スクエアメモリーズ
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いつも通りの参加者が集まっている光景。クロノが前に立ち、挨拶をする。もう慣れたようなものだ。
ゲームのルールが提示された。
一、ゲームには、四角形のブロックとカップを使う。
二、カップの中のどれかに、ブロックが入っている。
三、青いランプと赤いランプがそれぞれのプレイヤーの前にある。
四、青いランプが光ったら、ブロックの入っているカップ。赤いランプが光ったら、ブロックが入っていないカップを指差す。
五、ゲームごとにカップの数は、増えていく。
六、カップに触れてはならない。
七、カップは、ディーラーによって混ぜ合わせられる。
八、混ぜ合わさった後に、ランプが光る。
九、一回でも指摘するものが間違っていた場合、脱落とする。
十、ゲームは途中棄権することはできない。
十一、脱落かは、空中に結果が表示される。
十二、最後に残った一人が、勝者とする。
つまり、ランプによって、ブロックのあるところを指差すか、ないところを指差すか異なるということ。
一見、すべてのブロックを覚えなければいけないように感じるが、それは違う。
ブロックのある場所だけを覚えておけばいい。そうすれば、赤いランプが灯ったとき、覚えたところ以外の場所を指差せばいい。
ゲーム内容をプレイヤー全員が、確認し終えたことを確認したクロノが指を鳴らすと、地面からテーブルと椅子が二脚生えてきた。
テーブルの上には、青と赤のランプ。そして、花の書かれたカップとブロックも。
「さあ、みなさん、このゲームでは、純粋な記憶力が試されます。じゃあ早速ゲームを開始しましょう。ゲームの開始は、ディーラーたちとプレイヤー全員が椅子に座ったらとします」
ゾロゾロとスーツ姿の男女がやってくる。
全員が座ったことを確認すると、クロノは、「それでは、ゲームを開始します」
と合図した。
カップ数は、五個。記憶を漏らすことのない個数だ。
結果が表示される。当然、脱落者は、いなかった。六個、七個、八個と段々と増えていく。十二個目に差し掛かったところで、最初の脱落者が、現れた。最初の脱落者は、一般的などこにでもいそうな中年の女のようだ。
二十を超えた時、脱落者が十人、二十人と増えてきた。
私は、変わらず、ランプが灯った瞬間に指を差していた。このゲームは、ただ記憶する以外にも、攻略する方法があるが、それに気がついた奴は何人いるだろうか。
私のディーラーは、スターを探すゲームでもお世話になった金髪の無口、無表情の女だ。相変わらずなにを考えているかわからない。だが、ゲームの進行は、滞りなく行なってくれるので、特に不満があるわけではない。
五十にさしかかった時、プレイヤーは、325から、127に減っていた。ここからが、勝負だ。
六十、七十、八十、九十。どんどん人が減っていき、とうとう残り十人ほどになった。
91個のカップをディーラーは並べた。そして、その中に、ブロックも入っている。ブロックは、初めはどこに入っているのか確認できるので、問題は、どれほど見逃さないかだ。
だが、それは正攻法でやった時の話。このゲームを攻略するには、しっかりと攻略法を活用していく必要がある。
バラバラに置いたカップがかき混ぜられる。これと似たような光景は、アリが巣を行き来しているときに見た気がする。アリがたくさんいすぎて、たしか吐き気を催したはずだ。それほどまでに、エントロピーが満ちに満ちきっていた。
赤いランプがついた。ブロックが入っていないカップを一つずつ順に指差していった。
「クソッ、もう無理だ。わからない」
プレイヤーの一人がやけになって、テーブルを叩き、その衝撃で、カップが床に落ちた。
クロノがそのプレイヤーに近づく。
「あなたは、カップを触ってしまったので、失格ですね」
「触ってないぞ。衝撃で落ちただけじゃないか」
「二度は、言いません。触りましたよね」
張り付いた笑顔が、その不気味さを助長させた。
