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原型:みんなが心躍る世界を■■したいですが(多少)手こずっています。  作者: アイティ
五章:ナゼ タタカワナケレバナラヌノダ?
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アホウハツネニウシロニイル


「おい貴様、そいつといい、さっきはあれはなんだ!」


ゴルドは大きな斧を再び持ち上げ、

さきほど彼女がした行動について言及する。

すると、神堕 愁は目線を逸らしたと思えば、すぐに目線を戻し、


「邪神の加護みたいなやつです。あんまり使いたくはないんですけどね。」


そう言った直後、彼女は小さく呪文を唱えた。


「ディフェンスオーヴァー、ノックバック。」


彼女の杖と、彼女の体から青いオーラが出始める。

唱えた呪文の効果を見ようとしているのか、杖をブンブンと振り回し始めた。

杖からは青いオーラの残像が残るだけで、何か起こる様子はない。


「何をしてやがる!」


こちらを気にせずおかしな行動をとる彼女を見たゴルドは、

彼女の首に向けて、斧を横に振りかざす。

ゴルドの行動を横目で見た彼女はすぐさま、

杖に斧が当たるように盾にして持ち、その場に座り込んだ。

そして斧はそのまま振りかざれ杖に当たり、それと同時に大きな音を発し、


「うおっ!?」


彼の手から斧が抜け、近くの壁に勢いよく刺さった。

その様子を見た神堕 愁は、眼をキラつかせながらゴルドの方を見た。


「どうですか! これが私の力です!」


彼は彼女の言動を見て困惑する。

さっき邪神の加護と言ったばかりなのに自分の力というし、

その力の凄さを共感して欲しいばかりのような眼をしているし、

斧に杖をぶつけた瞬間、杖に弾かれるように吹き飛んでいったし、

何が何だかわからないが、彼はとりあえず言葉を発した。


「それがどうした! お前など虫けらでしかない!」


言葉のチョイス。それが彼の敗因であったのだろう。

彼女はその言葉を聞いて、急に淡白な表情になり、

素早く彼に接近したと思えば、杖を横にしてゴルドに振りかざす。

彼は勢いよく壁の方に吹き飛び激突。

吹き飛んだ威力で壁に大きな穴が開く。

一瞬の出来事に混乱しながら彼は気絶した。


気絶した彼の様子をじっと見つめ、動かないことを視認。

かっこつけなのか、杖をバトンのように回し始めた。

その時にはもう、彼女、杖から出ていた青いオーラは消えていた。

少しばかりかっこいい彼女の後ろ姿を見ていたカテラが口を開く。


「え、えっと……愁、ちゃん……?」


「さっきまでの私は忘れてください。どこぞの阿呆に操られていましたので。」


「……そ、そうですか……」


彼女は杖を回すのをやめ、カテラの方を向く。

何かを考えているのか、顎に手をつけてうつむいていた。


「カテラさん、これからどうします?

 あの阿呆が言うには、ここは総大将殿の領地みたいですよ?

 私の意見としては、創さんと合流した方がいいとは思いますが。」


そう言うと、カテラは彼女の方を向かずに言葉を発す。


「……なぜここが総大将殿の領地なんでしょうか……?」


「え、違うんですか?」


それを聞いた彼女はキョトンとする。


「あそこの窓から見えた景色は間違いなく、

 創さんの世界、アロディルデ王国南にある江戸のはずなんです。」


「創さんの世界……? 江戸……?」


「なぜ、ゼロはここを総大将殿の領地と言ったんでしょうか……?」

 

「ゼロ……阿呆がロゼって分かってるんですね……」


神堕 愁は少し苦い顔をしながら、数時間前のことを思い返す。


><


 気づいたら私は……牢獄にいました。

 一瞬、気持ちがフワフワしているので夢かと思いましたが……


 <「すいません、なんで私はここに居るんです?」>


 すぐにその声を聞いて察しました。私の体はロゼに乗っ取られていると。

 なぜ自分の口からロゼの声が聞こえるのか……不思議に思いましたね。

 乗っ取った体の中に、私の自我があるということが。

 それでさっきまでカテラさんと聖さん、

 そして阿呆の会話を聞いていたわけですが。

 なんで神堕 聖さん、ちっちゃくなってるんですか。

 それに、青い炎を生み出す力を持っていたなんて……

 しかも、ここにきて総大将殿なんていう存在を知りましたし。

 ていうかロゼ、パラメータビジョンをあれだけ…… 


 そんなことより創さんを思う気持ちが……

 あのお守りに手に触った時、それが爆発して……

 

