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原型:みんなが心躍る世界を■■したいですが(多少)手こずっています。  作者: アイティ
四章:異世界と私たちがいる世界はだいたい同じ(笑)
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普通、ゾンビに支配された世界において救われない人がいるので……

     

              強制ハッピーエンド


もう一つのタイトル『踏み台にされる世界:{バイオハザード}』


「おい! 新人! こっちの箱も運んでおいてくれ!」


「は、はい!」


……私は今、『オアシス』と言う所で働いています。

ゾンビに備えて、武器や食料をあちらへこちらへと運ぶだけの仕事です……

仕事を始めて早5時間、スペルさんの訓練のおかげで疲れてはいませんが、

私の生徒たちのことが心配になってきました。



指定された場所にたどり着き、

段積みになっている場所に箱を置いて一息ついていると……


「……? どうしたの?」


少し肌が焼けている黒髪で赤い目の女の子が、横で私をじっと見ていました。

黒い生地に赤いラインの幾何学模様が入っているコートを着ていて……

……水色の線を帯びた黒色の本を持ってますね。何の本なんでしょうか。


「ねぇ、あなたはこの世界をどう思う?」


へ? こ、この世界?


「この世界っ……? どういうことですか……?」


言葉の意味が分からずそう言うと、

女の子は本を開いて私の周りを歩き始めました。


「この世界にいる人間はみんな、ゾンビになってしまう。

 一人のゾンビの女の子のために、その女の子の孤独を癒すために、

 神様は人間を愛すのをやめて、ゾンビを愛すようになってしまった。」


「……何を言っているの?」


「たった一人の女の子のためにこの世界は生まれたけれど、

 もうすぐこの世界も壊れてしまう。だから聞いておきたいんだ。

 神様に自分達の運命を決められたこの世界を、どう思ったか。」


そう言った女の子は私の方を向いて振り返った。

女の子が話した言葉の意味を考えながら、私は深呼吸をする。

スペルが教えてくれた強気の姿勢を取るために。

 

