士の間を一個開けて、馬に座るようだ。
「バンッ」
ゲームのスタートした合図だ。思っていたよりも馬が言うことを聞かない。もっと、人の言うことを従順に聞くものだと思っていた。
「うわっ」
早速一人が落馬した。当然、失格だ。これは、馬を扱ったことのあるやつがアドバンテージを限りなく受けるゲームのようだ。
二人、三人、十人と障害物も来ていないのに、脱落していった。これでは、話にならない。もちろん私も危ない状態には、変わらないのだが。
すると突然、なにかが、前からやってくるのが見えた。
目を凝らす。すると、黒い塊がこちらにやってきている。
また鼻の先、しっかり見える位置までくると、それが水牛であることが確認できた。水牛は、目が悪く、あまり周りが見えないので、あえてこちらに向かっていると言うことは、無さそうだ。
とすると、あの牛たちは、きっとクロノに操られているのだろう。
「ちょっ、ちょっと待って!」
馬に乗り移るのを遅れた女が甲高い悲鳴を上げる。その顔からは、涙が出ていた。
まだ、最初の障害物だが、全体の3分の1程度のプレイヤーは、減ってしまった。
私は、幸い、うまくとは、言えずともジャンプをして乗り移ることができた。
緊張感からか、馬を扱うのが得意になった気がする。そして、馬からも好印象だと。それは、馬が特段不機嫌そうな顔をしていないと言う根拠のない推定から来ていた。
このゲームは、こんなに単純なのかと言う疑問が頭をもたげた。ただ前から来る障害物を見極めるだけなら、そんなに難しくはないが、そうでないのなら——。
何を思ってか、上を見上げる。すると、デカい鉄製の重りが降って来るところだった。
間一髪でそれを避けて、隣の馬に乗り移った。
「ギャー!」
という悲鳴が上がり、そこには、ただ押しつぶされた死体があった。
もうほとんどプレイヤーは、残っていなかった。さっきの不意打ちのような障害物のせいで、大方は、脱落した。
このゲームは、最初二百人程度が参加して、今はもう十人しか残っていない。
でも、パターンは、理解した。常に、周囲を警戒して、観察していれば問題はない。
謎の安心感が私のあたりを漂った。
ただ、今までやってきたゲームで、単純なものなど、一つもなかった。だから、〇〇だから、大丈夫という根拠のない自信は、やはり捨てることにした。
馬に乗りながら、あたりを見回す。集中しているせいか、馬が走る、カッ、カッという土を蹴る音しか聞こえない。
——いや、それ以外にも微かに何かがら聞こえる。
水。そう水の流れるような音。嫌な予感がしたので飛び移った。
次の瞬間大地が裂けた。
私の乗り移った馬からは、翼が生えていた。ペガサスという伝説上の生き物をこんなところでお目にかかることができるとは、思わなかった。
私以外は、全員そのまま裂けた地面にそのまま落下した。
私が、異変に気づくことができた理由。それは、水の音にあった。
このあたりには、なぜか、背丈以上の草も木も生えていなかった。
つまりは、荒原ということ。荒原には、離れているが、水源がある。そして、水源があるのは、大概、滝のようなもの。
よって、地面との落差がある崖があると思ったのだ。
予め滝を作っておき、そして、地面を裂けさせた。クロノだからできることであった。
私は目を閉じて、次のゲームを待った。




