◯✖️加速走
カクヨムでも投稿をしています。
目を開けると、クロノがこちらを睨んでいる気がした。自分の妻をモデルにしたお菓子を販売しようとしたせいだろうか。
だが、そんなことだけで、基本無表情なクロノが感情を剥き出しにするとは思えない。やっぱり勘違いだろう。そう思うことにした。
クロノが全体に向けて、挨拶をした。
「イエローランクのみなさん、こんにちは。ここまで勝ち残ってくるのは難しかったでしょうが、今までのは、ほんの序盤のようなものです。では、早速ゲームを始めていきます」
空中を指差し、ルールが提示される。
一、走っている途中、◯と書かれているゾーンと✖️と書かれているゾーンがある。
二、◯か、✖️で答えることのできるクイズが提示される。
三、正解だと思うほうに、飛び込め。
四、問題のジャンルはランダム。
五、トラックの一周は、400m。
六、徐々にスピードを上げる必要がある。
七、後ろから、トラックが迫ってくる。それに轢かれたら、脱落とする。
八、また、問題を間違えた場合も脱落とする。
九、ゲームの途中棄権は、認めない。
十、ゲームは、最後の一人になるまで行われる。
十一、トラックをパンクさせるような行為が確認できた場合も同様に脱落とする。
十二、一周ごとのレストは、1分とする。
十三、脱落か、通過したかは、その都度結果が出る。
つまり、瞬間的な判断と、純粋な体力。その両方が求められるということ。今までとは、異なり、純粋な能力が必要とされる。ただ、それは、心配ない。料理が体力を使うと分かってから、日頃、ランニングを欠かさず行ってきた。ただこれでは、上位に残ることは、できても、一位になることはできない。なにか作戦を考えなくては……。
「このゲームは、ゲームが心理戦や、頭脳戦だけだと思っているみなさんの常識を覆すために取り入れました。このゲームで求められるのは、瞬間的な判断力と、体力の二つの力だけです。では、みなさん、張り切ってやっていきましょう!」
何故かクロノは、陽気だった。運動をしないように見えているだけで、実は、運動が好きなのかもしれない。
ゲームが早速始まった。最初は、少し早く歩くだけでも十分に間に合うスピードでトラックが迫ってきた。
問題ゾーンにやってきた。
問題:みかんの白い部分の名称をアルベドという。
問題が出された。意外と知らない人が多いのか、どっちにいくか迷っている。
私は、勿論答えがわかったので、躊躇いなくゾーンに入った。
結果が表示され、私は、当然の如く、失格にはなっていなかった。この問題の正解は、◯。アルベドは、食物繊維や、ポリフェノールが豊富で、果肉の酸味を和らげる効果のあるみかんの一部分だ。このゲームに参加しているのは、124名。同じランクでも分けてやっているのだろう。
左手を見ると、2124659という数字があった。参加者は順調に増えていっている。結果には、脱落者21名、通過者103名と書かれていた。
脱落者は、シャボン玉のようにパチンッと弾けて、最初からそこにいなかったかのように、消滅した。
1分がたち、走り始めた。さっきより少し速いので、小走り程度は、必要だ。
問題のゾーンに来た。
問題:花言葉が、憎悪や、永遠の死であるのは、クロユリである。
体力が必要だと思っていたが、問題の難易度が高いので、想定していたよりも体力を使わなそうだ。
私は、さっきの問題と同じくらいの勢いでゾーンに入った。
結果が表示される。脱落者47名。通過者56名。正解は、✖️で、クロユリの花言葉は、呪いや、復讐。問題にあった花言葉をもつのは、 黒バラだ。
この調子いけば、一位も間違いないと思っていた。
3週目、ここから、少し本格的なランニングが必要になってきた。トラックが迫ってくる気配と音を感じる。
問題のゾーンに来た。
問題:シュークリームのシューの意味は白菜である。
これは、知っている人間にとっては、一瞬紛らわしく感じるかもしれない。
私は、体力温存のためゾーンに入る直前でスピードを落としながら入った。
結果が表示される。
脱落者23名。通過者33名。ここの問題は、他と比べて簡単なはずだが、想定よりだいぶ脱落者が多い結果となった。
脱落者は、無慈悲にもパチンパチンと消えていく。
4週目、3週目よりも、少し速いペースになってきた。腕振りを意識して、走るようにする。
問題のゾーンに来た。
問題:現在確認されている中で最も最長の生き物は、マヨイアイオイクラゲである。
この生き物については、よく知らなかった。ただ、詳しいことは知らずとも、この生き物は、巷では、有名なので、勿論◯のゾーンに入った。
裏をかこうとしたのか、結果は、脱落者12名。通過者21名となった。
4週目が始まると、トラックが物凄い勢いで近づいているのがわかった。なので、全力で走ることにした。数名が、体力切れにより、脱落した。
問題のゾーンに来た。早く問題を解かないと、轢かれてしまう。
問題:星座の中の星で最も明るいのはうしつかい座のシリウスである。
考える余裕はないが、自信があったので、そのまま飛び込んだ。トラックがまた一人巻き込む音が聞こえた。
結果が出た。脱落者16名。通過者5名。つまり、この五人の一騎打ちになる可能性がある。もう足が乳酸でパンパンになり、そう長くはもたないであろうことは、容易く予想できた。
5週目が始まった。トラックが公道を走るのが如く、思い切り、走ってくるのがわかった。実際には、随分とスピードは落としているはずだが。
問題のゾーンにいく前に、二人がスタミナ切れでトラックに巻き込まれた。
つまり、私ともう一人のどちらか、もしくは、どっちもがゴールできる可能性がある。
問題のゾーンに来た。問題を一瞬だけ見てゾーンに入った。相手は、その反対側に入っていった。
最後の問題は、私の知らない分野についての問題だった。正直自信があるかないかで訊かれたら無かった。
神に祈るかのように、両手を重ねて、結果を薄く開けた片目で見た。
脱落者4名。通過者1人。その1人は、私であった。思わず飛び上がりそうになる程嬉しかった。
「そんな——。クソッ」
私ともう1人、走っていた男が地面を叩いたが、そのうちその男も消えた。
そして、私は、勝利した証に、あの奇妙な変な感覚に襲われた。