「運命を決めるのは私たち自身です。

 神様だって、自分の運命を決められるのは嫌なはずですからね。

 この世界がどうとかは分かりませんが、それだけは言えます。」


そう言うと、女の子は微笑んで本をぱたんと閉じました。


「それじゃ、この先の運命に抗わないといけないね。

 どんな未来が待ち構えていようとも、君はそれに抗わないといけない。」


「……それって、つまり……」


その言葉を聞いた途端、第一倉庫の方から爆発する音が聞こえた。

とっさに振り返った私は、そこにいるであろう生徒が心配になってしまう。


急がなきゃ。そう思って私は倉庫の方へと駆け抜けていこうとしたとき___


「あの子が作った物語に、縛られないようにね……」


そんな言葉が聞こえてきた。

振り返ると女の子の姿は見えなくなっていた。

辺りを見回しても女の子の影はない。結局あの子は何なのだろう。

疑問を抱えながら、あの子が言った言葉を考えながら、

私は急いで第一倉庫の方へと向かった。



……あれは。


倉庫の壁は大きな穴が開いていた。

そこから無数のゾンビたちがこっちの方向に向かってくるのが見えた。

それとは別に、目の前に紫色の髪をした女の子が鳥のような羽を生やして、

私の生徒を抱えて呆れ顔をしているのが見えた。

周りの人たちは皆武器を構え、紫髪の女の子、ゾンビに狙いを定めていた。

一体何があったのだろう。


「へいへい、バイオハザードもこれで終わりにしてやるよ。

 この世界からゾンビなんていう存在そのものを抹消してやる……」


そう言って、私の方を向いて呆れ顔のままニコッと笑う。

その顔の下にいた私の生徒は無事の様だが、気絶しているように見える。


「ああ、君がみんなを避難させてくれたんだね、ありがとう。」


瞬きをした途端、紫髪の女の子は目の前にいなくなっていた。

どこへ行ったのかと辺りを見回そうと思ったとき、

足元にさきほどまで抱えられていた私の生徒が横になっていた。

座り込み、生徒の状態を確認する。やはり気絶しているようだ。


「お、おい!? 奴らが迫ってきてるぞ!?」

「第一倉庫の物資の移動をいそげ! しばらく時間を稼ぐ!」

「そこの新人! はやくそいつを連れてこっちにこい!」


……はあっ、そうだった。

もうゾンビがそこまで迫ってきている。

ここに居たら危険だ。早く逃げないと。


生徒を抱えて、私はすぐさま誘導に従った。

移動した瞬時に周りの人々は危なそうな重機をもって大穴に近づいていった。

ゾンビを防ぐために、彼らは立ち向かおうとしている……


だけど、あそこにいたら……あの人たちは……


「ダメです! 逃げてください!」


気づいたらそんな言葉が私の口から出ていました。

大穴に近づく人は見向きもせず、重機をゾンビに向けました。


「新人! ここは俺たちに任せて早く逃げろ! 死にてぇのか!」


「で、でも! あの人たちが……!!」


「安心してよ。あの重機、ちょっとした仕掛けを施してあるから。」


「は、はぁ!?」


横にさっきの紫髪の女の子が立っていました。


「ちなみに銃は弾詰まりさせておいた。

 あと、残念ながらもうゾンビとは戦えません。」


「てめぇ、何言ってやがる!?」


男の人が女の子の胸ぐらをつかんで……

やめて。そんな事をしている場合じゃない。


「やめてください……! あの人たちが……!」


そうやって胸ぐらを離そうとした途端、

大穴の方から大きな音がしたと思えば、目の前が真っ白になりました。

真っ白になって……それで……


……あ……ぅ



………?


……



あれ……? 私は一体……?

え、なんでボールを持って……


「せんせー! 外野に回してください!」


あっ、そっか! ドッチボール!

なんかボーっとしちゃってた!


「そぉい! 任せますよ!」






「……彼女らが戻っていることを確認したぞ。

 それに、学園の中にいたゾンビたちも消えた。」


体育館のステージ裏の放送室から、

楽しそうにドッチボールをしている彼女らを見守りつつ、

イケメンの教師らしき男がスマホを持って通話をしていた。


〔「あいよ。じゃ、お望み通り麻央さんの行方を……」〕


「その前に聞きたいことがある。」


〔「なんです? 私が何をしたって言う話?』〕


「そうだ。俺が渡したGWEでお前は何をしたんだ?」


〔「ゾンビ騒動そのものをなかったことにしてぇ、

  あっちとこっちの世界のゾンビを人間に蘇生してぇ、

  それでぇ……ああ、うん、世界を平和にした。」〕


「つまり、彼女らの記憶を改ざんしたと。」


〔「そうだね。何事もなかったかのようにするにはそれしかないし。

  ちなみに、スペルクラスは戦闘実践として外出している扱いになってる。

  ながーいながーい戦闘実践だけどね。2週間ぐらい帰ってこない。」〕


男はぐもった声を出して、裏出口から体育館を後にする。

生徒が前から歩いてきた。顔を見ながら通り過ぎていった。

本来この学園の関係者ではない彼が、堂々と廊下を歩いていく。


「……それで、麻央は今どこにいる。」


〔「え? ああ、そうだね。麻央ちゃんのために動いてくれたからね。

  現状、あいつはお金を稼ぐためにカフェで働いてるよ。

  この世界でしか使えない通貨を使って、魔法の武器を買うつもりらしい。

  それと、連絡が入らない理由は純粋に勤務中だからぁ~」〕


「なるほど。なら仕方がない。」


〔「仕方がない? 君は愁を連れて行こうと必死じゃなかったけ?

  自分の計画が狂って怒ったりはしな____」〕


男はすぐさまスマホの通話を切った。そして2日前の事を思い出す。

その時、麻央はお金に困っている様子だった。

理由は聞かなかったが、とりあえず稼ぎやすい店を勧めた記憶がある。

……だが、その『記憶』はさっきの通話で思い出した。


「そろそろ、俺も自分を見失いかけてるってことか。」


男はそう言って、すぐさま学園を後にする。

自分を見失わないようにするために、ある場所に向かい始めたのだ。




「あの野郎……通話中に切りやがった……。」


彼女は『かつてゾンビという存在があった世界』にいた。

都市が発展し、公園がちらほら見えたり、飛行機が飛んでいたり。

どこにでもあるような普通の景色がそこにあった。

持っていた近未来デザインのスマホをポケットにしまって、

近くの野外ステージで歌って踊っているアイドルの中の一人を見る。


「安心しな神堕 双、

 お前が可愛がったあの女の子はアイドルにしておいた。

 身体を腐らせる存在じゃなくて、心を腐らせる存在になったから。」


そのアイドルが踊っている前には観客が大勢いた。

誰もが誰も、彼女らの歌、そしてダンスに熱中していた。

曲が終わると、彼女らに向けて歓声と拍手が響く。

にこやかな笑顔でその様子を見ていると、後ろから誰かにささやかれた。


「……運命を変え続けているのは、どうして?」


彼女はとっさに後ろを振り返る。

背後には誰もおらず、周りにはいたって普通の景色しかなかった。


「……変えれる術があるから変えてんだよ。」


唇をかみしめながら何かを睨む。

たとえ自分の眼では見えなくとも、気配はそこにあった。


「……私は平穏な日常を望んでるんだ。邪魔すんな。」


そう言うと気配は ふっ と消えていった。

彼女は目をつぶり、深いため息をついて空を見上げる。


「……行くか。」


そうつぶやいた瞬間、彼女はそこから消えていた。


……平穏な日常、ね。

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