仕方なく、プレイヤーは、自分の非を認めて、そのプレイヤーは、脱落となった。
六人が脱落して、残り、四人。
クロノが一度提案した。
「埒が有りませんね。このターンより、カップ数を十ずつ増やしていきます。生憎と、次のゲームまで、時間がないんですよ」
十増えたということは、102個のカップが出るということ。つまり、難易度は格段に上昇する。記憶するのが、限界の場合、いきなり、十増えたら対処の施しようがない。
一人、また一人と脱落していき、私ともう一人が残った。
綺麗な目をした男は、興味深そうにこちらを探り、声を掛けてくる。
「あなた、攻略法に気づいますね?」
「そうだとしたら?」
「このままでは埒が開かないので一つ提案します。このゲーム負けてくれませんか?」
ど直球に、要求してきたが、通ると思っているのか。男は、私の思惑を見越しているように、こう続けた。
「勿論、ただで、とは言いません。このゲームに関しての重要な情報を幾つか持っているので、それをお渡しできればなと」
重要な情報? 勿論このゲームとは、一つ一つのゲームではなく全体のことを言っていると思うが、重要な情報とはなんだろうか。少し興味がそそられた。が、私は、別にこの男を頼る必要性を感じない。
「それがハッタリだという可能性は十分にありそうだが」
それを受けて、顎に手を当てて、男は、ぶつぶつと何かを呟く。そして考えがまとまったのか、こちらを向いた。
「では、一つ最初に情報を提供しましょう。それで、判断していただければと思います。わたしは、カシンと言うのですが、このゲームに反対するプレイヤーが募った組織があるんです。わたしは、そこで、幹部をやらせてもらっています。良かったら、情報を渡し、そして、この組織に入ることも認めましょう」
「なぜ、私がそんなところに入らなければいけないのですか?」
「このゲームでは、脱落したら、最低ランクで、ゲームをし続けるだけです。誰でもいつでもランクアップは、できるが、そう簡単なことではない。幾ら、死のうと、繰り返される転生の日々。人の命は、本来そんな軽いものではないはずなのに、簡単に弄ばれている。わたしたちは、それが許せないのです」
まあ、確かに、このゲームは、途中棄権は、することができない。どんなに苦しくて、辛くて、絶望しても待ち受けるのは、新しい人生。それを断ち切るためには、レイに勝たなければならない。
けれど、レイに勝負を挑むためには、最低でも、18回は、ゲームで勝たなければならない。
「言いたいことはそれだけか? 私は別にそんなことを問題視は、していませんよ」
「そうですか。残念です。気が変わったらここにきてください」
簡略的に書かれた地図だった。
カシンは、本当に手強かった。二百、三百とカップの数が増えても全く動じない。
どんどんカップの数が増えていき、もうそろそろ五百に達するという時、カシンがようやく間違えた。
「それでは、またどこかで会いましょう」
そう言い残して、どこかに消えた。
カシンは、ゲームが終わる気配がなかったので、自分からゲームを降りたのではないかと思われた。
次のランクに上がることができる。ところで、このゲームの攻略法は、わかった人間は、カシンと私以外いたのだろうか。
攻略法とは、実は、カップに書かれている花びらの数がブロックが入っているものと、入っていないもので違うことだ。
ディーラーは、まるで、ランダムにカップを選び、その中にブロックを入れているかに思えるが、実は、決められたカップに入れているのである。
ブロックが入っているカップは、花びらが二十三。入っていない方は、花びらが二十五ある。といっても、一輪の花に複数の花びらがらついているのではなく、花びら一つ一つが風によって舞っている様子がカップには、書かれているのである。
つまり、シャッフルしているところを見なくても、ブロックが入っているか入っていないかは、一目瞭然というわけである。
クロノが「お見事ですね」と私を讃えてくれた。私の心臓部から、火の玉が出て、黄色から赤色に変わった。そして、ゲームは終了した。




