神の役割って…… 9:00~
神なんて人間と同類だ。
誰かの心配をしたり、誰かを見守ったり。
誰かに思いを寄せている時点で同じだ。
はぁ……いつになったら尾張は迎えに来るんですかね。
別に助けなくてもここにいてもいいんだけどさ?
なんか居心地いいし。
彼女達がいる世界から真下、広大に広がる海のその深海、
神堕 聖が捕まっていた場所、神社に彼女はいた。
9:00~
寝っ転びだらけながら手元にあるフィッシュチップを口に入れモゴモゴする彼女。
周りには装束をきた人間のような神職が一列に並んでおり、
姫路の前にはタコの目をした人間が、
酒や野菜、魚が置かれている台を次々と彼女の横隅に置いて行っている。
それに置いて行った奴等から、
彼女の目の前にある賽銭箱に通貨らしきコインを入れお祈りをしている。
白いフードポンチョを付け緑のマフラーをした彼女は、
祈りをささげた人に小さく礼をする。
いやぁ……もうこのまま神の境遇のままでいいかもしれん。
頭に耳生えているだけでこの境遇、良いもんだよ。
被っているフードから盛り上がっているオオカミの耳をちょんちょんと触れ、
すこし嬉しそうにしながらひたすら参拝してきたタコの目の人間に小さく礼をし、
お供えされた食べ物を少しずつ食べ、参拝した人に礼を繰り返す。
楽だわ~ここに居て礼をするだけでいいのほんと楽。
神の仕事ってこんなんでいいんだね。
衣、食、住は普通だけどね。でも普通が一番。穏やかすばらしき。
神堕 聖はこれの何が不満だったんだか……
そろそろ1週間ぐらい立つけど尾張来ないな~
参拝するっつってここに置いてけぼりにしておいて
まさか忘れてるだなんてことはないとは思うけどな~
忘れてたらマジでどうしてやりましょうかねェ。
そう思いながらあくびをする彼女。
次々と参拝してくる人に礼をしていると、
神職の一人が彼女の耳元に近づいてこうささやいてきた。
「アトナ様、ネオと名乗る者が貴方様に会いたいと申しております。」
「ネオ? いや会いたいんだったら参拝して会えばいいじゃない。」
ぶっきらぼうに彼女は言う。
「いえそれが、貴方様が着ていた茶色いローブを持ってきていまして……」
「!? 別の奴が来た!? と、とりあえず通して!」
「承知いたしました。」
神職は瞬時にして下がり、
他の神職に別の部屋に移動してもらうよう誘導し、
参拝している人に捌けるよう呼びかけ外に出る。
そしてある程度人がいなくなったところで、
「ただいま呼んで参りますので、しばらくお待ちください。」
と言って微笑みながら本殿の扉を閉めた。
ネオって……誰?
一応あの服を持ってきてるってことは
尾張がそのネオって人に頼んだって事なのかな?
で、ここに来れるってことはロゼがなんかやってるって事だから……
ひどい目に合ってないと良いんだけど……
そう思いながら起き上がり、
胡坐をかき始めネオという人物が来るのを待つ。
「こんにちネオネオ。」
目の間前に現れたのはロゼらしき人物であった。
彼女はジト目でにやにやしながらこちらを見ている。
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ああ……うん。なんとなーく分かってたんだけどさ……
まさかとは思うけど上とここで時間の流れが違うとかなのかな?
ロゼ、なんか成長してるんですが。
彼女の目の前にいるのは成長したロゼのようだった。
紫色の髪はひじ辺りまで伸びており、前髪も伸びて片目も隠れている。
服装も彼女が来ているものとすこし変わっていて、
幾何学模様の入った服は水色に変わり模様が無くなっており、
中のTシャツは緑から黒に変わっていた。
声も成長期を終えたのか声が変わっている。
「……なにやってるのさロゼ。」
「ロゼ? 私はネオ・アルターネイティブだが?」
自信満々に腕を組みそう言う彼女。
「うん、ネオは分かるんだけどさ。
成長して改名したのかな?」
淡々とそう言うと彼女は謎の決めポーズをしながらこう言う。
「改名? 成長?
まぁこの姿だからな。何か勘違いしてるんだろう!
私は、ロゼの、姉、だっ……(キリッ)」
「姉。」
アイツに姉なんていたのか。いや作ったんだろうけどさ。
それか純粋にロゼの可能性もあるけど……
ていうか、ロゼの家族構成どうなってんのさ……
……まぁいいや。なんか考えたらもうダメな気がする。
「っで、私の服を持ってきているってことは、
私を迎えに来たってことでしょ? 本来なら尾張が来るはずだけど。」
そう言うと彼女は恥ずかしがりながらすこしもじもじする。
「あ、ああ、尾張。私の彼氏か。
あいにく彼は他にやることがあってねぇ今来れないんだ。」
……ツッコんだらダメだ。
いろいろ言いたいことがあるけどスルーだスルー。
そう思いながら彼女はネオと名乗るロゼっぽい人物を睨む。
それを見た彼女は楽しそうにしてパラメータビジョンを展開し、
姫路が着ていた茶色いフードポンチョをそれから取り出す。
そしてフードポンチョを姫路の方に投げ、
彼女はそれをキャッチする。
「これ、お前の大事な物なんだろ?
