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人生は遊戯のように生きよ  作者: 不知火 数多


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漁師に転生

カクヨムでも投稿をしています。

目を開けると、ルーズが、花を咲かせていた。

 赤、黄色、紫。カラフルな花々が地面を彩っている。手を伸ばすと、ニョキニョキと伸び、手を下ろすと、成長が抑制された。

「ルーズ、花が好きなのか?」

「まあ、嫌いではないけれど、特段好きというわけではないわね」

美しい美貌と花々が、近くにある姿は、とても絵になった。

「前に言っていたが、ルーズや、クロノ、レイは、どんな攻撃によっても死ぬことも傷つくこともない。そうだよな?」

「ゲームでの勝利以外に、わたしたちに傷をつける術はないは?」

「最近巷で、開発が盛んになっていると聞く核爆弾でも?」

「攻撃の威力は、関係ないわ。クロノとわたしには、特別な能力があるもの。だから、こんな酔狂なゲームを進行することができている」

あの瞳の綺麗な男、カシンが言っていたことは、ゲームを終わらせるために、物理的行使に出るというものだったはず。

 しかし、こんなに、自信を持っていっている以上、おそらく本当にゲームを終わらせるとしたら、レイにゲームで勝利するより他ない。

 転生前の意識が混濁する感覚になってきたため目を閉じて、その時を待った。

 目を開けた時には、ザーザーという水の音。潮特有の匂い。まるで、世界を切り取ったかのように深く静かな海があった。

 声をかけられる。

「ソラン、何をやってる? 早く今日のノルマを達成しないと晩飯がないぞ」

記憶が戻る時、特有の頭痛が私を襲った。

 私は、今現在、家業である漁業で、父親の手伝いをしている。父親は、私の幼い頃から、数多くの魚を見せて、実際の釣る様子なども見せた。

 父が最も笑顔になる瞬間というのが、大きい魚、珍しい魚。そういった魚を苦労して釣った時である。今時は、漁師になる人は、まともにいなくて、人手不足と共に、高齢化が問題なんだとか。

 そして、ノルマというのが、市場に出回る魚を毎日決められた数、釣るというものである。魚は、ただたくさん釣ればいいなんてものではない。魚の数、つまり水産資源は、有限だ。人間がただただ乱獲だけをすると海の生態系の破壊につながる。そして、我々人間も生態系の破壊によって、水産資源の減少。つまりは、食べ物が摂れなくなるということである。それと共に、お金も職もまともな状態ではなくなり、結局は、自分たちが損を被るのである。

 だから、少し捕り過ぎてしまった場合には、養殖をして、魚の数を増やし、海に放流するのである。

 ここで挙げた乱獲以外の要因でも水産資源は、大幅に減少する。それは、環境問題である。温暖化による海水温度の上昇。赤潮による魚たちの呼吸困難。その他の、海洋汚染など様々な要因を内包している。

 記憶にある魚の捕り方は、大人数でやるもので、網を広げて、魚がかかるのが待つ。少し時間を置いた後、その網を引っ張ってくると、大量に引っかかっているのである。

 これは、一般的には、投網と呼ばれている。だが、一般人の網は、小さいので、あまり収穫量は、期待はできない。

 他の漁師仲間たちとともに、網を広げる。そして、少し経った後、それを引き上げる。

 すると、記憶の中にあるような小魚と同じようなものが、引っかかっていた。

 マグロのような巨大な魚は、一本釣りという力の必要な竿一本を使った方法が主流なので、ここには、残念ながら引っかかっていない。

 

 晩御飯を家族で囲んだ。私は、一人っ子で、現在28歳のようだ。さっき釣った魚も食卓には、混ざっている。

「あんた、なんか潮くさいわね。ご飯食べる前に洗ったの?」

母親の言っているのは、仕事柄、匂いがつきやすいので、シャワーは、食事の前に済ませようという取り決めのことだ。

「ごめん、まだ入ってない。食べたら入るよ」

「ったく。シャキッとしなさいな。あんたは、お父さんの息子なんだから」

元々家業は、継ぐ気は、無かったが、両親のしつこい誘いに乗っかったのであった。

 天候が極端に荒れている時以外は、毎日沖に出て、魚を捕った。魚は個体によって、体調も、身体的特徴も異なる。ヒレのついている位置。体の色。体全体を覆っている皮膚。それらの違いを見るのは、非常に面白かった。

