切り捨てゲーム
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キリッと目を覚ました。覚悟が全身に染み渡る。勝たなければならない。甘い覚悟を捨てて。
「みなさん、おはようございます。これより、切り捨てゲームを始めさせていただきます。このゲームは、非常にシンプルですが、その分、精神的ショックが大きいかもしれません」
ルールが現れる。
一、ゲームには、電話ボックスを使ってもらう。
二、電話ボックスの中で、体のいらない部位をコールせよ。
三、電話ボックスに入って、五分何も言わなかった場合、失格とする。
四、ゲームの途中棄権は、できない。
五、ゲームのインターバルは、五分以内とする。
六、通過者は一名。
いらない部位。つまりは、無くしてもいい部位を判断して、できるだけ長く生きる必要がある。
一人、一人の前に突然電話ボックスが降ってきた。
——それでは、ゲーム開始。
早速中に入った。
電話ボックスは、全体的に赤いデザインとなっており、なかは、狭く簡易的なものだった。
受話器を手に取る。
「髪の毛」とコールする。
電話ボックスから出て、頭の上の方を触ると、本当に毛の感触がなくなっていた。
二回目。次コールするのも同じような感じだ。
「眉毛」とコールした。
眉毛は、あってもなくても同じようなものだ。ただ普段自分の体についているものがないと、変な気分だった。
三回目から二十回目は、身体中のあらゆる毛をコールした。だが、とうとうそれもなくなってしまった。人は、まだ多く残っている。
二十一回目。人体には、まだまだ部位が残っているがそろそろ覚悟しなければならない。それとやりたい実験があった。
プレイヤーの一人に話しかける。
「ゲームをプレイして結構経ちますが?」
「えぇ、まぁ、そうですね」
相手は、警戒心を強く持っている。この人は、ダメそうだ。
警戒心の緩い相手。それを探した。
警戒心の緩いと判断した相手は、十二人。そのすべてに話しかけて、名前を尋ねた結果、七人が答えてくれた。この実験において、名前を知っているということが重要だ。
二十二回目。電話ボックスに入り、コールした。
「カライル・スーンの心臓」
カライル・スーンとは、さっき話したプレイヤーの一人。私の推測が正しければカライル・スーンは、絶命する。
電話ボックスから出ると、カライル・スーンは、倒れていた。
周りの人間は、なにがなんだかわからないというような様子だった。
則ち、このゲームの本質は、自分の体のいらない部位をコールするのではなく、相手の名前を聞き出すこと。
相手の名前を聞き出すことができさえすれば、わざわざ、自分の体の部位をコールする必要もない。
ただこれだけでは、結構時間がかかってしまう。そこで私は、考えていた二つ目の戦略を試すことにした。
それは、この情報を一部の人間に伝えること。そうすれば、情報を知っている人、知らない人ができたことにより、半分程度が脱落する。
予想通り、脱落者数は、軒並み増えていった。だが、これも知らない人間だけが、脱落するだけ、通過者は一名。つまり、情報を知っている人間をいずれは、欺かなくてはならなくなった。
そこで、私は、三つ目の戦略を試すことにした。
三つ目の戦略とは、名前を訊いてきた相手に偽名を伝えるということ。偽名を本名だと思っている相手は、コールして、失格となることだろう。
これも狙い通りどんどんプレイヤーが減っていった。
「一体なにが起こっているんだよ」
情報を知らなそうな頭の悪そうなハゲが、訳がわからず頭を抱えている。
私も名前を時々コールして、時間切れだけにはならないようにした。
次に四つ目の戦略を試すことにした。
ある男に耳打ちした。このカオスな状態を作り出した相手があのモジャモジャ頭だということと、その対処法を。
「アイツだ、アイツが、こんな状態にしたんだ」
男がモジャモジャ頭を指差した。
「へっ?」
当然、モジャモジャ頭は、何のことを言っているのかわかるはずもないだろう。
「アイツが、コールできないように囲め!」
男の声に従い、残っていたほとんどが、モジャモジャ頭の周りに集まった。
これで、あのモジャモジャ頭は、時間切れで脱落となるだろう。電話ボックスに辿り着く前に脱落となる。これほど屈辱的なことはあるだろうか。
結果、時間切れで、モジャモジャ頭は、脱落した。
一人が疑問を口にする。
「思ったんだけどさぁ、本当にアイツがこんな状態を作り出したのかな?」
「どういう意味?」
他の参加者が発言の意図を問う。
「あのモジャモジャが、こんなことを考えたとは、思えないんだよ。それよりも、モジャモジャが首謀者だと糾弾したあの男の方が怪しくないか?」
叫んでいた男を指差した。
「確かに」というプレイヤーの声が重なった。
「でっ、どうなんだ?」
プレイヤーは、男の方を向いている。まるで、与えられた餌に群がる魚のように。
「違うって、俺は、アイツがこのカオスな状態を作り出したと聞いたんだ」
「誰から?」
男は、渋々というように私を指差した。こうなることは、予見していた。
「アンタなのか?」
私は、電話ボックスの中に入った。こうすれば、誰も入ることはできない。
「そうだよ。すべて狙い通り」
自信たっぷりという感じで言ってやった。
すぐに吐くと思っていなかったのか、プレイヤーたちは、動揺する。
「なぜ、なぜ本当のことを言った? しらばっくれることもできただろうに」
私は、少し微笑んだ。
「必要がないからですよ。もう私の勝利は、決まっています」
「どういうことだ?」
明らかに私の言葉に動揺しているのが、電話ボックス越しに伝わる。
「私は、この中にいるプレイヤー全員の名前を把握しています」
動揺が走ったが、一人の女がそれを止めた。
「嘘よ! そんなのハッタリに決まっている」
その女の意見に同調するようにそうだ、そうだと口々に言っている。
「そこまで、言うなら、試してみましょう。では、そこの黒い服を着た女性」
私は、女性の名前と心臓をコールした。
女性が倒れた。プレイヤーたちは、何も言わずに沈黙している。
私は、飛んでいるハエを潰すかのようにプレイヤーを脱落させていった。
そして、最後の一人となった。これができたのには、大きな要因がある。それは、カシンと話していたところまで遡る。
「カシン、実は、ゲームに勝つために協力者を募りたいんだが、いいか?」
「つまり、サクラということかい?」
「まぁそうなるね」
私の顔を何度も見て、顔色が変わらないのを確認すると、カシンは、承諾した。
つまり、最初から私の協力者がいたため全員の名前を知ることができたのだ。私は、早く次のゲームにいくため、目を閉じた。すると、意識は飛んでいった。




