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原型:みんなが心躍る世界を■■したいですが(多少)手こずっています。  作者: アイティ
五章:ナゼ タタカワナケレバナラヌノダ?
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シュンサツ


「……これは、どうすればいいんですかね。」


頭に刀が刺さった少女は、

刀と共に落ちてきた鞘を創に差し出しながらお辞儀をしている。

さっきからずっと。たぶん刀を手に取るまでこのままなのだろう。

だんだんその態勢がつらくなってきたのか、体がプルプルし始めた。


「ハジメ、そろそろ取ってやってはどうだ。

 この神と名乗る者に悪意は感じない。お前に刀を渡したいだけなようだぞ。」


風吹は少女の言動を見て、なんだか可哀そうに思ったのか、

何とも言えない表情で創の肩に手を置き、刀を取るように促す。


「渡したいのは分かるんですけど、抜いても大丈夫なんですよね……?」


「血は出ないと思うが、恐らく痛みは感じるはずだ。

 できるだけ痛みを感じさせないために、一瞬で引き抜け。」


「い、一瞬でって言われても……」


とりあえず刀の持ち手部分を、綱引きをするときのように両手で掴んだ。

綱ではないが、勢いよく引き抜くにはこの姿勢がいいだろう。

でも刀は縄と違って硬い。しっかり握らないと引き抜けなさそう。

腰を低くしたり持ち方を少し変えたりして抜きやすい姿勢を整える。


「よし、では私はこの少女を押さえておく。やれ、ハジメ。」


そう言って風吹は少女の両脇に手を通し、

引っ張った反動で創の方向に倒れないようにがしっと掴んだ。


「いきますよ! せーのっ!」


その掛け声の後、創は両手に力を籠め、勢いよく刀を引き抜こうとした。

が、刀はびくともせずに少女の頭に刺さり続ける。

創はさらに力を入れ、刀をなんとか引き抜こうとする。

手を離せば後ろに倒れそうだがとにかく刀を抜くことだけに創は集中した。


「なぜだ……!? 頭に刺さろうとこれほどの力があれば抜けるはず……!?」


一方、風吹は彼女の刀を引き抜く力に圧倒されていた。

引っ張られている少女の脇をしっかりと持ち、地面に足を力ずよく踏みとどまる。

が、その体勢を維持しなければすぐに彼女に引っ張られてしまうだろう。

創に引っ張られ続けて数分、少女は持っていた鞘を地面に落としてしまう。

彼女らに少女の顔は見えなかったが、実は涙目の状態で必死に堪えていたりする。


しかし、だんだん刀を引っ張る力が緩んでいき、彼女は刀から手を離してしまう。

彼女はへなへなと倒れ、大の字になりながら手を開いたり閉じたりし始める。

風吹も押さえ続けて疲れてしまい、少女の脇を外し、その場に座り込んだ。

自分の後ろの地面に両手を付け、しりもちをついて息をハァハァと吐く。

よっぽど彼女らは疲れているようだが、一番つらそうなのは少女であった。

仰向けになりながらぐるぐると目を回し、

感電した時かのように体がビクビクと動いていた。


「な、なんで抜けないんでしょう……?」


「刀を抜くだけなら、さっきの力でも抜けたはずだ。

 だがそれでも抜けなかったと言う事は……なんでだろうな。」


考えた所で理由なんて検討もつかない。

あの魔法陣に何かあるのだろうかと思ったが、

刀が少女の頭に刺さった後、不満げに足で消していたので違うのだろう。

少女のいたずらでわざと刀を抜けないようにしている、なんて思ったりしたが、

今現状の少女の様子からしても、確実にそんな事はしないだろうと思った。

創は立ち上がり、背伸びをした後に少女が落した鞘を手に取る。

何の変哲もない、ただの黒い鞘だ。何か模様が入っていたりもしない。

それを手に持ちながら、少女の頭の方に回り、刀の外見をじっくりと見る。

刃と持ち手部分はすべて黒く、目釘の部分だけ白色で、鍔の部分は灰色であった。


「かっこいいですね、改めて見ると。」


「……そ、そうだろうな、刀とはカッコよく見えるものだ。」


風吹も立ち上がり、創の持っている鞘と刺さっている刀を観察する。

彼女が見るに、その刀は日本刀であるとすぐに分かった。

そこらでは見ないような色をしているが、刀をしては特に何の変りもなかった。

……うん、これは普通によくある刀だ。


「うわぁぁぁーーー!!」


途方に暮れていた彼女らに耳に、どこからか悲鳴が聞こえてきた。

創は辺りを見回し、声の主を探す。

すると、江戸に続く道から着物を着た少年が走ってくるのを目撃。

泣きながらこちらに向かってくるので何事だと思って見ていると、

その少年の後ろから、

禍々しい紫のオーラを放ち、刀を構えた武士が追いかけてきていた。


「あ、あれは一体……!?」


その刀と鎧は血塗られているため、

誰かを殺してしまっていることを察し、創は顔を青ざめた。

その武士を見た途端、風吹は腰の刀を抜刀。

霞の構えをし、武士を睨みながら状況を観察。


「私はあの武士を止める、お前はあの少年を!」


「は、はい! あの、刀は後でっ……あれ!?」


足元見ると少女はいなくなっていた。

ただ、頭に刺さっていたであろう黒い刀を残して。

あの子がいなくなっていると伝えようと風吹の方を見る。

が、そこにはもう風吹はいなかった。

既に武士に近寄っており、一瞬にして武士の足を地面につかせている。


「え、今何が。」


「はぁ、はぁ、お、おねぇちゃん!! 助けて!」


少年が創に抱き着き、涙目で顔を見上げる。

彼女は少年の顔と、足をつかせた武士に対して刀を構える風吹を交互に見る。

何かを察した少年は後ろを振り向き、その状況を瞬時に理解する。


「やめて! お父さんを殺さないで!」


「おとっ……!?」


「なっ、父親だと!?」


風吹は武士を警戒しながら数歩ほど下がり、

動かないと判断し、刀はしまわず創と少年の元に戻った。


「おい少年、あの変な靄は父親にいつからついた?」


「きょ、今日の朝に……それで……逃げてるときにお母さんが……」


少年は顔を青ざめ、その場でしゃがみ込んで吐き気を催しその場で吐いてしまう。

また、少年の話を聞き、あの武士の血を見て創は理解した。

吐き気は催さなかったが、呼吸が荒くなったり、めまいが起きてしまう。


「……そうか。すまなかったな……」


少年に優しく謝り、風吹は武士の、紫のオーラを睨む。

恐らくだが、アレが父親を狂わせた原因である事に違いない。


「少年、あの鎧はいつからつけていたものだ?」


「……分からない、気づいたらアレを付けてたんだ……」


「なるほど、アレが根源なのかもな。」


風吹はゆっくりと武士の元に歩み寄り、

呼吸を整え刀を構え、鎧を付けるための紐を一瞬にして斬った後、

刀をしまい、素手でその武士の鎧を外し始めた。


「風吹さん後ろ!!」


その声を聞かずとも気配は既に感じていた。

風吹は後ろを振り向きながら刀を抜刀し、

何かで背中を突こうとしたところを刀で横に受け流し、瞬時に後ろに下がる。


「あーあ、避けられちゃった。やっぱ江戸っ子は強いね。」


風吹を襲ったのは白い軍服を着た少女。

レイピアを手に持ち、彼女を殺そうとして来ていた。


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