第六感空中ウォーク
カクヨムでも投稿をしています。
クロノがいつも通り挨拶をして、ルールが表示された。
一、ゲームは、すべての五感を閉じた状態で行う。
二、ゲームは、上空1200mで行う。
三、ゲームは、浮いている地面に飛び移る必要がある。
四、ゲームは、全員同時に行う。ぶつかる可能性もある。
五、動かないままでいると、地面が抜けていく。
六、ゲームの開始は、目隠しした状態のまま手を引かれるので、パンッという音がして、感覚器官が覆うのが確認できたらスタートする。
七、ゲームの途中棄権は、認めないものとする。
つまりは、味覚、嗅覚、触覚、嗅覚、視覚といったものを、使えない状態で、空中で、跳ばなければならないと。とても厳しい中でのゲームだと素直に感じた。
すべてのプレイヤー。もちろん私を含めて——に、スーツ姿のやつらが近づき、目隠しをつけていった。
視界が暗転して、なにも見えなくなる。この感覚は、スターを探すゲームの時に、目隠しをされた時以来だと感じた。
手を引かれる。そして、段差のある場所を上る。階段は、どこまでも続くように長かった。
ようやく立ち止まると、「パンッ」という音が鳴り、耳と鼻、体全体をなにか得体の知れないようなもので覆われた。
怖い……。恐ろしい……。ネガティブな感情が私の心を支配する。
外界から、情報をまったく得ることができないというのは、これほどまでに恐ろしいことだったのかと全盲の人の苦労と苦痛の意味をこのとき、本当の意味で理解した。
この空間は、本当の意味で孤独だ。誰もいない。何もない。何も感じない。痛みも、悲しみも、苦しみも。
人間は、弱い生き物だ。なにかに縋っていないと、生きていけない。それは、ときに、友人、親、恋人など、大切なひとであるし、手紙や、コレクションなど大切なものである。
でも、そういったものが、一つもないのだ。生きているのか、死んでいるのかすら、わからない。いっそ死んでいた方が良かったと思えるほどの孤独と退屈。
私に渦巻いた感情をどうすることもできないが、ゲームは、続けなければならない。
ひたすら跳び続けた。一時間、二時間と刻々と時間は経過していく。
終わりの見えないこの時間、この空間に、正直意味を見出すことができなかった。もう何もかも投げ出して楽になりたい。私のなかの悪魔が囁いた。だが、このゲームは、レイとのゲームへの大きなアドバンテージになるかもしれない。私に残ったものはそれだけであった。
さらに、時間は刻々と経過していく。だが、ゲームが、終了するような兆しのようなものを感じない。
もしかしたら、このゲームで求めていることが私の思っていたものとは違うかもしれない。
そもそもここは、上空なのか? 本当に墜落死するのか? あらゆる疑問が頭の中を駆け巡る。
そして、ようやく一つの可能性に行き当たった。それは、今跳んでいるここは、上空ではなく、地面がところどころ抜けてはおらず、本当は、絶対に落ちないようになっているのではないか。
つまり、ここで求めているのは、運ではなく、不屈の精神力。惑わされないこと。そうしたことである。
そう考えるならば、あの階段は、上空にいると思わせるフェイクの可能性が高い。
だったら、やることはひとつ。それからもどんどん跳んだ。ここが、空中か、そうでないかだけでも推定できたのは、大きな収穫だった。
六時間がさらに経過して、目隠しなど、感覚器官を覆っていたものを外された。思っていた通り床は、続いていて、上空などでも、なかった。ゲームに勝利したというじっかんがやっと湧いた。
クロノが近づいてくる。
「今回もさすがですね。途中で気づきましたよね? このゲームがなにを求めているかを」
「まぁ、気づければ簡単だとは、思いますけどね」
そうして、光に包まれ始めたので、ゆっくりと目を閉じた。