一応綺麗にしといてやったよ。安全装置も直しといた。
だが性能面では君が今着ている服の方がいいからな。
私の妹のさいっこう傑作だからな。大事にしろよ?」
自分で言ってるのか、マジでロゼの姉で妹を褒めているのか。
でも確かにこの服はめちゃくちゃ動きやすい。
厚いようにみえて意外と通気性もいい。
しかもちょっとかわいい。
あといろいろすごい機能が付いてる。
ボロボロになったこの服の代わりとして
尾張経由でロゼが私に渡してきたものだけどさ……
なんだろうなこの気持ち。嬉しいはうれしかったんだけどさ。
無性に腹立たしい。だいたいボロボロになった原因がさ……
いろいろ思いながら彼女は白いフードポンチョのポケットに服を入れた。
「……まぁ、大事にするけどさ。
で、どうやってこの状況から連れ出すの?
たぶん私がいなくなったらあの人たちパニックになるよ?」
尾張が神堕 聖を連れ出す際にはもう私を崇めてたけど
だれも崇める人がいなくなったらたぶん……
「何を考えているんです?」
彼女の近くに先ほどネオが来たと報告をした神職が近づいてきた。
「神堕 聖、神堕家は私たちの神ですが、
あなたはその神堕家を統べる神なのです。
そして、あなたはこの世界の者たちを救う者。
愚かな考えに憑りつかれてはなりませぬ。」
「だよね……私はみんなを見守らなきゃいけない。」
彼女はそう言い手に力を入れてうつむく。
「おーい騙されんなー 自分を取り戻せー
君はそんな奴じゃない好奇心旺盛のオオカミちゃんのはずだー
神でもなければ神堕を統べる奴でもないただの今を生きる奴だぞー」
ぶっきらぼうにネオは手を横に振る。
すると彼女はふと何か感じたのかボーっとしだす。
「記憶は問題無し、か……」
ボソッとそう言い考えるそぶりを一瞬すると、
ネオは神職の元に近づき始めた。
「な、なんですか、私の口を塞ぐ気ですか、」
ネオは神職の一歩手前まで来た。
そして神職の肩を片手で掴み、もう片方の手でサムズアップして笑顔でこう言う。
「あとは任せたぞ七騎士コルプスくん!
ずっと姫路を見守っててくれてありがとうな!」
「へ? な、七騎士?」
姫路はそれを聞いて神職の方を向く
神職は少し照れながら一瞬そっぽを向く。
「な、君には私の存在は伝えていないはずなんだけど……?」
「ディープソルジャーの動向を探るにはディープソルジャーになればいい。
君はどっかの一隊の隊長としてこの世界に潜入したそしてぇ、
姫路の様子を見るために神職に化けた違うかい?」
「そんな理由でよく私を見抜けたね……」
姫路はおろおろしながらネオの方を向く。
「へ、へぇ? あのさ、状況が全く分からないんだけど。」
「要はロゼの仲間がずっとここで姫路の様子を見てたって事。
神職として姫路を止めようとする茶番なんていらねぇんだよ。
いくぞ姫路、創たちがいるところに戻るぞ。
ほら、コルプス。例の瞬間移動を。」
「えっ!? え、でも、そう、か……」
彼女はふと隣にいる神職の言動を振り返ると、
他のディープソルジャーとは違いとても心優しかった。
かつ、本殿内で暴動を起こそうと彼女に近づいてきた人から守ってくれていた。
そしてなにより苦しくないか、辛くないかと心配もしてくれていた。
「だけど……ここに祈りをささげてきた人はどうなるのさ……」
神に祈るほどなにかしら辛い事や苦しいことがあるはず。
一週間もここにいてたくさんの祈りをささげる人がやってきた。
私に祈りをささげる人は誰もが暗い印象だった。
祈りをささげるだけでその祈りの内容は分からないけど、
私が頷くだけでちょっと安心した感じになって帰っていく。
なんというかそれが嬉しかった。
私、というかここには他の誰かがいなきゃいけない。
ここに誰かがいないとみんな暗いままになっちゃう。
本当に、戻っていいのかな……
そうやって躊躇して彼女はしょげる。
「一週間もここにいてディープソルジャー共が心配になってきたか。
安心したまえ姫路! 君の跡継ぎはそこにいるコルプスがやる!
彼というか彼女は! なんと君の姿に変身できちゃうのだっ!
なぁコルプス! ディープソルジャーの動向も探れるし、
もしかしたら神堕共の一端がやってくるかもしれないからいいだろう!」
テンション高くそう言うネオ。彼女は迫真の顔で笑っている。
「もとより私が姫路の代理をやるってシチュエーションだったんだけど……
君にいろいろぶち壊されたよ……いい感じにしようと思ったのに。」
神職の人はすこし落ち込みながらそう言う。
そして姫路は神職の肩をポンポンと少し叩く。
神職が姫路の方を向くと姫路はすこし複雑な表情をしながらうつむいていた。
「……あ、神職さん、というかコルプスさん。任せましたよ。
みんなを、安心させてあげてください。」
「……ちょっと恥ずかしいけど、頑張ってみるよ。」
そう言いながら神職は黒い靄を出し、ネオと姫路を靄で覆う。
その際、ネオはおかしな感覚に見舞われる。が、
姫路はその感覚を感じなかった、
彼女はディープソルジャーが心配という感情と
コルプスへの感謝の気持ちが込みあがっていた。
「きっと、大丈夫だよね……」
彼女はそうつぶやき、本殿を後にした。
神って何だろうね。まったく。