 それで……それで……

 

 あ、ああ……は、創さん……創さん……。


><


「愁ちゃん?! 顔が赤いですよ!?」


「はぁー、はぁー、はぁー……」


息が荒くなり、少しだけ顔が赤くなる。

体が妙に熱くなり、なぜか下半身が震える。

神堕 愁は自分の気持ちを抑えようと彼女は素早く胸に手を当て、

その場に女の子座りで座り込み、杖を床に置いた。


「……っは、創さん……創っ、さん……」


「まさかあのお守りで……!? ちょっと失礼します!」


カテラは彼女が今、極度の興奮状態であると察知し、

その原因と思われる、アロディルデ学園七不思議のチート武器の一つ、

『あい、らぶらぶ、ゆー』を彼女のポケットから引っ張り出した。

そしてお守りをその辺に放り投げ、彼女の肩を掴み揺らす。


「愁ちゃん! いまやることは脱出です!

 そのあと創さんと合流して、あの阿呆をぶっ飛ばしましょう!」


そう言った後、神堕 愁はだんだん息が整ってきて、

胸を抑えながらも、杖を軸にしてゆっくりと立ち上がった。


「そ、そうですね……、まずは脱出です。

 テレポートの魔法や、瞬間移動の魔法はありますか……?」


「ありますが……一応唱えますよ。」


そう言って深呼吸をし、彼女の手を握り、こう言った。


「テレポレースアウト、異端世界秩序へ。」



……しかし何も起こらなかった。

辺りに響くは阿鼻叫喚、カテラは『やっぱりか』と言う顔して息を吐く。


「……わ、私が唱えてみますね……」


「まってください! それが正しく作動するかどうかは……!」


「やってみなきゃ分かりませんよ……

 私はさっき呪文を唱えられたんです。きっといけますよ。」


心配そうな表情で彼女を見るカテラ。

どうみても大丈夫ではない。いまだに彼女は興奮し続けている。

それに魔力の消費も心配だ。一応、テレポートの呪文は多大な魔力を消費する。

この極度の興奮状態で、魔力を一気に消費した場合の事を考える。

魔力が無くなると、軽度の脱力感や疲れが生じるのだが、

テレポートの呪文を唱えた後、彼女の今の場合、倒れてしまうのではと心配する。

その心配そうな顔に神堕 愁は、胸を当てていた手で彼女の頬に触れた。


「大丈夫です……心配はいりませんよ……私はただ、創さんの事が……」


「分かりました! とりあえず一度落ち着きましょう!

 愁ちゃんの今の状態で唱えたら、愁さんが倒れてしまうかもしれません!

 ひとまず心を落ち着かせてから、その後で唱えましょう!」


頭の中で考えていたことを、カテラはそのまま口に出した。


「……っ、でも、創さんが……。」


「創さんだって元気な愁ちゃんを見たいはずです!

 万全な状態で唱えないと、創さんに心配をかけてしまいますよ!」


「……心配……創さんが……。」


「10分後でいいです! ひとまず落ち着きましょう!」


そう言うと、神堕 愁は涙目になりつつも、こっくりを頷いた。

それに少し頭を抱えたカテラは、ひとまず辺りを見回し、

どこかに安全な場所がないかを確認する、が、ありそうにない。

未だに辺りにいる人たちは燃えている。出口にも燃えてる人がいるし、

進もうと思った道はゴルドによってつぶされたし、

しかも他の道の通路にも燃えている人が大勢いて、通れそうにない。


「むぅ……! 派手にやってくれましたねぇ!」


改めてこの惨状を見て腹が立つ彼女。

と、その時、カテラの背後からある人物の声が聞こえてきた。


「……や、やぁ……私だよ私……ロゼだよぉ……ぉ…ぶ……」


いつの間にか後ろにいた阿呆は、

吐き気を催しながら、彼女のすぐ後ろに倒れ込み、

その近くで溢れていた味噌汁が、阿呆の頭に付着した。

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