 私は、カシンから貰った地図の場所に行くか、幾日か、迷ったが、場所があまりにも離れているため、近いところに転生したら行くということに決めた。

 ある日、いつも通り漁をしようと空を見上げると、暗雲が立ち込めていた。雷鳴がゴロゴロと轟いている。

 今日は、無理そうだなと空模様を伺っていると、母親が歩み寄ってきた。

「ソラン、父さん知らんかい?」

もう沖に出てはいないはずだが……。万が一ともいえない。一応確認はしてみる。

 付近を散策していると、いつもの漁仲間がいるので声をかける。

「すいません、父を見ませんでしたか?」

「うん? いや、見てないな。どうかしたのか?」

「他の人たちってどうしていますか?」

「他の奴らは、あんたのとこの親父が今日は、漁が無理そうだからと。みんなを帰らせてたよ」

ホッと胸を撫で下ろす。では、一時的に姿が見えなくなっただけだろう。それならば、心配する必要がない。

「一体どうしたっていうんだ?」

不審そうにこちらを伺う。

「いや、たぶん大丈夫です」

そう言って家に戻った。

 コツコツと窓ガラスを雨が叩く。バサバサという葉を揺らす音が家にいても聞こえてきた。

 コツコツという音がそのうち、ザーというまとまった音に変わり、雷が落ちた。

 一向に父の帰ってくる気配がない。嫌な気配がして、沖に近づいた。波が揺れている。

 心配は杞憂では終わらず、小型船が一隻無くなっていた。

 私は、他に目もくれず、小型船をくくりつけている紐を解き、発進させた。免許は、持っているが、こんな日に運転すのは、初めてだった。

 私を嘲笑うかのように天候は、荒れていくばかりだ。少しずつ心配と後悔が募っていく。

 一時間ほどだろうか。船が横転しているのが見えた。そして、父と思われる人がそのすぐ近くに浮いている。

 近くに近寄り、人工呼吸と心臓マッサージを行い、なんとか、気道を確保しようとする。だが、意識は、戻る気配がない。

 しかし、なぜ、父は、こんな日に、船を出航させたのだろうか。

 父の一つの話を思い出した。

「確か、あれは、小学生の頃。あの時は、海を舐めていたから、天気が荒れててもあまり気にせず遊んでいた。それで、遊び半分で、止めてあった船を出航させて、冒険家気分を味わおうとしたんだ。けど、船は、横転して、意識を失った。気づいたら、砂浜付近に眠っていた。誰かが自分を助けてくれたという話をしても誰も信じてくれなかったが、俺は、信じている。絶対に、俺を助けてくれた何者かはどこかにいると。会って、お礼がしたいんだ。あの当時、無知で愚かだった自分を、助けてくれてありがとうって」

父は、きっと、荒れ果てた海の中ならば、その人物に会えると思ったのだろう。でも、会うことは叶わなかった。父も無念だろう。このまま死なせるわけにはいかない。

 必死で人工呼吸と心臓マッサージを繰り返す。

すると、いきなり、船が波に煽られて、転覆した。そして、私と父は、恐ろしくも、深く静かで、一人の場所に投げ出された。

 転覆する寸前に、足をぶつけたせいで、まともに、泳ぐことができない。

 ここで終わりかっとゲームへの参加を諦めて目を閉じようとすると、誰かが近づいてくる気配を感じた。

 美しい姿をしていたと思う。そうすべての人間を魅了するような。でも見ることは叶わなかった。

 クロノの声が響いた。

——これよりゲームを開始しますと。

 父は、助かったのだろうか。それだけが心配であった。

 

 

 


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