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これから始まる異世界生活 〜12:00


コテージ 11:19~


「……」


「……」


彼女らはコテージのリビングのソファで、

創とロゼの部屋でロゼと愁との二人きりの話が終わるのを待っていた。

創は空菜の尻尾の中でうずくまり、

空菜はその様子を眺め、耳をピコピコと動かしながらソワソワしている。


ロゼらが話し始めて20分位になったころ、空菜が口を開く。



「創……ちょっといい?」



コテージに入る時には創は無言であった。

ソファに座りうずくまった時からずっと。

彼女の尻尾に異常な執着を見せてはいるものの、

先ほどまでの元気は失っていた。

しかし彼女が話しかけると創は尻尾の中から空菜の顔を見て、

少しばかり元気な表情を見せてきた。


「はい、なんでしょう空菜さん。」


「このコテージに入ってから私の霊力センスがビンビンきてるんだけどさ、

 もしかしてトンデモ施設にいるのかな……」


「あの、まず霊力センスってなんです?」


空菜は急に足を組み、人差し指をでこに当てかっこつける。


「フッ、言うなれば第六感、ってとこさ……」


「……それで、何がいるんですか?」


「あー……うん、幽霊とか妖怪の類なんだけどさ……

 さっきのは変なカッコつけは忘れておくれ……

 久しぶりに尾張以外の人と会話してるから変になっちゃてるっぽい……」



そう言って彼女はその場でうつむき、でこに手を当て苦笑いをする。



「尾張さんってどういう人だったんですか?」


「尾張がどんな人かって? 凡人には理解できない人。」


「へ?」


「あいつは自分の人生を一つの物語としてとらえていてね。

 希望も絶望もそういう物語のシナリオだと思って振舞っているんだ。」


「え? どういうことです……?」



空菜はやけに渋い顔で創を見はじめる。



「もし仮にあいつにとんでもない衝撃的な事実を伝えたとしよう。

 そしたら普通に『ありえねぇ!』だとか『嘘だッッ!!!』とか

 普通の人の反応を見せるんだけどさ、そのあと私以外誰もいなくなったら

 ひとりでに自分の現状のシナリオを語りだすんだよね。

 しかも、テレビみたいに視聴者がいる定で。」



創は何とも言えない顔をして空菜を見る。



「……ええーっと、つまり自分が大好きってことですかね……?」


「そう、彼は自分の人生が大好きなんだ。

 あいつはどんなことが不幸なことが起ころうが、どんなひどい目に遭おうが、

 それが自分の人生、シナリオであって物語だからといって笑ってるんだ。

 すごいでしょ? 凡人じゃぁそんなことできやしない。」



そう言って少し不気味な笑いをする彼女。

創はその様子を見てポカーンとしている。


「ふぁー……そうですかー……」



<>



「それで、幽霊か妖怪がこのコテージのどこかにいるってことですか?」


いつしか彼女は尻尾の中から抜け出し、

空菜が座っているソファと対にあるソファに座っていた。


「たぶんだけどね。ひょっとしたらコテージに入った瞬間、

 どっかで強力な霊力を放ってる奴が現れたかもしれないし。」


「入った瞬間現れるなんて事あるんですか……?」


「あるよあるある、あるに決まってんでしょうが。

 ただ確率が低いだけでないことはないんだよ?」


「はぁ……それにしても幽霊もGWEで作れるんですね。

 妖怪は作れるイメージはありましたけど。

 地下のトンデモ施設にいるんでしょうかね……」


「GWEは何でも作れるからしいからね。化け物でも神でも何でも作れるから。

 って、気にするとこそこなのかい? 

 もう君は世界を造る側じゃないんだから『作れたんだ!』とかじゃなくて

 『きゃー! 幽霊怖ーい!』とかそう言うリアクション取らないと。

 この世界をエンジョイしなきゃダメだよ? とんでもない事になってるけど。」


そういって、手を前に出しにやにやする。


「とんでもない事って、他の世界とくっついている事ですか?」


「いーや? 尾張が言うにはそんな小規模のことじゃない、らしいよ?

 神堕 聖から話を聞いたらしいけど今起きてること相当ヤバいみたいですよ。

 なーんも話してくれなかったけどさ。なんでか分からぬが。」


「恐らくですが、神堕 聖が尾張さんに話したことが

 嘘である可能性があったからではないかと思われます。」


「聖ちゃんが嘘を……ってあれ?」


聞き覚えのない声がコテージ入り口から聞こえてきた。

彼女らはその声を聞いて少し驚きその方向を見る。


黒いレザーハットをかぶり、黒いジャケットの中に白いTシャツ。

茶色い髪の少女が青い一冊の本を持ち、彼女らがいるリビングに現れた。


「あの……どちら様でしょうか?」


「初めまして! 創さんと……ケモ耳っこの可愛い誰かさん。

 コテージ地下の施設の管理をしている助手です!」


そう言ってニコッと笑顔を見せて創を見る。


「じょ、助手……ロゼさんのですか?」


「いえ、助手って言う名前なんですよー

 変な名前を付けられたもんですよまったく。」


そっぽを向いて苦笑いをする彼女。


「神堕 聖の発言が嘘ってのはそりゃそうでしょうに。

 黒幕第一候補なのに全部の話が本当とかありえないでしょ。」


空菜の発言で助手は彼女らの方を向き真剣な表情をする。


「ええ、神堕 聖の言葉はあまり信じないほうがいいかと。

 神の領域の話や神堕 愁が世界を融合させたという話もです。」


「え、あの、つまりもう一人の愁ちゃんも存在しなくて、

 神の領域にわざわざいかなくてもいいってことですか!?」


「……いえ、純粋に神堕 聖の発言の真偽がわからないため、

 とりあえず胸にしまっておくだけにしよう、という話です。」


「いや、てゆうか君、神の領域に行くのかい?」


「……行くー予定です。

 もう一人の愁ちゃんに会うために必要なことなんですけど……」


「その必要はないわぁ!!!」


テンション高いロゼの声とともに、勢いよく創とロゼの部屋のドアが開けられた。

空菜と助手は特に動じなかったが、創はすこし驚いてしまった、が、

すぐにロゼの発言が気になり彼女と話をする。


「ひ……必要なくなった……?」


「ええ! 私の本体かつ! GWEスキルを持ったゼロスが!

 めっちゃ増殖していろんな世界で無双状態中だっ!

 GWEも回収してるし嘘かほんとかわからない神の領域も探しているらしいし

 君が他の世界に行く必要はなくなったのだっ!! 

 つまり!

 この世界で特にどうということなくエンジョイできるというわけだっ!」


やけにテンション高く、やけに大きな動作をして、ロゼはそう言う。

すこし顔が引きつった空菜、ため息をついて手を顔にかぶせる助手。



「はえ?」


創は話の内容が理解できず思考停止。


「フハハハハァ!! うーん! もう一人の私かぁなり好き勝手やってらぁよ!

 ノウンから話を聞いた時はもーほんと大爆笑でしたね。

 まさか増殖して世界各地飛び回っていろいろやってるだなんてさ!

 まぁ、この世界の安全は保障できないんだけどねぇ”!

 他の世界っていっても近くのところはどうかいまだに分かんないんだし、

 もしかしたらもっかいヘリコブゥ”ぁ”!」


ロゼは後ろから水色の線を帯びた白い杖に突かれ、その場で倒れ後ろを見る。


「そんな滝のように情報を浴びせても創さんの頭には入りませんよ。」


「……愁、ちゃん?」


創が彼女を見たときには、彼女の服の色は打って変わって青く変わっていた。

印象としては、どこかの魔法学校の制服のようなイメージで、

とても可愛らしく、異世界系の物語らしい服装になった。


「ふふふ、どうでしょう創さん、私の新衣装は。」


「……うぇ、あの、可愛いんですけど……何があったんです……?」


思考停止状態ではなくなったが、様々な情報が一気に襲い掛かり困惑する創。

愁はそんなこと気にせず、嬉しそうにくるっと一回転していたりしている。

空菜は苦笑いをしており、助手は愁に向けて小さく拍手をしていた。

そしてロゼはあんぐりしていた。


「おや、あなたが助手さんですか。これからよろしくお願いします。」


「はい! こちらこそよろしくお願いします!」


そう言い、満面の笑みで愁を見る。


「……良かったね創。とりあえず嫌われてはいないっぽいよ。

 それどころか上機嫌だし、ロゼが言ったことも理解してるみたいだね。」


「……それは良いんですけど、愁ちゃんに何を話したんですかね……

 それに服も変えちゃって……どうしちゃったんですか愁ちゃん……」


小声で会話をする創と空菜に四つん這いでロゼが近づいてきた。


「……いいか創、愁には創と共に世界を造ったという話はしてない。

 私一人、可愛い美少女ロゼちゃんが世界を造ったよ、

 という感じになっているから安心してくれ。それでなんだが____」


「聞こえてるよー」


小声で創と話をしていると空菜が甲高い声を上げ、

耳をピコピコと揺らしながら人差し指で耳を指す。


「まぁ伝えたいことは分かったでしょ。

 かんに触るようなことは一切言ってないから安心してくれ。」


そう言ってその場で立ち上がり背伸びをし、

クルッと一回転して天を指差しこう言う。


「よぉーし!! さぁさぁメンツも集まった!

 私作のこの世界を冒険するぜお前らぁ!」


その言葉に続くように愁が、


「この世界に転生してしまった以上、

 アドベンチャーしないわけにはいきませんからね。

 ロゼが作ったと言うのが尺ですが。」


と言い、杖を横に振り謎の決めポーズをする。


「私も冒険するのか、まぁいいだろう。

 どんな物語になるのか、フッ、楽しみだ。」


謎にかっこつける空菜。


「さぁ行こうか創!冒険の始まりだっ!!」


そう言い、ロゼは創に手を伸ばす。



「……話の整理、させてくれません?」


創はまず冒険というより、情報の整理が追いついていなかった。

とりあえず空菜の尻尾をモフりながら苦笑いをしていた。

3章終わり。

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